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伯爵令嬢のセレスティアルは、オースチンから婚約破棄を言い渡された。

オースチンの新しく婚約者となったのが、セレスティアルの義姉のオクタヴィネルだった。

オクタヴィネルは、セレスティアルのたった数カ月だけ年上なだけで、セレスティアルの両親が結婚する前から父が浮気していた相手との子供で、義姉は父の娘だと認知もされていた。

父は母とほぼ政略結婚で、本当に妻にしたかったのは、義母の方だったとセレスティアルとは聞かされている。


(そんなこと知りたくもなかったのに。亡くなってから、ぶちまけられても、困るわよね)


母が亡くなり傷心のセレスティアルは、喪が明ける前に再婚した父や義母となった女性に軽蔑の眼差しを向けていた。

そんなセレスティアルの扱い方が日に日に悪くなっていき、ついには婚約者をオクタヴィネルに取られてしまったのだ。


「お前に女の魅力がないからだ」
「っ、!?」


そんなことまで、娘に平気で言うような最低な父親だ。既に色々と傷ついている娘でも、傷つかないわけはないというのに。


(母に似ているが、父も義母も気に入らないのよね。きっと)


「セレスティアル。破棄されるような傷ものは、この家の恥だ。そのくらい、お前にも、わかるな?」
「……はい」


父と義母に家を追い出されることになったセレスティアルは、僅かなお金と母の形見のアクセサリーを持って、隣国へと向かうことにした。

流石に母の遺してくれたもの全部を持って行くのは無理だった。セレスティアルは、母が一番お気に入りだったアクセサリーだけを密かに忍ばせ続けて、何でも欲しがる義姉から守ることが出来たのだ。


(これだけでも、持ち出せて良かったわ)




途中で、行き倒れていた老人をセレスティアルは助けることとなったのだが、何とその人は、隣国の公爵家のご隠居さんだったらしく、セレスティアルを恩人だとして、何か出来ることはないかと言われた。

セレスティアルは仕事を探していると話して、ご隠居さんに聞かれるままに母が亡くなってから、怒涛の生活を涙ながらに話した。するとメイドとして働かせてもらえることになったのだ。


(いい人に出会えて、よかったわ)


父や義母、義姉のようにセレスティアルのことをぞんざいに扱う者など、そこには一人も居なかった。


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