13 / 13
13
しおりを挟むそんなことが親世代にあったことを知らない子供たちが多かった。
「どうしたの?」
「……私を笑う奴を呪ってるのよ」
「何で、そんなことしてるの?」
「そんなことして、何が楽しいのさ?」
男の子と幼い女の子が心底、不思議そうにしていた。老婆のような修道女らしからぬことを言うのに首を傾げた。
「こら、2人とも。お仕事の邪魔したら、おば様たちに怒られるわよ」
「でも、変なこと頑張ってるんだもん」
「変なこと?」
少し年上の女の子が、不思議そうに近づいてきた
そして、修道女が頑張っていることにきょとんとした。
「あの、失礼ですが、そんなことして楽しいですか?」
「もちろん」
「……そんなことしても、どんどん笑われるだけだと思いますよ」
「なら、もっと呪うだけよ。そうすれば、笑われなくなるわ」
「笑われたくないってことですよね?」
「馬鹿にされて楽しいわけないでしょ」
それを聞いて小さな女の子が……。
「なら、それやめたらいいよ」
「は?」
「世の中、されたくないことをされるのは、原因があるからなんだって。だから、続くのならまず、やめてみて、他をやるのがいいんだよ。私に意地悪する子に話すの嫌で無視したら、酷くなって、ちゃんと話すようにしたら、意地悪されなくなったもん」
「……」
「時々、お兄ちゃんと喧嘩するようになったけど」
「あれは、あいつが悪い」
「喧嘩は良くないよ」
「……」
妹に言われて、兄はムッとしていた。どうやら、その子は妹に気があるらしい。
「だって。お兄ちゃんとして、妹には話し合いができるところ見せた方がいいわよ」
「男なら強さで勝負してもいいじゃん」
「どっちにしろ。おじ様が後ろに控えているから、大丈夫だと思うけど。妹に嫌われないようにしといたら?」
「……そうする」
それはつまり、父親に嫌われ役を押し付けると言うことではあるが、それを選んだようだ。
そんなこんなで話しているところに老婆を探していた修道女たちがやって来た。
「ここにいたのね。さぁ、戻りましょう」
「あ、これ、あげる!」
「あら、ごめんなさい。何か迷惑をかけたかしら?」
「ううん。その人にあげる」
「……私に?」
「うん。甘いの食べるとにこっとなるでしょ? 笑っているといいことあるよ」
「……」
それを聞いて、お兄ちゃんの方は……。
「変なのも釣れるけどな」
そんなぼやきが聞こえて、年上の女の子が、その子の頭を撫でた。妹が、男にモテるのを阻止したい年頃なのだ。
「はい!」
「……ありがと」
「っ、」
「どういたしまして!」
久しぶりにお礼を言うのに迎えに来た修道女たちは驚いた。
その1人は、年上の女の子をまじまじと見てきた。
「エレオノーレちゃん……?」
「母のことをご存じなのですか?」
「あなた、そう。お母様の幼い頃にそっくりね」
「よく言われます」
従弟妹が遊びに来ているから、彼女は庶民的な格好をして街を散策していた。
ちゃんと控えている護衛たちがいたのにも、修道女は気づいた。
「この子たちは、あなたの弟妹?」
「いえ、叔父の子供たちです」
「そう。……縁とは不思議なものね」
「?」
しみじみという修道女は、深々と頭を下げて戻って行った。
その話を母であるエレオノーレにした。ちゃん付けで、呼ぶ人物に心当たりがあったようだ。
それを聞いて、エレオノーレは涙を流した。何があったのかと夫が慌てて駆けつけた時には、娘が余計なことを言ったと思っているのをそんなことないと言っているところだった。
「エレオノーレ」
「私、もっと頑張るわ」
「大丈夫なんだな?」
「えぇ、凄くやる気に満ちてるわ」
「……なら、いいが」
義兄に殴り倒されるかと思っていたのをエレオノーレの夫が言葉にすることはなかった。
イザークとガブリエルも、子供たちから修道女の話を聞いて、誰なのかわかったのはすぐだった。
でも、何かする気はなかったが、子供たちが時折、修道女と仲良くしていても、そのままにした。
それでも、見張りをつけないことは怠ることはなかったが、ちょっとずつでもいい方向に向くことになるきっかけが、自分たちの子供たちがしていることに何とも奇妙な縁を感じずに入られなかった。
そう、世界がどうにかなるのではないかと思われていた呪いが、ちょっとずつおさまることになったのは、そんなことだった。
生まれ変わった世界で、幸せになってほしくて、ずっと奮闘している者たちがいた。
前世は、恋人同士だったが、それを諦めて兄として守る者。
妹をどうにかしようとして、再び兄妹と生まれても、同じことになってしまったもの。
それぞれの人生があったが、前世でやらかしてしまったカルマを本人が、どうにかしない限り呪いがおさまることはないようだ。
103
お気に入りに追加
254
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
悪役令嬢ですが、どうやらずっと好きだったみたいです
朝顔
恋愛
リナリアは前世の記憶を思い出して、頭を悩ませた。
この世界が自分の遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気がついたのだ。
そして、自分はどうやら主人公をいじめて、嫉妬に狂って殺そうとまでする悪役令嬢に転生してしまった。
せっかく生まれ変わった人生で断罪されるなんて絶対嫌。
どうにかして攻略対象である王子から逃げたいけど、なぜだか懐つかれてしまって……。
悪役令嬢の王道?の話を書いてみたくてチャレンジしました。
ざまぁはなく、溺愛甘々なお話です。
なろうにも同時投稿
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる