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(ウージェニー視点)

とても素敵な子息だと思っていた。だから、婚約できないのも、婚約者のせいだと思って信じて疑っていなかった。

その間に本当は、浮気相手が多すぎたせいで色々と問題がある子息だと言う以前に私がマリユスだと思っていたのが、その弟だったとは思いもしなかった。

私は、ずっと、ずっと本気で彼と婚約したくて婚約者を探していたというのに。


「またやってるわ。頭おかしいんじゃないかしらね」
「本当よね」
「っ、」


そんなことを言われているのは、ちゃんと聞こえていた。それでも、私は彼を自由にしてあげたかった。

変な誤解のせいで謹慎になったと言うのを信じていて、勘当されたなんて全く信じていなかった。

彼が、そう言っていたから信じただけだ。だから、婚約者に愛想を尽かされているから諦めるように言いたかっただけなのに。そもそも、愛想を尽かされていたのが、私自身だったとは思いもしなかった。


「マリユス様!!」
「っ、」


やっと見つけたと思って話しかけたら、凄い顔をされた。そんな顔を今までされたことはなかったが、それでもやっと会えたことに安堵した。


「やっぱり、みんな嘘ばっかり。謹慎か解けたのですね」
「ひ、人違いだ」
「え? でも……」


なぜか、人違いだと言われ、それ以上に酷いことを言われるとは思いもしなかった。


「頭、おかしいんじゃないか? みんながそう話しているぞ。私は、リオネルだ。マリユスは兄の名前だ」
「え? ですが、あなたが……」
「煩い! 今、大事な話をしているんだ!!」
「っ!?」


リオネルと言う名前の子息に怒鳴りつけて思いっきり突き飛ばされた。そんなことをされたことなど一度もなかった。だから、驚きすぎて何も言えなかった。

この間、間違えた令嬢だけが、すぐに駆け寄ってくれた。酷い間違いをしたのに謝りもせずに立ち去ったというのにこの令嬢は、これまでの令嬢とは違うようだ。


「ちょっ、何をするの!」
「そんなイカれた女なんか、構っていられない」


イカれた女と彼にまで言われて、私の頭は真っ白になった。


「……あなた、もしかして、私が彼と婚約している時も同じことしていたんじゃない?」
「は? あなたまで変な言いがかりは……」
「そうよ。その男は、お兄さんのふりして付き合っては、本物が勘違いしてモテていると思って付き合うきっかけを作ってたのは、みんなそいつよ」


突然、他の令嬢がそんなことを言い出して、私は驚いてしまった。

色々と聞いているうちに私は騙されていたことを知ることになった。


「マルジョリー、誤解しないでください」


リオネルは、それでも誤解だと押し通そうとしていた。それを見て私も段々とこんな人だったのかと思ってしまった。

この数ヶ月。私はイカれた女だと周りに散々言われて馬鹿にされてきたのだ。……本当にその通りだと思えてならなかった。

そこから、マルジョリーという令嬢と仲良くなることになった。他の令嬢たちも、騙されていたことがわかってイカれた女だと散々馬鹿にしていたり、それまで友達だと思っていた令嬢たちも、何食わぬ顔をして、また以前のように仲良くしようとしたのを全部切り捨てた。

いざとなったら、見限って何食わぬ顔をして同情してくるような人たちを信用できるわけがない。

それに比べたらマルジョリーは……。


「どうかした?」
「ううん。ただ、マルジョリーと婚約できたグウェナエル様が羨ましいと思えただけよ」
「え?」
「ウージェニー嬢。羨んでもらえて嬉しいけど、やらないよ」
「グウェナエル様」


そんなことを言っていると第3王子の従弟が留学して来て、その子息とお互い一目惚れをして婚約することになるとは思いもしなかったが、マルジョリーと出会えたことで私は一生の友達と最愛の人を見つけることができた。






ウージェニーは、マルジョリーと友達になれただけでなく、何があっても見捨てることのない掛け替えのない友達だと思っていたが、それはマルジョリーも同じだった。

お互い最悪なことになると助けてくれる人が物凄く少ないことも身をもって知ることになった。

そんな2人は、すり寄って来る連中のご機嫌伺いにも強くなった。それこそ、お互いが結婚して子供ができてからは、益々強くなって逞しくなっていた。


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