18 / 40
18
しおりを挟むエウフェシアと婚約した王太子は、自分でエウフェシアと婚約したいと言っておきながら、王太子はイオアンナと密会することをやめることはなかった。
アルテミシアと婚約していた頃は、エウフェシアとは挨拶程度で姉が居ないところでは、話しかけられたのは浮気うんねんの話をされた時牙、初めてだった。
それが、エウフェシアが婚約者となってからは上手く本性を隠していた頃より、王太子はエウフェシアのことを人が見ている時は気にかけてくれていた。
それも、人がいる時だけだった。エウフェシアは婚約者なんかにさせられて、王太子妃となるための勉強をするはめになって、それに終始苛ついていたかというとそうでもなかった。そこに不満はなかった。
新しいことを勉強できることが楽しくて仕方がなかった。学園を姉が卒業するまでの間のことは、もう暗記済みなせいで、もはやエウフェシアの方が姉よりも完璧な令嬢と呼ばれるに相応しいまでになっていたが、それをなぜか誰も認めたがらなかった。
ループするたび、姉妹揃って完璧な令嬢となっている状態でも、エウフェシアだけが出来損ないと呼ばれるのだ。そんなことを言う人たちより、エウフェシアの方ができているのにおかしな話だ。
でも、おかしくなっていたのは、周りだけでなくてエウフェシアもだったようだ。出来損ないと呼ばれるようなことはなくなっている状態なのにそこを追求しようとしなかったのだ。
それよりも、王太子とイオアンナのことの方を気にしていた。いつも、他に何か考えていた気がするが、すり替わるように覚えていることが限られていることにエウフェシアは気づいていなかった。
(どうして、あの2人が密会しているのが広まらないんだろう? 私が、誰かにしたら、変わるのかしら?)
だからといって、お節介なことをしようとは思わなかった。見つめ合って想い合っているだけなのは、唯一変わっていないことだが、どうしてもお人好しになれなかった。
王太子とイオアンナが、どんなに相思相愛で想い合っていたとしても、それをアシストするようなことをしたくなかったのだ。どちらにも、それ程の思い入れはない。
むしろ、散々な目に合わされてきたのだ。幸せになるより、破滅してほしいと思う方がまともなようにすら感じてしまっていた。
だが、感情的に行動することはなかった。
(お姉様も、こうして見てると可哀想よね。完璧だと散々なまでに言われて、ちやほやされていたのが、嘘みたいになってる。婚約者だった王太子の本命にはなれないんだもの。まぁ、なれないからって、ここまで堕ちていく人だとは思わなかったけれど)
だから、ループするにつれて酷くなっていっているようにエウフェシアに思えてならなかったが、色々と派手にやらかすようになっても、エウフェシアのできが悪いからだと言われ続けるのが、変わることはないままだったことも、おかしいが。
それでも、エウフェシアは公爵家から出て行こうとすることはなかったし、できなかったことを覚えてはいなかった。ヘシュキオスとの婚約に抵抗することもなかったと思っているが、本当になかったのかすらエウフェシアは覚えていなかった。
ただ、どうやったら、このループが終わるのかだけが記憶から抜けることはなかった。エウフェシアは気がおかしくなりそうになっていた。いや、もう、おかしくなっていたのかも知れないが、どこがどうおかしいのかすらわからなくなっていた。
(ループするのには理由があるはず。理由を知りたい。でも、そのために思ってもいないことをやって、誰かの肩入れしてまで、この状況から逃れたいとは思わない)
エウフェシアは、自分だけが幸せになることを望んではいなかった。散々なまでにエウフェシアは周りにされて来たのだが、それでも自分1人だけが幸せになる道を選ぼうとはしていなかった。かといって、みんなで地獄に堕ちろなんて思うこともなかった。
なぜか、不思議と自分だけが幸せになることにエウフェシアは物凄い抵抗感があった。
(私が、ここまでお人好しだとは思わなかったわ。普通なら、みんなが不幸になって自分だけの幸せのために動いてもいいはずなのに。どうしてもそう思えない。そんな行動をしたいと思わない)
そんなことを思うようになっても、ループは続いていた。エウフェシアが死ぬことに何の変わりはなかった。
それが、更に酷くなろうとも、エウフェシアは自分に何をさせたいのかとそればかりを考えていたが、それでループが終わるかも知れないことを実行することはなかった。
29
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?
サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに――
※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
【完結】地味と連呼された侯爵令嬢は、華麗に王太子をざまぁする。
佐倉穂波
恋愛
夜会の最中、フレアは婚約者の王太子ダニエルに婚約破棄を言い渡された。さらに「地味」と連呼された上に、殺人未遂を犯したと断罪されてしまう。
しかし彼女は動じない。
何故なら彼女は──
*どうしようもない愚かな男を書きたい欲求に駆られて書いたお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる