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しおりを挟むそれから、数日して話があると子爵に集められた。
(やっも破棄になったのかな?)
それにしては、まだ疲れた顔をしている父を見てジャクリーンは首を傾げて母を見るのと同じように疲れた顔をしていた。
「え? 破棄しない?」
「そうだ」
「どうしてですか!? もう、とっくに終わったことじゃなかったんですか?!」
アイリーンが、とんでもない勘違いをしていたせいだと言うのに破棄は成立していると思っていたようだ。
それを聞いていたジャクリーンと母は、父に怒るってお門違いすぎると思っていた。いや、使用人たちも同じような目をしていた。もはや、アイリーンのことで隠すことがなくなってきた。どうせ、アイリーンはそれにすら気づかないのだ。隠すだけ馬鹿らしくなったようだ。
「お前の頭で終わっていただけだ。アグニュー侯爵が、息子の婚約者がコロコロと変わるのに世間体を気にしたようだ」
「そんな!」
「グダグダ言うな! 元はと言えば、お前の常識のなさのせいだろうが!!」
「っ、」
父に怒られている姉は、ギロッ!とジャクリーンのことを睨んできた。
それを見て全く反省していないと思ってしまったが、同時にジャクリーンはホッとしてもいた。アイリーンのこの態度に対してではない。
アグニュー侯爵が、息子の言うなりになるような人でなくてホッとしていた。アグニュー侯爵夫人は、ジャクリーンのことを気にいってくれていたのを一目惚れしたからと息子がうるさく言い続けたことで、渋々アイリーンとの婚約を認めたのだ。
そのことをジャクリーンは両親には伝えていない。アグニュー侯爵夫人がエグバートに味方していたら、撤回されていたはずだが、そうはならないようでホッとしていた。
(婚約解消の撤回をされることはないってことよね。よかった)
アグニュー侯爵夫人は諦めたわけではなかった。でも、エグバートのやること成すことにうんざりしたようだ。
一目惚れしたと喚き散らして婚約させてくれるまで騒ぎ立てていたが、それが思っていたのと違っていたとなって、またうんざりするほど喚き散らしたのだ。
そんな息子の情けなさにアグニュー侯爵夫人は幻滅したようだ。夫人だけでなくて、アグニュー侯爵も跡継ぎとしてエグバートでは心配になってきたようだ。
(あの家って、他にも子息がいるから、その辺は問題なさそうよね。でも、アグニュー侯爵家の他の子息と婚約する気はないけど。アグニュー侯爵夫妻も、エグバート様とお姉様の婚約を破棄させないってことは、そちらも諦めてくれたってことよね)
そう思って安堵しながら、ギャーギャーとアイリーンが父に文句を言うのを聞きながら、食事を取った。全く美味しくなかったが、何も食べずに部屋に戻っても大変だ。
ここ最近、食欲がなくて食べる量が減っているのだ。それに気づいて、あれこれと作ってくれているのを残すわけにもいかなかった。
アイリーンがギャーギャーと騒ぐのを聞きながら、黙々と食事をした。
そうと決まってから、アイリーンは学園に通うようになった。エグバートも同じだった。
2人は、そのまま婚約し続けるように両親に言われたはずなのだが、学園で顔を合わせた途端、それを綺麗さっぱり忘れたようだ。
「お前のせいだぞ!」
「あなたのせいでしょ!」
喧嘩を始めてしまったのだ。それを見てジャクリーンは、他人のふりをした。
「ジャクリーン」
「見なかったことにして」
「……あなたのお姉さん、また何かしたのね」
ジャクリーンの親しい友達は、ギャーギャーと騒ぐ2人を見て、そこから離れようとするジャクリーンを見て、そんなことをぽつりと呟いていた。
それにジャクリーンは曖昧に笑っただけにしておいたが、友達が追及して来ることはなかった。
朝、そんなことをした姉たちは、放課後になる頃には、こんな風に言われていた。
「あの2人がこの1週間休んでいたのが、お互いのせいで風邪を引いたと思って怒っている……?」
「違うの?」
「えっと」
「酷い風邪を引いたのを相手のせいにするなんてね。あれだけ長らく休んでいたのに心配より、怒鳴り合うなんて、一目惚れが聞いて呆れるわよね」
「ジャクリーンのお姉さんの方も信じられないわ。妹から婚約者を奪っておいて、たかが風邪のことでずっと喧嘩しているなんて、最悪もいいところだわ」
「……」
どうやら、ずっと言い争っていたようだが、どっちが悪いか的な話をしていたようで、それを風邪についてだと思われたようだ。
それを聞いてジャクリーンは、肯定も否定もせずに曖昧な顔をしただけにしておいた。
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