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しおりを挟む思っていた以上にちゃっかりとしていたアドルフィトに両親も苦笑していた。だが、アドルフィトの姉の扱い方を見ているといくら言っても駄目な相手には、一度やってみて、それでどうでるかを様子見ることが多いようだ。
今回のことも、クラベル国の学園の面々にグダグダ言うより、隣国をさっさと受験して結果が出てから、どうなるかを見たかったというか。向こうから必ずリアクションがあるものとアドルフィトは思っていたようだ。
アドルフィトへの対応に両親は激怒していたが、アドルフィトはそんなに怒っていなかったのも、こうなることを見越していたように見えて、両親は将来が期待できる反面で、父親は数年で自分の地位を脅かされそうだと少しばかり複雑なものを持つことになったが、クラベル国から最年少で合格した息子が誇らしく思えて、それがとても嬉しくて、そっちの感情の方が大きかったのは、上の娘が残念過ぎたからかも知れない。
それこそ、そんな早くから息子が他国の学園に受かるとは思っていなかったこともあり、急な物入りになっても両親は何とかなると思っていたが、寮生活なこともあり、こちらの学園よりも色々かかることもあり、アドルフィトとしては最高の環境で勉強できるようになったのは嬉しいが、元々そこに入ってから留学する気でいたらしく、留学生の補助金を狙っていたようだ。
それでも、大したことはなく、そこに特別なものを上乗せしてもらい、留学することになってアドルフィトは機嫌をよくしていた。
留学してくれるのなら、嬉しいが大した成績でもない者に費用の負担は避けたいという学園の思惑がそこに見え隠れしていたが、先に結果が出ている分、見込めると思った時の出し惜しみをしないところは、凄いとは思うが。全体を見ると情けなくもあった。そんな風にしか物事を見ていない者が学園長や先生やらをしているのだ。
だが、それを変えさせるつもりまではなくとも、アドルフィトは自力でとんでもないことを成し遂げてみせたのだ。
「何というか。既に私たちのやることがないな」
「そうですね。でも、まだ手のかかる子供はいますから」
「そうだな。手のかからなすぎる子供がいる分、真逆な子供もいるんだから、半々だと思えばいいか」
「……半々にしては、強烈なものを感じますけどね」
両親は子供たちのことで、そんな会話を夫婦二人の時にしていたことを誰も知らなかった。
そもそも、そんなことで括られたくないところだが、両親も色々といっぱいいっぱいだったのだろう。
そんなバレリアにとっての弟が、意気揚々と留学していることを周りが知って、それに比べて姉の方はと見るようになったのだ。たまったものではなかったのは明らかだ。
嫌味を元から言われるくらいに成績が酷いせいで、いつも馬鹿にされるのだが、悔しいかな。最下位なのは図星なせいで違うと言えず、聞こえていないふりをしてやり過ごすかと思いきやバレリアは違っていた。
「私の成績がいまいちなのは、教え方が悪いからよ!」
「……あなた、それ、本気で言ってるの?」
「そうよ! だから、私は昔から勘違いされるのよ。私ができてないわけじゃないわ!」
「……」
「みんな、同じ先生に教わっているのよ? 教え方の問題だとすれば、あなたと同じことをもっと色んな方が言ってると思うけど?」
「っ、でも、私はそのせいでできないだけよ!」
「……」
バレリアの言い分に周りの誰もが呆れた顔をするようになっていた。
それを試験が終わるたびに別の令嬢たちが、同じようにバレリアを馬鹿にするのだが、そのたびバレリアは同じことを主張するのだ。
「また、同じこと言ってるのね」
「あれしか、成績が悪い理由を思いつかない時点でその程度ってことよね」
「同じこと言うたび、私たちが思っている以上に馬鹿なのがよくわかるわ」
「そこに全く気づいてないのを相手にしているとこっちまで馬鹿馬鹿しくなるわ」
そんな風に言われるようになっていて、バレリアに親しくするような令嬢など、ただの一人もいなかった。相手にすればするほど、成績以前に残念すぎる令嬢だとわかって、まともに話すだけ無駄だと思うのも無理はなかった。
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