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しおりを挟む「アリーチェ嬢」
「あ、エルネスト様。おはようございます」
「おはよう。もう、具合はいいのか?」
「えぇ、まぁ。あ、プリン。美味しかったです」
そんな風にアリーチェは、エルネストと和やかに話をしていた。話していることにアリーチェは驚いてしまった。
(あれ?)
兄が何も反応しないことにアリーチェは、ようやく気づいてキョロキョロした。
「どうかしたか?」
「いえ、お兄様の姿が見当たらなくて」
「あぁ、あいつなら、留学生のところだと思うぞ」
「留学生ですか?」
「もしかして、聞いていないのか?」
「?」
「あいつが、留学してたのは……」
バチン!
「っ!?」
「虫がいた」
エルネストの頭を兄が叩いていたかと思えば、そんなことを言っていた。凄いいい音がして、アリーチェは……。
(痛そう。お兄様も、お姉様と似てるところがあるみたいね。ある特定の人物に手を出すところとか)
アリーチェは、兄の後ろにいる綺麗な女性と目があった。彼女も、驚いていたようだ。
「アリーチェ。紹介する。こちら、隣国の王女のロベルタ様だ」
「あなたが、妹さんね。初めまして、ロベルタよ」
「初めまして、アリーチェ・グランディです」
自己紹介をしながら、アリーチェは……。
(面白いものって、この方のこと?!)
兄の留学期間が短期から長期に変わった理由が、彼女だと気づいたのはすぐだった。
そのため、アリーチェはこの方が義理の姉になるのかと密かに思って、そわそわしていたのだが……。
「え? エルネスト様と婚約した……?」
アリーチェは、兄といい感じなのだと思っていたのに違っていて、びっくりしていた。
「アリーチェ。知らなかったの? あの王女、エルネスト様に一目惚れしたことを王太子が知って、留学していたあなたのお兄さんに相談していたから、留学期間が長くなったのよ」
「そうなの?!」
レティツィアの方が兄が隣国で何をしていたかに詳しかった。どうやら、婚約者が詳しく知っていたようだ。
ロベルタは、エルネストと婚約して、より一層輝いていた。眩しいくらい綺麗だった。
でも、アリーチェは複雑な顔をしていた。
「アリーチェ。どうした?」
「……何でもないです」
(お兄様とお似合いだと思っていたんだけどな。エルネスト様とロベルタ様は、美男美女だけど。なんか、しっくりこないのよね)
兄は、アリーチェの考えていることを誤解していた。エルネストが王女と婚約したのにショックを受けていると思っていたのだ。
「アリーチェ。もしかして、エルネスト様のこと狙ってた?」
「え?」
直球で聞いて来たのは、レティツィアだった。それにアリーチェは、きょとんとした。
「狙うって、何のこと?」
「違うの? 何かと気にかけてもらっていたんでしょ? 私は、エルネスト様はアリーチェに気があると思っていたのよ」
「まさか。お兄様の幼なじみだから、気にしてくれていただけよ」
アリーチェは、全くエルネストのことをそういう対象で見てはいなかった。親友であるレティツィアは、すぐにわかったようだ。
それこそ、兄と王女がお似合いだと思っていることまでは流石のレティツィアもわからなかったようだが。
(なんか、しっくりこないのよね。お兄様との方がしっくりくると思うのは、私だけなのかな)
みんな、エルネストとロベルタを見てとてもお似合いだと褒めちぎっているのを耳にするたび、アリーチェは兄との方がよかったのにと思わずにはいられなかった。
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