上 下
5 / 10

しおりを挟む

ロディオンは婚約破棄をしたいと両親に言い、エリザヴェータと婚約したいと言い続けた。

破棄はともかく、エリザヴェータの婚約は健康上の問題から認めたくないロディオンの両親と大喧嘩となったようだが、アンゼリカとの婚約はあっさりと破棄となった。

その時に言われたことにアンゼリカは、ロディオンの母親がぼやいたことにカチンときた。いや、アンゼリカだけでなく、アンゼリカの両親もカチンときた。


「お菓子作りが下手な令嬢を選んだのに。こんなに使えないとは思わなかったわ」
「……」


それを聞いて、ロディオンの父親の方が顔を青ざめた。

アンゼリカは、確かにお菓子を作るのは下手だが、使えないとまで言われるとは思わなかった。全て、アンゼリカのせいにしている夫人に腹が立って仕方がなかった。

なぜ、アンゼリカが全て悪いことになるのかが全くわからなかった。


「お前、そんなことで選んだのか!?」
「? そうよ?」
「なんてことを」


ロディオンの父親は、妻が選んだ理由を初めて知ったようだ。顔色を悪くさせていた。

アンゼリカは、にっこりと笑ってこう答えた。この人にはずっと頭にきていた。この際だから、はっきりと言ってやろうではないか。


「そうですか。なら、今後は携帯食を頼まれても作るのをやめますね」
「は? 何で、携帯食の話になるのよ??」
「携帯食……?」


ロディオンとその母親は、わけがわからない顔をした。父親だけが、アンゼリカが携帯食を上手く作れる令嬢だと言っていたが、母親の方は冗談だと思っているようで信じることはなかった。


「アンゼリカ。帰ろう」
「そうね。アンゼリカ、丁度よかったのよ。教えても上手くできないからって、色々と頼まれて大変そうにしていたし」
「ま、待ってください!」


ロディオンの父親だけが、やめられたら困るかのようにしていたが、アンゼリカたちがそれで立ち止まることはなかった。

そんなことがあって、ロディオンの父親とエリザヴェータの父親も、子供たち妻たちのしでかしたことで、職場で針の筵となった。

アンゼリカは、他から頼まれても断ることしたことで、レジーナの父親と兄も、レジーナを責め立てているようだがアンゼリカの知ったことではない。

アンゼリカの父と祖父が、残念がっていたし、2人の職場の面々も忙しい時に丁度よいものがなくなり、アンゼリカが教えた面々が必死に作っても同じようなものが生み出されることはなかった。

それによって、ロディオン、エリザヴェータ、レジーナは両親や身内、親戚から非難轟々になるが、アンゼリカがそんなに凄い令嬢なことを認めることはなかった。


「あの令嬢が、そんな凄いわけないわ。みんな、私たちが羨ましいのね」
「そうだな」


ロディオンとエリザヴェータは何を言っても、婚約すると言うのでロディオンのことを跡継ぎから外して婚約させてからは縁を切ると言っても、婚約をした。エリザヴェータの方も婚約をするようなら、縁を切ると言われても、お構いなしに婚約をして、2人はこれまでと同じように幸せそうにしていた。

ロディオンは、エリザヴェータの作るお菓子さえあればよかった。

エリザヴェータが、自分の作ったお菓子を美味しそうに食べるのを見ていられればそれでよかった。

だから、学園を卒業して家を出て行くことになっても、食べるものに困っても同じようにお菓子を作り続けることをやめなかった。

この2人にとっての幸せは、それだけだったが、平民たちは、ロディオンたちを気味悪がったが、それを気にすることはなかった。

貴族たちは、そんな2人のことを気に掛ける者もいなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結/短編】いつか分かってもらえる、などと、思わないでくださいね?

雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
宮廷の夜会で婚約者候補から外されたアルフェニア。不勉強で怠惰な第三王子のジークフリードの冷たい言葉にも彼女は微動だにせず、冷静に反論を展開する。

【完結】え? いえ殿下、それは私ではないのですが。本当ですよ…?

にがりの少なかった豆腐
恋愛
毎年、年末の王城のホールで行われる夜会 この場は、出会いや一部の貴族の婚約を発表する場として使われている夜会で、今年も去年と同じように何事もなく終えられると思ったのですけれど、今年はどうやら違うようです ふんわり設定です。 ※この作品は過去に公開していた作品を加筆・修正した物です。

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。 何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。 諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

性悪な友人に嘘を吹き込まれ、イケメン婚約者と婚約破棄することになりました。

ほったげな
恋愛
私は伯爵令息のマクシムと婚約した。しかし、性悪な友人のユリアが婚約者に私にいじめられたという嘘を言い、婚約破棄に……。

どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください

ルイス
恋愛
レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。 やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが…… クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。 さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。 どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。 婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。 その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。 しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。 「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」

あなたとの縁を切らせてもらいます

しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。 彼と私はどうなるべきか。 彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。 「あなたとの縁を切らせてください」 あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。 新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。 さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ ) 小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。

君を自由にしたくて婚約破棄したのに

佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」  幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。  でもそれは一瞬のことだった。 「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」  なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。  その顔はいつもの淡々としたものだった。  だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。  彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。 ============ 注意)ほぼコメディです。 軽い気持ちで読んでいただければと思います。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

処理中です...