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しおりを挟むあれから、小学生にあがるまでに両親は別居することになった。
心音は、お漏らしの一件で幼稚園に来づらくなっていたこともあり、私がみんなに話して虐めるとパパたちに言ったようだ。心音の言い分をすんなり信じているのかはわからないが、心音をパパが引き取り、私のことをママが引き取ることになった。
パパの方の両親、つまり祖父母は心音と一緒に暮らせることになったことを喜んでいた。あちらで暮らせば、わがままを聞いてもらえると思って、心音はご機嫌だった。
高学年になる頃には、両親が離婚する方向で動いていることは知っていたが、私は今更パパたちと暮らす気は全くなくなったが、心音は小学校でも相変わらずだったようだ。
毎年のように好きな男の子が変わり、告白して断られるたびに暴れまわったようだ。問題を起こすたび、パパは平謝りするかと思いきや開き直っていたようだ。祖父母は相手の子が悪いと心音の肩を持ち続けるせいで、そのたび虐められてると話しては改善が見られないと騒ぎ立てて、あちらが転校していくのがいつものことのようになっていたようだ。
そんな心音が、同い年の男の子から年上に片思いをしたのは、6年生の時だった。彼女は実習生の先生に恋をしたらしい。
そんな話を聞いてもいないのにしてくれたのは、パパの方の従姉だった。
従姉妹同士なこともあり、パパのところのみならず、ママのところというか。私のところにもやって来ては、そんな話を聞いてもいないし、約束もしていないのに押しかけて来て従姉は私にした。
もっとも、パパのところでは泊まっていたようだが、ママと一緒にいる私のところでは泊まることはなかった。
従姉は、彼女の両親が共働きで暇をしていたようだ。一人っ子なこともあり、心音のところで恋バナで盛り上がっているように見えて、心音のことがあまり好きではないように私には聞こえてならなかった。
「実習生とはさ。10歳くらい違うわけでしょ? 向こうからしたら、小学生なんてガキにしか見えないのが全然わかんないみたいなんだよね~」
「……」
私は、そんな話を聞いて何とも言えない顔をしていた。
向こうでは心音の味方をしていいように話しているようだ。そんなことをしていることもあり、どうも従姉は友達がいないようだ。
そんな話をしに来るのを私は付き合わされていたが、それが最終的に離婚すると知って、しょっちゅう遊びに来られても困ると言われる少し前になって、実習生がとんでもない目に合ったことを知ることになった。
あの、鬼婆のように心音が告白したのをスルーされたことで、子供好きで先生になろうとしているのであろうことか。ロリコンだと噂を流したようなのだ。
「やることがえげつないわよね」
「……」
それを聞きながら、眉を顰めずにはいられなかった。実習生がとんでもない目に合っているのを従姉は凄く楽しそうに話して聞かせたのだ。その表情から、面白がっているのは明らかだった。
「最低」
「だよね~」
「……もう、来なくていいよ」
「え?」
「両親、離婚することになったから。私のとこまで来なくていいよ」
「そんなこと言わなくてもいいよ。親が離婚したって、うちらには関係ないんだし……」
「あるよ。それに連絡もなく来るんだもの。私だって予定あるんだよね。そっちみたく、暇じゃない」
「っ、!?」
従姉は、心音と似ていた。頭にきた彼女が私を打とうとしているところをママと祖父母が見ることになり、二度と来ないでくれと追い出されることになったのだ。
「心陽。いつも、あぁなの?」
「あぁって?」
「叩かれてたの?」
「……そんなことないよ」
だが、ママと祖父母は言い淀んだ風に言ったせいで、勘違いしたようだ。
「全く信じられないね。心音は、あっちの血が濃いとしか言いようがないわね」
「そうみたいね。しかも、心音が実習生をロリコン呼ばわりしたらしくて、あっちの小学校で問題を起こしたみたい」
「ロリコン?」
「子供好きで先生になるのを目指しているのをロリコンだって言ったみたいなの。それを聞いて、周りも気持ち悪いって思ったみたいで、クラス中が大変なことになってるらしい~」
「幼稚園の時は、鬼婆って叫んだことで、とんでもないことになったんだったわね。全く、次々と厄介なことをやるわね」
「……それで、その実習生の先生は大丈夫なのか?」
ママと祖父母は、心音がしでかしたことで話していた。
私は、実習生が心音に好かれたことが発端だと言うことを知っていたが、ママたちはそれをそもそも知らないようだと思って何とも言えない顔をしていた。
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