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sideレイラ
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「ごめんレイラ! もう絶対しないと約束する……頼む! お願いだから許してくれ!」
素っ裸のまま私の足元で土下座している男――マシューのつむじを眺めつつ、もうこれを見るのは何回めだっけと考える。
確か……記憶にある限り十八回目かな。
私はつと顔を上げ、ベッドのシーツに包まってブルブル震えている、こちらも裸の女性に努めて明るく微笑んだ。
「少し彼と話がしたいので、申し訳ありませんが席を外して頂けませんか?」
「ひゃい!」
妙な声を上げながら、女性は脱兎の如く部屋から出て行った。
穏やかに話したつもりだったのに、そんなに怖かったのかしら、私……
「レイラ……嫌だ、捨てないでくれ……俺なんでもする、愛してるのは君だけなんだ」
子犬のような涙目で縋りついてくるマシュー。
浮気はするけど捨てられたくない、愛してるのは君だけ、か。
これが十八回目なのだから、随分と安い愛に軽い謝罪だ。
まあ私とマシューは親の決めた婚約者なだけであって、まだ体の関係があるわけではない。
結婚前の火遊びと許してやりなさい、なんて親は言うけれど、どうしてそれが男性にだけ許されるのかしら?
こんなにマシューが病みつきになっているのだし、浮気とはさぞ楽しいものに違いない。
そこでポン、と閃く。
私もしてみればいいではないか、浮気とやらを。
「マシュー、私いいことを思いついたの」
「え⁉︎ な、なに⁉︎」
「あなたと同じ回数分私も浮気するわ」
「なっ……! 駄目だ嫌だレイラ! お願いだからやめてくれ!」
「私が把握してるだけで十八回……残念だけどあなたに処女を捧げることはできなくなりそうね」
ふふっと笑うとマシューはこの世の終わりみたいな顔をした。
「う、嘘だろレイラ……他の女なんて皆君の代わりだったのに……」
最低なことをサラッと言ってくれる。
浮気は不治の病なんて言うし、結婚したってきっとマシューはこのままな気がする。
まあ今のうちに懲らしめてやるのもいいわよね。
目には目を、浮気には浮気を、よ!
「あ、もし浮気が本気になってしまっても、あなた絶対に文句言わないでね」
言えるわけないわよね?
ニコニコと笑みを深めると、マシューは「嫌だ嫌だごめんなさい」とその場で激しく泣き崩れた。
「……というわけで、誰かいい人いない?」
善は急げと、私は顔の広そうな友人ブラッドを頼ることにした。
ブラッドはマシューの母方の従兄弟で、私はマシューを介して彼と出会った。
ブラッドは昔からヤンチャなマシューとは異なり、知的で物静かな少年だった。
王家傍系という高貴な血筋ながらそれを鼻にかけることもなく、穏やかで優しい彼と過ごす時間が私はなにより好きだった。
そしてずっと彼を親友のように思い、これまでなんでも打ち明けてきた。
もちろんマシューの浮気のことも。
ブラッドは組んだ足の上に頬杖をつくと、じっと私の目を見つめた。
「それ、本気?」
「もちろん。マシューから誓約書も取ってきたわ」
ブラッドの前に得意げに広げて見せると、ブラッドはさっと目を通して苦笑した。
「マシューは完全に尻に敷かれてるな。そのうち足で踏みつけられそうだ」
「そんなことしないわ、別に怒ってないし」
「じゃあレイラはなんで浮気をしようと?」
「純粋な好奇心。マシューったら何度反省してもやめられないんだもの、浮気ってきっと楽しいものに違いないのよ!」
そこでブラッドは半眼になり、やれやれと首を振った。
「そんなのは人によるだろう」
「あなたはどうなの、ブラッド?」
「俺は……どう見える?」
くすりと揶揄うように笑うブラッド。
黒髪碧眼の美形で昔から女性にすごくモテるのに、彼に関しては浮いた噂一つ聞いたことがない。
「あなたは浮気どころか女性に興味があるのかすら謎だわ」
「酷い言われようだな、俺だってマシューと変わらないただの男なのに」
「本当かしら」
くすくす笑う私に、ブラッドはすうっと目を細めた。
「なら、試してみる?」
「え?」
「浮気」
「まさか……あなたが浮気相手になってくれるってこと?」
「うん、どう?」
まさかの申し出に困惑する。
よく知っているブラッドが相手なら、全く知らない人よりは安心だけれど、大切な親友を私の都合で振り回してしまっていいのだろうか。
「あの……もし仮に浮気しても、あなたとの今後の友情に響いたりしないわよね?」
「さあ……やってみないことにはなんとも」
マシューと違ってその場限りの誤魔化しや軽はずみなことを言わないところがブラッドの信用できるところだ。
ブラッドとの長年の友情と、浮気をすることによって変わるかもしれない関係性……秤にかけて私の好奇心はゴトっと後者に傾いた。
「しましょうブラッド、私と浮気を」
さっと差し出した私の手を、ブラッドは優しく握り返した。
「君となら、喜んで」
その時ブラッドが浮かべた、これまで見たこともない艶やかな笑みにドキリとする。
ブラッドのことは大抵知っていると思っていたけれど、それが思い上がりであったことを、私はこの後すぐに思い知ることとなる――
「あっあ……まって、ブラッ……んんっ!」
唇を深く塞がれ、熱い舌でグチュグチュと口内を貪られる。
乳房を少し乱暴に揉みしだかれ、繋がった下肢からトロリと何かが溢れ出た。
ああ、凄く気持ちいい。
ブラッドがくれた媚薬のせいもあるだろうけれど、これはマシューが病みつきになってしまうのも頷ける。
気持ちと体が昂って快楽以外何も考えられない。
さっきは女に興味があるのか謎だなんて言ってごめんなさい。
ブラッドはゾクゾクするほどいい男だった。
引き締まった体も、楽器を奏でるように私に触れる指遣いも、私を見つめる獣のような眼差しも……何もかもが極上。
私はブラッドの頬に手を這わす。
するとブラッドはじゃれる猫のように頬擦りをしてきた。
手懐けた美しい獣のようで全身がキュンキュンする。
ブラッドのこんな顔、私知らなかった。
「レイラ……体辛くない?」
「ん、凄い……気持ちいい」
そう言いながらブラッドの首に腕を回すと、ブラッドは私の背に腕を差し入れ、ピタリと体を合わせた。
全身をブラッドに包まれているようで気持ちいい、幸せだ。
「じゃあ、もう遠慮しない」
そう耳元で低く告げると、ブラッドは私の首筋に歯を当て、腰を前後に振るった。
太く硬い雄芯がズリズリと中を擦り、痺れるような快感に腿がふるりと震える。
さらに攻め立てるようブラッドの抽挿は激しさを増し、ガクガクと全身を揺さぶられる。
「あっな、か……くるっ」
「ん……イッて、レイラ……」
少し掠れたような甘い囁きに誘われるよう、下肢から迸る強烈な疼きがゾクゾクと背を駆け上がり、脳で真っ白く砕けた。
全身が痛いほど強張り、ヒクヒクと中が収斂してブラッドを締め付けているのを感じる。
なんて快感。
セックスってすごい……
呆然と甘い余韻に浸っていると、まだ終わりじゃないとばかりにブラッドは腰を打ちつけてきた。
「んっ……ま、まだ……」
「中で出していい?」
「え?」
「ダメって言っても出すけど」
その時浮かべたブラッドの妖艶すぎる微笑に、私の心は奪われ囚われた。
だってそれは悪魔のように美しかったから――
ガツガツと貪欲に中を穿たれ、もう私は何も考えられなくなった。
何度も強すぎる快楽の波に攫われ、途切れ途切れの意識の中、ブラッドは幾度も私の中で欲を吐き出した。
もはや夢か現かも分からない。
何度目かも分からない絶頂の末、私はついに意識を手放した――
素っ裸のまま私の足元で土下座している男――マシューのつむじを眺めつつ、もうこれを見るのは何回めだっけと考える。
確か……記憶にある限り十八回目かな。
私はつと顔を上げ、ベッドのシーツに包まってブルブル震えている、こちらも裸の女性に努めて明るく微笑んだ。
「少し彼と話がしたいので、申し訳ありませんが席を外して頂けませんか?」
「ひゃい!」
妙な声を上げながら、女性は脱兎の如く部屋から出て行った。
穏やかに話したつもりだったのに、そんなに怖かったのかしら、私……
「レイラ……嫌だ、捨てないでくれ……俺なんでもする、愛してるのは君だけなんだ」
子犬のような涙目で縋りついてくるマシュー。
浮気はするけど捨てられたくない、愛してるのは君だけ、か。
これが十八回目なのだから、随分と安い愛に軽い謝罪だ。
まあ私とマシューは親の決めた婚約者なだけであって、まだ体の関係があるわけではない。
結婚前の火遊びと許してやりなさい、なんて親は言うけれど、どうしてそれが男性にだけ許されるのかしら?
こんなにマシューが病みつきになっているのだし、浮気とはさぞ楽しいものに違いない。
そこでポン、と閃く。
私もしてみればいいではないか、浮気とやらを。
「マシュー、私いいことを思いついたの」
「え⁉︎ な、なに⁉︎」
「あなたと同じ回数分私も浮気するわ」
「なっ……! 駄目だ嫌だレイラ! お願いだからやめてくれ!」
「私が把握してるだけで十八回……残念だけどあなたに処女を捧げることはできなくなりそうね」
ふふっと笑うとマシューはこの世の終わりみたいな顔をした。
「う、嘘だろレイラ……他の女なんて皆君の代わりだったのに……」
最低なことをサラッと言ってくれる。
浮気は不治の病なんて言うし、結婚したってきっとマシューはこのままな気がする。
まあ今のうちに懲らしめてやるのもいいわよね。
目には目を、浮気には浮気を、よ!
「あ、もし浮気が本気になってしまっても、あなた絶対に文句言わないでね」
言えるわけないわよね?
ニコニコと笑みを深めると、マシューは「嫌だ嫌だごめんなさい」とその場で激しく泣き崩れた。
「……というわけで、誰かいい人いない?」
善は急げと、私は顔の広そうな友人ブラッドを頼ることにした。
ブラッドはマシューの母方の従兄弟で、私はマシューを介して彼と出会った。
ブラッドは昔からヤンチャなマシューとは異なり、知的で物静かな少年だった。
王家傍系という高貴な血筋ながらそれを鼻にかけることもなく、穏やかで優しい彼と過ごす時間が私はなにより好きだった。
そしてずっと彼を親友のように思い、これまでなんでも打ち明けてきた。
もちろんマシューの浮気のことも。
ブラッドは組んだ足の上に頬杖をつくと、じっと私の目を見つめた。
「それ、本気?」
「もちろん。マシューから誓約書も取ってきたわ」
ブラッドの前に得意げに広げて見せると、ブラッドはさっと目を通して苦笑した。
「マシューは完全に尻に敷かれてるな。そのうち足で踏みつけられそうだ」
「そんなことしないわ、別に怒ってないし」
「じゃあレイラはなんで浮気をしようと?」
「純粋な好奇心。マシューったら何度反省してもやめられないんだもの、浮気ってきっと楽しいものに違いないのよ!」
そこでブラッドは半眼になり、やれやれと首を振った。
「そんなのは人によるだろう」
「あなたはどうなの、ブラッド?」
「俺は……どう見える?」
くすりと揶揄うように笑うブラッド。
黒髪碧眼の美形で昔から女性にすごくモテるのに、彼に関しては浮いた噂一つ聞いたことがない。
「あなたは浮気どころか女性に興味があるのかすら謎だわ」
「酷い言われようだな、俺だってマシューと変わらないただの男なのに」
「本当かしら」
くすくす笑う私に、ブラッドはすうっと目を細めた。
「なら、試してみる?」
「え?」
「浮気」
「まさか……あなたが浮気相手になってくれるってこと?」
「うん、どう?」
まさかの申し出に困惑する。
よく知っているブラッドが相手なら、全く知らない人よりは安心だけれど、大切な親友を私の都合で振り回してしまっていいのだろうか。
「あの……もし仮に浮気しても、あなたとの今後の友情に響いたりしないわよね?」
「さあ……やってみないことにはなんとも」
マシューと違ってその場限りの誤魔化しや軽はずみなことを言わないところがブラッドの信用できるところだ。
ブラッドとの長年の友情と、浮気をすることによって変わるかもしれない関係性……秤にかけて私の好奇心はゴトっと後者に傾いた。
「しましょうブラッド、私と浮気を」
さっと差し出した私の手を、ブラッドは優しく握り返した。
「君となら、喜んで」
その時ブラッドが浮かべた、これまで見たこともない艶やかな笑みにドキリとする。
ブラッドのことは大抵知っていると思っていたけれど、それが思い上がりであったことを、私はこの後すぐに思い知ることとなる――
「あっあ……まって、ブラッ……んんっ!」
唇を深く塞がれ、熱い舌でグチュグチュと口内を貪られる。
乳房を少し乱暴に揉みしだかれ、繋がった下肢からトロリと何かが溢れ出た。
ああ、凄く気持ちいい。
ブラッドがくれた媚薬のせいもあるだろうけれど、これはマシューが病みつきになってしまうのも頷ける。
気持ちと体が昂って快楽以外何も考えられない。
さっきは女に興味があるのか謎だなんて言ってごめんなさい。
ブラッドはゾクゾクするほどいい男だった。
引き締まった体も、楽器を奏でるように私に触れる指遣いも、私を見つめる獣のような眼差しも……何もかもが極上。
私はブラッドの頬に手を這わす。
するとブラッドはじゃれる猫のように頬擦りをしてきた。
手懐けた美しい獣のようで全身がキュンキュンする。
ブラッドのこんな顔、私知らなかった。
「レイラ……体辛くない?」
「ん、凄い……気持ちいい」
そう言いながらブラッドの首に腕を回すと、ブラッドは私の背に腕を差し入れ、ピタリと体を合わせた。
全身をブラッドに包まれているようで気持ちいい、幸せだ。
「じゃあ、もう遠慮しない」
そう耳元で低く告げると、ブラッドは私の首筋に歯を当て、腰を前後に振るった。
太く硬い雄芯がズリズリと中を擦り、痺れるような快感に腿がふるりと震える。
さらに攻め立てるようブラッドの抽挿は激しさを増し、ガクガクと全身を揺さぶられる。
「あっな、か……くるっ」
「ん……イッて、レイラ……」
少し掠れたような甘い囁きに誘われるよう、下肢から迸る強烈な疼きがゾクゾクと背を駆け上がり、脳で真っ白く砕けた。
全身が痛いほど強張り、ヒクヒクと中が収斂してブラッドを締め付けているのを感じる。
なんて快感。
セックスってすごい……
呆然と甘い余韻に浸っていると、まだ終わりじゃないとばかりにブラッドは腰を打ちつけてきた。
「んっ……ま、まだ……」
「中で出していい?」
「え?」
「ダメって言っても出すけど」
その時浮かべたブラッドの妖艶すぎる微笑に、私の心は奪われ囚われた。
だってそれは悪魔のように美しかったから――
ガツガツと貪欲に中を穿たれ、もう私は何も考えられなくなった。
何度も強すぎる快楽の波に攫われ、途切れ途切れの意識の中、ブラッドは幾度も私の中で欲を吐き出した。
もはや夢か現かも分からない。
何度目かも分からない絶頂の末、私はついに意識を手放した――
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