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「本当に似合わないな」
「っ、」
「はぁ、それでは私まで笑われる。今日は出かけるのは辞めにしよう」
「……わかりました」


ティルディアは、婚約者のノティスが贈ってくれるドレスを着るたび、そう言われるようになったのは、いつからだったか。彼の好みに合わせれば、合わせるほど、ノティスに一緒に出かけたくないと言われてしまうのだ。


(もう、わけがわからないわ)


ノティスが好む格好をすればするほど、彼の気持ちが離れていっている気さえティルディアはし始めていた。

もはや、何をしても嫌われていく気さえしてしまい、ティルディアは何が正解なのかがわからなくなっていた。

だが、それがノティスが時間を作って、別の令嬢と浮気する時間を捻出するためだったなんて、ティルディアは考えもしなかった。







ある日、いつものように一緒に出歩きたくないと言われて落ち込んでいたティルディアだったが、いつも落ち込んでしまい、外に出かける気も持てなかった。

ティルディアの友達は、それを聞いていて毎回それでは気が滅入るだろうとティルディアの好きな格好に着替えさせて、街へと連れだって出かけることにしたのだ。

するとそこで見かけたのは思いもかけないものだった。


「え……?」
「あれって……」


友達とティルディアが見たのは、ノティスが別の令嬢と腕を組んで、楽しげに歩いている姿だったのだ。


(何、あれ?)


気になった二人は、そのまま後をつけるようにお店に入り、そして彼らがティルディアを蔑ろにして愛を育んでいることを知ることになったのは、すぐのことだった。

ノティスは、そんなことに気づくことなく店を後にしたが、残ったティルディアと友達は……。


「ティルディア」
「……絶対に許せない」


わざと似合わない格好をさせるべく高いドレスを贈っていたことを知り、ティルディアはノティスたちのことを調べあげて両親に話して、婚約を破棄することにしたのだ。


「私も協力するわ。何でも言って」
「ありがとう」


友達も、怒りに燃えた目をしていたが、ティルディアには叶わなかった。


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