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クリティアは、アキントスに加護を与えていた。彼が周りからも完璧に見られるようにしていた張本人は、クリティアだ。
理由は、単純明快。それが、彼女の好みだったからだ。
美しいモノが大好きなクリティアは、そうなるように加護を与えていた。
婚約者となった時のアキントスは、女性の誰からも相手にされないようなさえない容姿にぽっちゃりな体型。何をさせても、鈍臭くて、頭もよくなかった。要領もよくなくて、周りをイライラさせる。なのにプライドだけが異様に高かった。
初めて会った時にクリティアは、卒倒しかけた。
(堪えられない。全然、美しくない!)
そんな婚約者に堪えられなかった。
妖精王の孫娘であるクリティアには、どこもかしこも美しくない婚約者が許せなかった。
だから、愛せる男性になるように妖精の加護を与え続けた。
いつも、それで失敗するのに加護を与えることを止めることはしなかった。
自国に帰って、祖父である妖精王の元にいた。
「また、破棄されたのか」
「ごめんなさい。お祖父様」
「報告は聞いている。他の令嬢に運命を感じたと言っていたようが、……もうすでに上手くいってないようだ」
「そうですか」
それも、いつものことだ。もう、婚約者ではない相手にクリティアの愛情も、関心もない。すっかり冷めてしまっていた。
妖精の寿命は、人間の寿命も何倍も長い。
かれこれクリティアは、こういった婚約破棄を両の手に余るほど経験してきた。前に世界で一番の美貌を誇ると言われた男性は、数年前に破滅して若くして亡くなった。その彼と婚約していたのが、クリティアだ。
アキントスのように婚約者だった頃は、ずっと蔑ろにして、好みの令嬢を見つけて破棄をした。他もそんなことばかりだ。
「しばらく、ゆっくりするといい」
「はい。そうします」
部屋に戻ったクリティアに妖精王はため息をついた。
「やれやれ、お前たちの忘れ形見は中々難しい。これでは、曾孫の顔を見るのが、いつになるのことやら」
若くして亡くなったクリティアの両親。幼い頃のクリティアの心は、その時に一度壊れかけてしまった。
彼女は、暴走しかけて妖精の中でも滅多に起きない先祖返りをしてしまった。強い、強すぎる加護の力を1人の妖精が持ってしまったのだ。
そのためにクリティアは伴侶には、同じ妖精からは選べなくなってしまった。人間を夫にしなくては、加護のない子供しか生まれない可能性が高い。もし生まれた時から、加護の強い妖精として生まれたら、長く生きられる確率は非常に低い。
逆に途中で、先祖返りした妖精は、初代妖精王のように永遠とも呼べる寿命から逃れられない。
かつて、妖精たちは人間に恋をしては良かれと思って、求められるままにたくさんの加護を与えた。それに味をしめてしまい、何もしなくなってしまう人間が続出したことから、決まりが追加された。
クリティアが妖精だとは人間たちに伝えてはいけないから黙っていたことなのだが、彼女の加護は妖精1人の加護より数倍強い。それを出し惜しみすることなく、惜しみなく与えてしまうせいで、彼女は婚約者と上手くいかなくなっていた。
妖精だと知っていれば、アキントスも利用し続けて、簡単に破棄などとは言い出していなかっただろう。
理由は、単純明快。それが、彼女の好みだったからだ。
美しいモノが大好きなクリティアは、そうなるように加護を与えていた。
婚約者となった時のアキントスは、女性の誰からも相手にされないようなさえない容姿にぽっちゃりな体型。何をさせても、鈍臭くて、頭もよくなかった。要領もよくなくて、周りをイライラさせる。なのにプライドだけが異様に高かった。
初めて会った時にクリティアは、卒倒しかけた。
(堪えられない。全然、美しくない!)
そんな婚約者に堪えられなかった。
妖精王の孫娘であるクリティアには、どこもかしこも美しくない婚約者が許せなかった。
だから、愛せる男性になるように妖精の加護を与え続けた。
いつも、それで失敗するのに加護を与えることを止めることはしなかった。
自国に帰って、祖父である妖精王の元にいた。
「また、破棄されたのか」
「ごめんなさい。お祖父様」
「報告は聞いている。他の令嬢に運命を感じたと言っていたようが、……もうすでに上手くいってないようだ」
「そうですか」
それも、いつものことだ。もう、婚約者ではない相手にクリティアの愛情も、関心もない。すっかり冷めてしまっていた。
妖精の寿命は、人間の寿命も何倍も長い。
かれこれクリティアは、こういった婚約破棄を両の手に余るほど経験してきた。前に世界で一番の美貌を誇ると言われた男性は、数年前に破滅して若くして亡くなった。その彼と婚約していたのが、クリティアだ。
アキントスのように婚約者だった頃は、ずっと蔑ろにして、好みの令嬢を見つけて破棄をした。他もそんなことばかりだ。
「しばらく、ゆっくりするといい」
「はい。そうします」
部屋に戻ったクリティアに妖精王はため息をついた。
「やれやれ、お前たちの忘れ形見は中々難しい。これでは、曾孫の顔を見るのが、いつになるのことやら」
若くして亡くなったクリティアの両親。幼い頃のクリティアの心は、その時に一度壊れかけてしまった。
彼女は、暴走しかけて妖精の中でも滅多に起きない先祖返りをしてしまった。強い、強すぎる加護の力を1人の妖精が持ってしまったのだ。
そのためにクリティアは伴侶には、同じ妖精からは選べなくなってしまった。人間を夫にしなくては、加護のない子供しか生まれない可能性が高い。もし生まれた時から、加護の強い妖精として生まれたら、長く生きられる確率は非常に低い。
逆に途中で、先祖返りした妖精は、初代妖精王のように永遠とも呼べる寿命から逃れられない。
かつて、妖精たちは人間に恋をしては良かれと思って、求められるままにたくさんの加護を与えた。それに味をしめてしまい、何もしなくなってしまう人間が続出したことから、決まりが追加された。
クリティアが妖精だとは人間たちに伝えてはいけないから黙っていたことなのだが、彼女の加護は妖精1人の加護より数倍強い。それを出し惜しみすることなく、惜しみなく与えてしまうせいで、彼女は婚約者と上手くいかなくなっていた。
妖精だと知っていれば、アキントスも利用し続けて、簡単に破棄などとは言い出していなかっただろう。
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