前世魔性の女と呼ばれた私

アマイ

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25終わらない夜のはじまり※

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「とてもお綺麗ですよ、リーティア様」

美しく寝支度を整えてくれた侍女がにっこりと微笑む。

「ありがとう」

着せられた薄手のナイトドレスは、前合わせが胸元のリボン一つで留められていた。これを解かれれば――身を守るものは何もない。

「こちらの扉からどうぞ」

侍女は一礼すると、音もなく退出した。
私はふうっと息を吐く。この扉の先は夫婦の寝室へと繋がっている。

今日は式のため、朝早くから支度に追われ、気付けばあっという間に夜だった。
式から披露宴までがあまりに目まぐるしく、まだ実感や感慨というものが湧かない。

私は今日、シグルドの妻になった。

ドアノブを回すと、重々しい音を立てて扉は開いた。
間接照明の灯された部屋の中は薄暗く、かなり広い。そして天蓋付きの大きな寝台が目に飛び込んできて、ドキリと心臓が飛び跳ねた。

シグルドに抱かれるのは初めてではない。けれど、私は妙な緊張感に囚われていた。

愛する男のものになる、そして愛する男を手に入れる特別な夜――少し震える指先を眺めながら、ふっと苦い笑みが込み上げた。

部屋を見回してみるものの、シグルドはまだ居ないようだった。披露宴では男性達に囲まれ、大分飲まされていたので暫く……もしかしたら酔い潰れているかもしれない。

私は緊張を紛らわす為、バルコニーに出て風に当たることにした。
少し冷たさを孕んだ風が、湯上りの火照った肌に心地良かった。

シグルドと学園で再会して婚約したのが半年前。はじめはユージンへの些細な意趣返しのつもりだった。
それがまさか――前世を思い出した私がシグルドを愛してしまうなんて……人生とは何があるか分からないものだ。

今日までの溺れるように愛される日々は本当に幸せだった。私にもこんな幸せを返す事が出来るのだろうか。

「シグルド……」

「呼んだか?」

振り返ると、扉に腕組みをしてもたれ掛かり、微笑するシグルドがいた。
酔っているのだろうか。目元はほんのりと赤く、湿りを帯びた赤髪と、緩く着崩したナイトガウンが妙に艶めいている。

無意識に一歩後ずさる。シグルドは片眉を吊り上げて、バルコニーへ足を踏み入れた。

「ティア……」

そっと頬に触れる掌が、焼けるように熱く感じられた。至近で私を覗き込むアイスブルーの瞳は、気遣うような優しさの中に、仄かな情欲を灯らせている。

「怖いか?」

「……分からない」

シグルドは親指の腹で私の下唇をゆっくりなぞる。

「俺は……君に触れて正気でいられる自信はない」

切なく揺れるアイスブルーの瞳に、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。

「愛してるティア……」

壊れ物に触れるようにシグルドが私を優しく抱き締める。

「何だか今日のシグルド、いつもと違うようだわ」

シグルドの胸に頬を当てると、早鐘のような心臓の音が耳を打った。ああ、そうか。シグルドもきっと私と同じ気持ちなのだ。私はホッと体の力を抜いてシグルドに体を預けた。

「出来る限り優しく愛したいんだ」

「そうね、前は丸2日動けなかったわ」

「すまない……これでもかなり反省はしたんだ」

私は首を横に振る。

「ふふ、いいのよ。私幸せだったもの、あなたと出会ってからずっと……」

「……ティア」

ふわりと抱き上げられて、反射的にシグルドの首に腕を回す。絡み合う視線が自然と引き合うように、2人の唇が重なった。

シグルドの呼気に混じるアルコールの香り。クラリと酩酊感を覚えたのは、このアルコールの為か、それともシグルドから立ち上がる恐ろしい程の色香の所為か――

ふわりふわりと心地良い揺れに身を任せているうちに、いつしか私は寝台の上に横たえられていた。

見上げると、シグルドの肩からナイトガウンが滑り落ち、鍛え抜かれた裸身が惜しげも無く晒されていた。

何て美しい肉体だろう。私が手を伸ばすと、その手を取られて口付けられた。騎士が姫にするそれのように丁寧に、恭しく。

「シグルド……」

「もう止まれない……ティア」

愛しても良いか?
狂気のような劣情を孕んだ瞳が、ありたけの理性で私に裁可を委ねる。

私は返事の代わりに唇を重ねた。離そうと引きかけた唇の隙間から熱い舌が割り入ってくる。

「ふっ……ん……」

シグルドの大きな掌が優しく私の身体を弄る。そしてリボンの結目をゆっくりと解いた。

ナイトドレスはスルリと左右に開かれ、下着を身につけていない私の裸身はシグルドの眼前に晒された。シグルドはすうっと目を細める。

「ティア、綺麗だ……」

シグルドは掌で優しく乳房を包み、まるく頂きを親指の腹で撫でた。そしてもう片方の尖りを舌先で絡めながら口に含む。
指先と舌先とで激しく、優しく弾かれる度、吐息は甘さを孕み、身体がふるりと震えた。

シグルドは私の足を優しく開き、秘裂に長い指を添わせる。蜜口から溢れる愛液を纏わせ、割れ目をなぞりながら、シグルドは私の反応を確かめているようだった。

指先が花芯に触れた時、強過ぎる刺激にビクリと体が強張る。シグルドは愛液を纏わせた指先を私に見せ付けるように舐ると、ふっと目を細めた。

そして内股にそっと舌を這わせ、時折音を立てて吸い上げながら、唇は股の根へと降りてゆく。

触れ方は優しいのに、じわじわ、じわじわと追い詰められ嬲られているような感覚。自然と内股に力が入ってシグルドの頭を挟んでしまった。

シグルドはふっと笑って花芯を口に含む。ぬるりと粘膜が擦れ合い、ザラリとした舌の感触が、最も敏感な処を容赦なく攻め立てる。

「ああぁ……っ!」

背筋を貫く衝撃が脳天を突き抜け、体中が甘く気怠い快感に満たされた。
シグルドは更にちゅうと音を立てて吸い上げながら、蜜壺へそっと指を差し入れた。
既に熱く蕩けたそこは、難なく節高い指を2本、3本と迎え入れる。

シグルドは解すように内壁を優しく擦り、喘ぐように反らされた私の首筋を甘く食む。
弱いところを舐めて、吸い上げて……絶え間なく与えられる刺激に、堪らず私は身を捩る。

「んっ……シグ、ルド……」

緩やかに、確実に甘く酔わせる愛撫は、気が触れそうな程に私を乱した。
私は快感に潤む瞳で縋るようにシグルドを見上げる。

「おね、がい……も、あなたが……欲し……」

シグルドは切なげな吐息を漏らすと、食むように唇を重ねた。熱い唇、熱い舌――シグルドの触れるところ全てが熱く焼けるようだった。

「俺も……君が欲しくて気が狂いそうだ……」

私を見詰めるアイスブルーの瞳は狂おしい程の熱情を孕み、チリチリと燃える情欲の炎が凄絶な色香を放っていた。シグルドは蜜口へ荒ぶる自身を押し当てた。

「愛してるティア……ずっと、愛してた……」

聞き取れなかった語尾を問い返す間もなく、恐ろしいほどの怒張が隘路へ圧し入ってきた。痛みはない、けれど慣れない質量と圧とに苦しさを覚えた。

熱杭がゆっくりと最奥に沈められた時、漸く一つになれた――そんな例えようもない充足感に包まれる。

シグルドは少し苦しげに眉根を寄せながらも、蕩けるような熱い瞳で私を見下ろしていた。
手を差し伸べると、その手を取ってシグルドはゆっくりと身を倒し、息が触れるほどの距離で視線を合わせた。

淡い暖色系の明かりに照らされて、青いはずのシグルドの瞳は燃えるような紅蓮に輝いていた。

なんて綺麗――

私はシグルドの頬に触れて微笑んだ。

「愛してるわシグルド……」

「ティア……」

シグルドの瞳に瞬時に灯る獰猛な光。射抜かれて背筋がゾクリと粟立った。
シグルドは私の瞳を捕らえたまま、ゆっくりと自身を引き、奥へ突き入れた。

ゆるゆると内壁を擦り、奥へ深く突くような抽挿に、蕩けるような快感と全身の震えが止まらない。

こんな感覚は初めてだった。緩やかに、確実に官能の高みがこちら側へと近づいて来る。

「あっあぁぁぁ……!」

甘く柔らかく包まれるような快感に全身はビクビクと震え、思考は蜜のようにドロドロに蕩かされた。そして熱くうねって楔を絞め上げる蜜壺に、シグルドは苦しげに眉根を寄せながらも妖しく笑んだ。

「ティア……誰より淫らで美しい俺の」

妻――耳元で熱い吐息交じりに囁かれ、ゾクリと背筋が震えた。シグルドが囁く「妻」という響きは、想像以上の甘さを孕んでいた。

そんな私に気付いてか、シグルドは悪魔のように蠱惑的な笑を浮かべると、啄むように口付けた。

「俺のティア……」

触れる毎に深いものにしながら、シグルドは熱杭を奥へ突き入れた。そして凶悪さを増す瞳に、シグルドの箍が外れつつある気配を感じた。
そっと両手で日に焼けた精悍な頬を包む。そして私は淫らに、蕩けるように微笑んだ。

「あなたの全部を、私に頂戴――」

瞳が紅みを増し、迸る狂気のような劣情がほの見えた。ああ、喰われる――昏い喜びに満たされると同時に、嵐のような抽挿に全身を揺さぶられた。

身の裡に秘めた苛烈さと熱情の全てを叩きつけるような激しさだった。
特別な夜だから、とどれだけ私を思い、抑えて愛してくれたのだろう。
シグルドへの愛おしさで私の心は溢れるほど満たされていた。

もう幾度目かも分からない高みへ突き上げられた時、熱杭が一層怒張を増し、ビクリビクリと脈打ちながら最奥で欲を放った。

私は甘い倦怠感に酔いながら、荒い息を吐くシグルドを抱き締めた。
シグルドは私の胸に顔を埋め、柔らかさを堪能するように口付け、頬擦りする。
そんな様子が心底気を許し、甘えられているようで堪らなく愛おしかった。優しく頭を撫でていると、蜜壺に収まったままの雄芯は再び質量を増した。

「ティア……」

「ふふ、全部受け止めるから、全部頂戴――」

言い終わる間も無く、シグルドは激しく己を叩きつけた。
私達の長い夜はまだ始まったばかり――
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