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しおりを挟む美穂は母と姉のお弁当を作ることになったが、母のお弁当を作ることを張り切るついでに由美のお弁当を作った。そう、全て姉の方はついでだ。どっちから作ることを頼まれたなんて関係ない。喜んでくれる人は、美穂には母だけいればよかった。
(まぁ、姉さんの茶色のお弁当よりは、マシでしょ。というか、何で茶色一択のお弁当ばかりを作ってたのかが謎だけど)
高校が始まってから作り始めた姉のお弁当の中身を何度か見たが、そのたび茶色だったのを美穂は覚えていた。
中に入っているものが違うはずなのに見かけるたび茶色なのだ。それが不思議でならなかった。
「美穂。美味しいそう。ありがとう」
「ふん。私のに比べれば、まだまだね」
「……」
母は大喜びしていたが、由美はそんなことをわざわざ美穂に言った。母が、ムッとしていたが、由美に何か言うことはなかった。美穂も同じく何も言うことはなかった。
(まぁ、素直にお礼を言われたら、それはそれで気持ち悪いから、こっちの方が姉さんらしいけど)
由美は、いそいそとお弁当を持って出て行ってしまった。
「お礼の一つも言えないなんて、信じられないくらい、おばあちゃんたちにそっくりだわ。それとお父さんにも、そっくり。そんなところ似なくて良かったのに」
「……」
母が、ぽつりと呟くのを聞いて美穂は妙に納得してしまった。
「それに比べて、美穂は私によく似たのね。凄く嬉しいわ」
似ていると言われて美穂は、自分が思っている以上に嬉しかったようだ。
姉よりも母に似ていることが美穂は嬉しくて仕方がないことが刷り込まれたものだとは、この時の美穂は思ってもみなかった。
その日の由美は、美穂に作らせたお弁当をこう言って、友達に見せびらかした。
「これ、私が作ったのよ」
「そうなんだ。凄く美味しそうね」
「でしょ? 朝から大変だったわ」
「大変? 自分で作ったら楽勝だとか、よく言ってたのに?」
「あ、あれは……」
由美は、嘘に嘘を重ねていることをすっかり忘れていたようだ。咄嗟に取り繕うことができずにいると他の友達が……。
「やっぱり、実際に作ったことなかったんじゃないの?」
「そ、そんなことないわ!」
そんなことで言い争いになったのも、すぐだった。本当に由美が作っていた時の話をしてしまったのだ。
「つまり、正真正銘、今回のが妹さんの作ったものってことね」
「っ、」
由美は、今回のお弁当を誰が作ったかを自ら暴露してしまうことになったようだが、本人はその失態に気づいていなかった。嘘をつきすぎていて。わけがわからなくなってしまっていたようだ。否定も肯定もできずにいると友達たちの方が妙に納得していた。
「やっぱり、美味しそうなのを作れるのが妹さんの方ってことじゃない」
「そんなことだと思ってた」
「というか。由美って、嘘ばっかついてるわよね。それ、やめたら? 全部バレてるわよ」
「っ、」
由美は墓穴を掘ってしまったと気づいたかと言うとそうでもなかった。
「嘘って、何よ!」
「その自覚すらないの? 重症ね」
これまでのこともあって、大喧嘩することになったようだ。どちらが悪いかと言えば、全ては由美が悪い。それなのに由美は自分が悪いなどと思うことは欠片もなかった。
「いい加減にして! 付き合いきれないわ!」
「それは、こっちの台詞よ。自慢ばっかして、一つも本当のこと言わないような人となんて、付き合いきれるわけがないわ」
由美は、自分が何をしていたかも、すっかりと忘れて、付き合っていられないと散々なまでに言って、もっともらしいことを言っているかのようにしていたが、それらが周りからしたらあり得ないことだと言う認識もなかった。
そんな由美が、別のグループと仲良くすることにしたのも、その日からだった。
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