上 下
13 / 20

13

しおりを挟む

色々あったから、ママは本当は駄目だと言いたかったに違いない。それを心音がしつこくして、あっさりと行かないと言い出し、私にも断らせようとしたことで、考えを改めたようにも見えた。

その日は、珍しくママが早めに迎えに来てくれ、龍介のママさんと会って話すのを見ながら、心音がふてくされているのを見ていた。


「じゃあ、来週は龍介くんのところで、再来週はうちに遊びに来るって言うのは?」
「え? いいの?」
「もちろん。せっかく、心陽が龍介くんに誘われたんですから」
「あら、あの子から誘ったの?」
「そうみたいですよ」


龍介のママさんも、洸平さんと同じくらい。いや、もっと疲れた顔をしていた。あれから、かなり経つのにまだ疲れたように見えていた。それを見かねてママは、休息が必要だと思ったのかも知れない。

私は遊ぶ予定が決まってウキウキし始めたが、心音は更にふてくされていた。

そう、私は心音のしつこいところを良く知っていたはずなのに家に誘われて浮かれていたのだろう。

龍介も、ぴょんぴょんと跳ねていて、危ないと怒られても跳ねるのをやめられずにいたほどだ。

お互いの家で遊べるとわかって、私も龍介も楽しそうにしていた。

それが、心音は気に入らなかったのだろう。


「え……?」


心音が、私のことを道路に突き飛ばそうとしたのだ。

だが、龍介が私の手を先に引っ張ってくれて、私は彼の方をよろめいた。

すると勢いよく突き飛ばそうとした心音の身体が止まることなく車道に出ていた。

そこを通ろうとしたのは、車ではなかった。自転車の前に勢いよく飛び出したのは、心音だった。


「心音!?」
「危ないだろ!!」
「すみません!」


ぶつかるところだったが自転車の人が避けてくれたことで、ぶつかることはなかった。

駆け寄ったママと龍介のママさんは、私と龍介に声をかけてくれた。

心音は、自分が飛び出したのであろうことか。私が突き飛ばしたと言ったが、他の人がそれを見ていて心音が心陽のことを突き飛ばそうとして、龍介が手を引いたことで自分が飛び出すことになったのを目撃されていて、そのことでよほど怖かったのだろう。

心音は漏らしていて、それを帰ろうとしていた幼稚園の子たちにも見られることになってしまい、自転車に轢かれそうになったところを見ていはおらず、漏らしたところをばっちり見られてしまって、私のせいにしたくとも上手くいくことはなかった。

そんなことがあって、私が龍介のところに遊びに行くことも、彼が我が家に遊びに来る約束もなくなってしまった。

それこそ、心音が心陽のことを殺しかけたことを重く受け止めることになったのだ。

パパは、そうは言ってもそれが真実かわからないと言っていて、ママはそれを聞いてムッとした。

パパの方の祖父母も、心音の味方をした。

ママは、これまでのことを考えていた。ママの方の祖父母も、そうだった。そもそも、心音の言う私が押したというのであれば、龍介が抱きしめて真逆の方に転がっているのもおかしいのではないかと。

するとそこが丁度、幼稚園の知り合いのママさんの家の近くで、監視カメラがあるとわかって、それをみんなで見ることになった。


「これは、酷いな」
「心音が押そうとしてるわね」
「そ、そうみたいだな」


パパたちは証拠があっても、子供のしたことで済まそうとしていた。

それをママたちは子供だろうと許せないとなって、両親だけでなく、祖父母たちも喧嘩となった。

それすら、心音は私にこう言った。


「あんたのせいよ」
「……」
「あんただけが、龍介のところにあそびにいこうとするからいけないのよ!」
「……」


信じられない言い分に私は絶句してしまった。

心音の思考回路が全くわからなくて、どうしたらそうなるんだと思うばかりだった。

喧嘩しているのも、わけがわからなかった。心音の味方をしている方が特に私には理解不能でしかなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです

珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。 それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。

母は、優秀な息子に家の中では自分だけを頼ってほしかったのかもしれませんが、世話ができない時のことを全く想像していなかった気がします

珠宮さくら
恋愛
オデット・エティエンヌは、色んな人たちから兄を羨ましがられ、そんな兄に国で一番の美人の婚約者ができて、更に凄い注目を浴びる2人にドン引きしていた。 だが、もっとドン引きしたのは、実の兄のことだった。外ではとても優秀な子息で将来を有望視されているイケメンだが、家の中では母が何から何までしていて、ダメ男になっていたのだ。 オデットは、母が食あたりをした時に代わりをすることになって、その酷さを知ることになったが、信じられないくらいダメさだった。 そんなところを直す気さえあればよかったのだが……。

可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。 それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。 そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。

婚約したがっていると両親に聞かされ大事にされること間違いなしのはずが、彼はずっととある令嬢を見続けていて話が違いませんか?

珠宮さくら
恋愛
レイチェルは、婚約したがっていると両親に聞かされて大事にされること間違いなしだと婚約した。 だが、その子息はレイチェルのことより、別の令嬢をずっと見続けていて……。 ※全4話。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。 そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。 同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

幼なじみが誕生日に貰ったと自慢するプレゼントは、婚約者のいる子息からのもので、私だけでなく多くの令嬢が見覚えあるものでした

珠宮さくら
恋愛
アニル国で生まれ育ったテベンティラ・ミシュラは婚約者がいなかったが、まだいないことに焦ってはいなかった。 そんな時に誕生日プレゼントだとブレスレットを貰ったことを嬉しそうに語る幼なじみに驚いてしまったのは、付けているブレスレットに見覚えがあったからだったが、幼なじみにその辺のことを誤解されていくとは思いもしなかった。 それに幼なじみの本性をテベンティラは知らなさすぎたようだ。

処理中です...