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しおりを挟むそれこそ、ユズカはその会社に入社して2回目の9月になっていた。
シレネの結婚式があると思って、一生懸命に休みを取ろうとしていたが、何があったのかは知らないが延期になった知らせにしょんぼりした。
(延期ってことは、不仲になったからではないってことよね?)
まさか、ユズカが出席できるか怪しいから延期になったとは思わずにそんなことを思っていた。でも、すぐに忙しさにかまけてシレネたちの結婚式のことより、仕事のことで頭がいっぱいになってしまった。
ハロウィン使用が、どこよりも強い営業課で研修期間はわずか1週間。他も1、2週間で、次の研修を受けるハードな研修のはずが、ユズカだけはのんびりとはいかずとも、それなりの濃厚な研修を色んな部署では受けてきたが、営業のところではそれがなかった。
どこよりも短い期間を経て、ここに配属になることに決まったのだ。
(嘘。一番あり得ないところに決まるなんて……)
ユズカは、一番あり得ないと思っていたところだったことに誰よりも驚いていた。
だが、よくよく考えればわかることでもあった。これからの時期が一番忙しくなるのだ。ユズカでなくとも、猫の手でも借りれるものは、借りたいに違いない。
(かきいれ時のハロウィン期間が、もうすぐそこまで迫っているんだもの。ピンチヒッターに新人の私でもよかったのかも)
狼男の格好のソカムにユズカは指導してもらいながら、寝る間も惜しい営業部の仕事をこなすことになったユズカは、1人そんなことを思って納得していた。
面接官だった2人より、魔王の仮装をしたのが、この会社の社長で、彼の前でプレゼンをするのに再び会ったせいか。妙に慌てふためいて逃げ惑うことはなかった。
ここに来て、これまで以上にハロウィン色がより一層濃くなっていても、特にその辺りのことは気にはならなかった。
(どこよりも、ハロウィンっぽい人たちが働いてるとこよね)
ユズカの出来ることといったら、配属された部署の雑用が主だった。新人すぎるユズカには、役に立てることは配属されたところでは少なかった。
「これ、コピーしてくれるかな?」
「はい!」
ユーフォルに頼まれたものをすぐさま受け取って、近くで鳴った電話に対応すべくユズカが、出るといきなり怒鳴り声が聞こえた。それに驚きすぎて思わず受話器を耳から離してしまった。まだ、ユズカは何も言ってないのにこれでは困る。
「~~~!!」
「あら、クレームね。こっちで受けるわ」
「す、すみません。お願いします」
イベリスは頼れる先輩で、クレーム処理がとても上手い。ユズカから代わるなり、話すうちに相手の怒鳴り声が次第に小さくなり、クレーム以外の話しになって終わることが多い。
(凄い。相手の方、物凄く怒っていたのに)
その矛先が毎回、大体一緒なことにも驚いていた。
「それじゃあ、お詫びにデートしましょう」
それを目当てにクレームがきているのではないかとユズカは何気に思ってしまっていた。
(まぁ、イベリスさんがそれでルンルンしているんだからいいのかな……? うん。相手も、それで落ち着いてクレームもなくなるんだからいいんだよね??)
更にセクシーな衣装の売り込みが、イベリスは誰よりも上手い。更には、いっぺんにお付き合いしている男性が多いようだ。
ユズカには出来ない芸当だ。真似ていいと言われても絶対にできない。益々、相手を怒らせるだけは上手い気がするが、それでデートをしようとなるわけがない。
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