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しおりを挟む(アドルフ視点)
イザークと仲良くなりたくて、声をかけたら……。
「それより、お前のとこの妹、どうにかしろよ。なんで、幼なじみだからってエレオノーレに何でもかんでも押し付けてんだよ」
そう言われた。そんなことを私に言って来た者は初めてだった。
初めてのこと尽くしで、やったことがないことをした。妹にらしくないことをした。昔から何を言っても変わらないことだとわかっていてやった。
いや、兄としてはらしいことだろうが、妹はわがままをやめられたことがないため、あれこれ言ったところで、難しかったようだ。
それでも、しつこく何度も話をしたが結果は、無視されるようになった。
イザークがやったことで、あっという間に周りは変わったのに私は、妹をちょっとでも変えることができなかったのだ。
「もう、ほっとけ」
「イザーク」
そう言ったのは、イザークだった。それでも、兄は兄だ。ほっとけないと言うイザークは……。
「いい兄貴だな。だが、もう、相手もそれなりの年なんだし、気づくまでほっとくしかないさ。体験してみなきゃ、わからないんだろ」
「体験。そうか。そうかもな」
「それより、お前、友達いるか?」
「友達……?」
「男友達だ。滅多に学園に来ないみたいだから、いないんじゃないか?」
イザークの言葉にアドルフは、目を瞬かせた。そこから、友達とやらを作ることになるとは思わなかった。
イザークと友人になれるだけでよかったのだが、彼は……。
「お前みたいなのを1人で相手してられっか。もっと人生、楽しめ」
「どういう意味だ?」
「世の中、見た目だけじゃ駄目ってことだ。中身も磨け。むしろ、中身がかっこいい方がいいぞ」
イザークいわく、私は真逆らしい。そのせいだろう。婚約破棄になったことを話すと大変だなと慰められた。
多分、妹のことと中身に問題があるからだろう。
「そんな心配、初めてされた」
そんなことを言うとイザークに同情的な視線を向けられた。
その頃には、エレオノーレ嬢の姿が見えなくなっていたが、気にもならないくらい、学園が楽しくなっていた。
そのまま、続けばよかったが、そうはならなかった。妹を放置し続けたツケだろう。
アドルフは知らなかった。彼は父に似た見目麗しいさを持って生まれたが、妹が母の血筋にあがろうことができなかったことで悪化していったことを。
それをエレオノーレが側にいたから抑えられていたことを彼は知ることはなかった。
それをエレオノーレに任せっきりにしていたせいで、自分も引きづられるように幸せになれなくなっていることに気づくことはなかった。
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