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しおりを挟む和久に毎日のように話しかけられることで、彼の名前と顔を覚えることになった。苦手なことを初めて当てた人なこともあり、休み明けでも三千華は彼がわかったことに本人が一番ホットしていたのは内緒だ。
そんなことを思いながらも、挨拶だけでなくて、色んなことを話すようになった。お爺さんのことを聞いてくれたりした。そのうち、和久と付き合うことになるのも早かった。
和久は、両親が離婚しているようだ。父親は、再婚しているようだが、娘が生まれてデレデレしていて、再婚した後妻が何かと和久の母親に意地悪いことばかりしていて、それに気付いていながら何もしない父親に幻滅しているようだ。
それなのに和久に自分が立ち上げた会社を引き継がせようとしていることと母親が息子が大学に入るのを機に再婚したいと言っていたらしく、それを祝福して新しい父親との関係も良好なようだ。
「今はありきたりとまではいかないけど、そんなに珍しくない名字だけど、父方は珍しい名字だったから、ホッとしてるんだ」
「ホッとするほどなんだ」
そんな話をしていたが、珍しい名字がどんなものなのかをこの時の三千華は彼に聞くことはなかった。
それから、三千華は和久とデートしながら学業とボランティアをしていた。
もう、桜がちらほら咲いていて、今年は去年よりも早いことに三千華はうきうきしていた。
(秋丞さんとお花見に行くのもいいな。あの近くで、桜が咲くスポットを見つけたけど、去年は終わり頃になっちゃったし、今年は満開の桜を一緒に見れたらいいな)
そんな風に和久といながらも、お爺さんのことを三千華は考えていた。なぜか、彼といると秋丞のことをふと思い出してしまい、こういうのも一緒に見れたら、どんな反応をするのだろうかと三千華はついつい考えてしまっていた。
それは、他の人といる時にはなかった。和久といる時に三千華は、なぜかお爺さんのことを思い出してしまうのだ。
(お爺さんに似たような物言いをするからかな? ……変なの。会ったこともないのに。こんなに雰囲気が似ている人もいるのね。そのせいか。落ち着くんだよね)
三千華は、彼にそんなことを思っていたが、その話をしてはいなかった。
「春夏冬じゃん!」
「おぅ、久しぶりだな」
(春夏冬……?)
和久は、中学生時代の友達に会って、両親が離婚する前の名字で呼ばれたのだろう。
珍しいと言っていたが、それがあのお爺さんと同じなことに三千華はびっくりしてしまった。
「あ、もしかして、カノジョ?」
「もしかしてって、なんだよ」
そんな会話をしているのを三千華は聞いていなかった。
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