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目の前にやたらとキラキラしている美青年が、サラの屋敷の客間で対面しながら、優雅にお茶を飲んでいた。それだけでも絵になる。
彼は、この国のオルレアン王子だ。イケメンで、狙っている令嬢の数は、両の手では足りないほどだ。
(私が、把握しているだけで。だけど……)
ふと視線に気づいたオルレアンが、サラを見た。目が合うと首を傾げた。
「どうかしたかな?」
「今日は、どういったご用件でしょうか?」
「求婚している令嬢に少しでも、私を知ってもらおうと思ってね」
にっこりと王子様スマイルを向けられても、サラはため息をつきたくて仕方がない。
(どうして、私なのかしら……?)
「……嫌そうだね」
「え?」
「少し、いや、かなり強引すぎだよね。自分でも、わかってるんだ」
「……」
「でも、他の令嬢は、そんな顔したことないんだ。みんな、惚けた顔をして、私の話も、ちゃんと聞いているかも怪しいのが多くて……」
(その美貌ですからね。……私でも、慣れるのに3日ほどかかりましたし。この距離感で、だけど)
まだ、近づかれると厳しい。それを婚約者になったら、隣に立たなくてはならなくなってしまう。
(……軟体動物のようにのらない自信がないのよね)
腰を抜かす令嬢を見たのは、一度や二度ではない。オルレアン王子は、意図してやっていないようだが、少し優しくすると期待させてしまう危険があって、ろくに話しかけられないようだが。
「君は、色んな表情を見せてくれるから、つい甘えてしまったようだ。君の顔を見ると癒やされるんだよ。よい返事をもらえるまで、少し控えることにしよう。悪かったね」
「控えることは無理かと思います」
「え……?」
「婚約のお話、お受けいたします」
それを聞いて、慣れたと思っていたサラは、オルレアンに抱きつかれて気絶することになる。
(間近で、王子様スマイルと耳元での囁きは、とんでもない破壊力だったわ)
こうして、イケメンな婚約者に翻弄されながらも、サラは年に何回か気絶するはめになることに変わりはなかった。
そのたびに甲斐甲斐しく世話をやく幸せそうなオルレアンが、目撃されていたことを気絶しているサラが知らない。
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