16 / 39
第十五話 ドローン 其ノ三
しおりを挟む
「おきゃーり(お帰り)とーたん!! ……それなぁに?」
ハナが俺の左斜め後ろ、頭上五十センチ程のところでホバリング中の物体を指差して言った。
「うん? ああ、ドローンの……『P-305』だっけ?」
「『P-350R TYPE-A』です。マスター、こちらがご家族ですか?」
やっぱり、中まで着いてくるのかよ……飯食ってくか? いや、何でもない。冗談だ。
「ふわぁ~! しゅごいね、おはなしできるんだね! ぴーさん? マッセトーヤだよ! ハナちゃんはね、ハナちゃんは……ハナ!」
「お父さん、お客さんってコレのこと? ぴーさんっていうの? これが耳なしの空飛ぶ船なの? 小ちゃくない?」
ナナミ、二人に何て説明したんだよ……『お父さんが、面白いお客さまを連れて帰って来るわよ!』ってな具合か?
お客さんと言うよりは、ストーカーだろう!
ドローンは俺をマスターと呼び『指示をどうぞ』なんて言ってたくせに、大して言うことを聞いてくれなかった。
洞窟に待機しているように言ったのに『当機の目的は情報収集です』と言って俺から離れようとしない。
情報って……俺の情報集めんのか?
明るいうちからこんな目立つ物連れて歩いたら、注目を集めるどころの話じゃないぞ。耳なし伝説の、新たなページを開いてしまう。
仕方なく、ナナミには先に戻ってもらって、洞窟で日が暮れるのを待ちながら、延々と質問を繰り返した。
『その質問へのこたえは、機密事項に抵触します。セキュリティの解除が必要です』
一言一句、違いのない返事を、何度も何度も繰り返し聞かされて、俺はほとほとうんざりしてしまった。
第一段階は、解除されたんじゃなかったのか?
八つ当たり気味に『もっと短い返事にしてくれ』と言ってやったら、意外なことに『善処します』と言ったあと、少し黙った。
『その質問には答えられません』
黙ったと思ったら、呟くように言った。ああ! 短いな! 半分くらいになった。
高性能と言ってしまえばそれまでだが『間』の取り方に、人間くささを感じる。
どこかで誰かが、モニターを見ながら喋ってるんじゃねぇの?
そんな考えが頭を掠めて、ちょっと質問に変化球を混ぜてみた。
「地球とは違う星なのか?」
「その質問には答えられません」
「夕陽が綺麗だな?」
「人間が好む風景である事は、理解しています」
「ナナミがマスターになれない理由は?」
「身体的特徴が条件を満たしていません」
「耳なしじゃないから?」
「その質問には答えられません」
「ハルならマスターになれるか?」
「情報が不足しています」
「腹、減らないか?」
「当機は収納ポッド内で、エネルギーの充填が可能です」
質問しながら、少しずつ近づいてみる。
「初期稼働からの経過時間は?」
「その質問には答えられません」
「地球は今どうなっている?」
「質問が具体性に欠けています」
「そのポッドの中、見せてくれないか?」
「それは可能ではありません」
俺が近づくと、スーッと距離を保とうとする。ポッドに近づこうとすると、さりげなく間に入る。
「取り扱い説明書とか、ないのか?」
「必要な機能の具体的に例を挙げて、質問をどうぞ」
「……血液検査とか、DNA鑑定とか……」
「採取物の鑑定はある程度可能です」
出来んのかよ! 高性能だな!
「俺に権限はあるのか?」
「善処致します」
……微妙な返答だな。帰ってルルとナナミに相談してみよう。
「今、何時だ?」
「ミンミンでは今の時間帯を『アチ』と呼びます。アチ(海鳥の名前)が盛んに鳴き交わし、魚を探す時間という意味です」
……観光ガイド並みだな。
「翻訳機能は?」
「音声にて対応可能です」
「文字変換は?」
「マスターのデバイスに、ソフトのインストールが可能です」
まじで!? めっちゃ便利!! もっと早く出会いたかった!!
久々に文明の利器に触れ、暴力的なまでの便利さに、なんだか泣きたくなってきた。今までの苦労はなんだったんだよ……
若干自暴自棄になり、ダメ元で聞いてみる。
「ナナミとハナは、元の姿に戻れるのか?」
「その可能性は高くはありません」
えっ……?
「俺とハル、クルミも獣の人になるのか?」
「いずれ時が来れば」
……答えてくれんの?
「俺たちは地球に戻れるのか?」
「……戻りたいのですか?」
……お前、いったい何者……なんだ?
ハナが俺の左斜め後ろ、頭上五十センチ程のところでホバリング中の物体を指差して言った。
「うん? ああ、ドローンの……『P-305』だっけ?」
「『P-350R TYPE-A』です。マスター、こちらがご家族ですか?」
やっぱり、中まで着いてくるのかよ……飯食ってくか? いや、何でもない。冗談だ。
「ふわぁ~! しゅごいね、おはなしできるんだね! ぴーさん? マッセトーヤだよ! ハナちゃんはね、ハナちゃんは……ハナ!」
「お父さん、お客さんってコレのこと? ぴーさんっていうの? これが耳なしの空飛ぶ船なの? 小ちゃくない?」
ナナミ、二人に何て説明したんだよ……『お父さんが、面白いお客さまを連れて帰って来るわよ!』ってな具合か?
お客さんと言うよりは、ストーカーだろう!
ドローンは俺をマスターと呼び『指示をどうぞ』なんて言ってたくせに、大して言うことを聞いてくれなかった。
洞窟に待機しているように言ったのに『当機の目的は情報収集です』と言って俺から離れようとしない。
情報って……俺の情報集めんのか?
明るいうちからこんな目立つ物連れて歩いたら、注目を集めるどころの話じゃないぞ。耳なし伝説の、新たなページを開いてしまう。
仕方なく、ナナミには先に戻ってもらって、洞窟で日が暮れるのを待ちながら、延々と質問を繰り返した。
『その質問へのこたえは、機密事項に抵触します。セキュリティの解除が必要です』
一言一句、違いのない返事を、何度も何度も繰り返し聞かされて、俺はほとほとうんざりしてしまった。
第一段階は、解除されたんじゃなかったのか?
八つ当たり気味に『もっと短い返事にしてくれ』と言ってやったら、意外なことに『善処します』と言ったあと、少し黙った。
『その質問には答えられません』
黙ったと思ったら、呟くように言った。ああ! 短いな! 半分くらいになった。
高性能と言ってしまえばそれまでだが『間』の取り方に、人間くささを感じる。
どこかで誰かが、モニターを見ながら喋ってるんじゃねぇの?
そんな考えが頭を掠めて、ちょっと質問に変化球を混ぜてみた。
「地球とは違う星なのか?」
「その質問には答えられません」
「夕陽が綺麗だな?」
「人間が好む風景である事は、理解しています」
「ナナミがマスターになれない理由は?」
「身体的特徴が条件を満たしていません」
「耳なしじゃないから?」
「その質問には答えられません」
「ハルならマスターになれるか?」
「情報が不足しています」
「腹、減らないか?」
「当機は収納ポッド内で、エネルギーの充填が可能です」
質問しながら、少しずつ近づいてみる。
「初期稼働からの経過時間は?」
「その質問には答えられません」
「地球は今どうなっている?」
「質問が具体性に欠けています」
「そのポッドの中、見せてくれないか?」
「それは可能ではありません」
俺が近づくと、スーッと距離を保とうとする。ポッドに近づこうとすると、さりげなく間に入る。
「取り扱い説明書とか、ないのか?」
「必要な機能の具体的に例を挙げて、質問をどうぞ」
「……血液検査とか、DNA鑑定とか……」
「採取物の鑑定はある程度可能です」
出来んのかよ! 高性能だな!
「俺に権限はあるのか?」
「善処致します」
……微妙な返答だな。帰ってルルとナナミに相談してみよう。
「今、何時だ?」
「ミンミンでは今の時間帯を『アチ』と呼びます。アチ(海鳥の名前)が盛んに鳴き交わし、魚を探す時間という意味です」
……観光ガイド並みだな。
「翻訳機能は?」
「音声にて対応可能です」
「文字変換は?」
「マスターのデバイスに、ソフトのインストールが可能です」
まじで!? めっちゃ便利!! もっと早く出会いたかった!!
久々に文明の利器に触れ、暴力的なまでの便利さに、なんだか泣きたくなってきた。今までの苦労はなんだったんだよ……
若干自暴自棄になり、ダメ元で聞いてみる。
「ナナミとハナは、元の姿に戻れるのか?」
「その可能性は高くはありません」
えっ……?
「俺とハル、クルミも獣の人になるのか?」
「いずれ時が来れば」
……答えてくれんの?
「俺たちは地球に戻れるのか?」
「……戻りたいのですか?」
……お前、いったい何者……なんだ?
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる