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しおりを挟む美穂は、姉が長期休暇で家に戻って来るたび、一番の癒しは、野良猫と戯れることと猫カフェ巡りをすることになっていた。
いや、姉が戻って来ていることに関係なく、野良猫との戯れがなければ、母と2人で生活するのに限界が来ていた。
「なぁ~」
「野良さん」
この頃になると図書館の帰りに良く会う野良猫を野良さんと呼ぶようになっていた。相変わらず、美穂を見かけると話しかけて来てくれるのだ。
図書館の近くでバイトを探したのも、野良さんに会う口実を増やすために他ならない。野良さんに会わないと美穂の精神は保てなくなっていた。
母と2人でいることが、嫌で仕方がなくなっていたが、母の方はそこまで嫌われるようになっていることに全く気づいていなかった。
毎日のお弁当作りも、自分のためにしていた。そのうち、彼氏もできて彼氏の分もこっそり作ったりもしていたが、長続きしなかった。
姉の噂が尾ひれをつけてしまっていたようで、美穂が作っていたお弁当を勘違いしたようだ。それで、自分が作ったかのように嘘をつくのに必死な彼女なんて恥ずかしいと言われて別れることになったのだ。
そんな元カレは、自分の勘違いだとわかってからしつこく復縁を求めてきた。
あれは、姉や母以外で、面倒くさい人間が増えたと思うだけで、やり直す気は持てなかった。
それこそ、元カレの美穂にしつこくして、美穂に何をしたかが知れ渡ったことで、男友達にも色々言われたようで、美穂は味方を増やす一方となった。
ついでにモテ期も到来したかのように告白されてたが、美穂は誰かと付き合うことはなかった。
まぁ、それはどうでもいい。それよりも、家族のことだ。
「野良さんとの話は楽しいけど、姉さんや母さんの話は全く楽しくないわ」
「なぁぅ」
「そうだよね。一緒にしちゃ駄目だよね。全然違うもんね」
野良さんは、そうだと言わんばかりに可愛らしく鳴いて尻尾を振った。それだけで美穂の心は、かなり癒された。
姉がいないのだからと猫を飼いたいと思っていたが、母は猫が好きでも嫌われていることが発覚した。
長期休暇の間、かなりの日数を実家に戻って来て過ごすのだが、美穂と違ってないのにさも忙しくしているかのように1人で出かける時は、相手の話題には全く触れずに出かけた先のことを話すのだ。非常にわかりやすい人だか、一々美穂に張り合うように話すことはないと思うが、由美はそう思っていないようだ。
そんな美穂は高校生活を満喫していた。由美が色々としていたことの真逆を美穂がしたことで、楽しかった。大学受験の勉強も、由美が家にいないというだけで、順調にできたかと言うと母がいるせいで、長期休暇の時をやり過ごしても、大変だったが、野良さんのおかげで上手くいっていた。
(前なら長期休暇中ずっと実家に戻って来なくてもいいと思ってたけど。この分だと大学でも友達はできなかったみたいね。大学でできた友達の話が全く出て来ないし。……別に聞きたいわけではないけど。母と2人っきりよりは、マシって思うようになってるの自分に一番びっくりだわ)
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