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しおりを挟む無事に卒業試験にパスして、卒業式ではシレネや色々あったが、最終的には仲良くなれた友達たちとユズカは賑やかなまま、感激して抱き合い涙をして、嬉し泣きをしながら写真を撮りまくり、また会おうという再会を約束して別れた。
それから、ばたばたが続くことになった。
(ううっ、こんな風に慌ただしくなる予定ではなかったのに。余裕ある日程を組んだはずなのに。おかしいな)
社員寮へと引っ越し、思っていた以上に慌ただしくしながら、ユズカは入社を果たすことになった。
新入社員を見渡すと人間っぽい格好のままなのは、ユズカしか居ないのではなかろうかという姿形をみんなしていた。
(なんか、私だけ流行りに乗り遅れてる感が半端なくなってきたな。面接官の皆さんも、あんなに気合いれてたんだから、入社式くらいは気合をいれた仮装すべきだったのかな?)
シレネは、ユズカはユズカらしくしてればいいと言ってくれていたし、彼氏さんも横で大きく頷いていた。
おばあちゃんも同じようなことを言っていたため、それを長らく真に受けて過ごしてきたが、社会人となった今になって人間っぽくしているのは、大丈夫なのかと心配になってきていた。
(それにしても、ハロウィンの仮装が本当に好きな人たちばっかりだな。大学の時より、拘ってる人たちが多い気がする)
よほど、そこまでして仮装が好きなのだとユズカは思っていた。ユズカは、毎日張り切って仮装していると疲れてしまって、今更になって気合をいれて続けろと言われても、続けられる自信が全くなかった。
だが、そんな心配もそっちのけになるくらい入社してからの研修の日々は、目まぐるしい日々だった。
色んな研修があったのだが、何だか特殊なものばかりだった。
悪戯グッズの開発部門では、食べると獣耳がはえたり、尻尾がはえたり。獣のような声が出るようになったりするのなどの作用のある飴をみんなで研修生は試食した。
(面白い!)
最初は、面白がってはしゃいでいた。
研修生のほとんどが仮装しているかのような格好をしていたが、そんな彼らと仲良くなるよりも、ユズカは自分のことで手一杯となったのは、すぐのことだった。
(何で!?)
初日に猫耳と尻尾が生えたまま、数時間で消えるはずが、ユズカだけが数日経っても消えなくて、物凄く焦ることになったのだ。
「今日も可愛い仔猫ちゃんのままなのね」
「あの、これ、本当に消えるんですよね?」
「そのはずよ。あなた、普通の人間だから、ちょっと時間がかかってるだけだって」
「……」
(普通って、仮装してないだけなんだけどな。仮装してるとそんな違いまであるものなの?? ……だから、みんな仮装を頑張ってるとか? そんな機能が仮装にはあったの!?)
そこの部門の担当責任者のカリア・スティパと毎日同じようなやり取りをしていた。
カリアは、鮮やかな色合いのとんがり帽子とその帽子とお揃いのワンピースを毎日、色違いで着ていて、大きな杖に宝石がついた物を常に持っていた。魔女というより、ユズカには魔導師に見えてならなかったが、本人は魔女だと言い続けていたから、魔女なのだろう。
そのうち、研修生がしつこく魔女ではないと否定的なことを言い続けたせいか。研修生の何人かを喧しそうに杖で脅すようになり、ユズカは魔女の新たなスタイルだと思うことにして、それについてとやかく言うことは一切なかった。元々言う気もなかった。
そもそも、仮装なのだから自由だと思っていて研修生が変な顔をしたり、怪訝にする方が不思議でならなかった。
(仮装なんだもの。本人が、そうだっていうなら、それでいいはずなのに。変なの)
そんなことを思ってすらいた。
試食をあれやこれやと他の研修生は、毎日食べていたが、ユズカは眺めているだけで初日以降、参加することはなかったのは、猫耳と尻尾のせいだ。
結局、1ヶ月近く、猫娘のままで過ごすことになり、ユズカのメンタルはすり切れ気味となってしまった。
そんな状態で、試食の方で貢献できなかったユズカは、思いつくまま悪戯グッズについて、企画案を提出する課題では、カリアの合格点をもらえるような悪戯グッズは思いつかなかった。
(自分がされたらと思うとげんなりしちゃって、全く思いつかなかったわ。駄目ね。そっち方面には、全く向いてないみたいだわ)
ユズカは、やっと頭にもお尻にも違和感がなくなって、そんなことを思っていた。
そう。そもそも悪戯をするために本物のような耳と尻尾が生えるなんて、あり得ないと思っても良いところのはずだが、ユズカは自分に生えたままになって、その辺のことを失念していた。
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