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梅の思念5
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その日の私は特に用事があった訳ではないけれど何となく外出していた。そしてそこで、お姉様が男と仲睦まじく歩いているのを見かける。
あの男が恐らく婚約者だと言っていた男だろう。ああ、憎らしい。憎悪に心を侵されながらふと思う。
そうだ、あの男……食べてしまおう。
お姉様から男を排除できる、私は栄養補給してお花を増やせる。良い事しかないわ。
私はお姉様の所へ駆け出した。
「桜姉様」
「梅子」
姉様は驚いた顔をしながらもこちらに駆け寄って来てくれる。
「走ってはダメよ、まだ治ったばかりなのよ」
「ごめんなさい、姉様を見たら嬉しくなってしまって」
ちらと男を見ると彼もまた驚いた顔で私を見ていた。瞬きもせずにじっと私を見つめている。香りの効果が出ている様ね。ここは素朴そうな少女を演じておかないと。
「この方は?」
視線を怖がる様にお姉様に尋ねると
「前に話したでしょう、私の婚約者の如月菫太郎さんよ。菫太郎さん妹の梅子です」
男に私を紹介してくれる。男はお姉様の言葉にはっとした顔をすると
「初めまして、如月菫太郎です」
にこりと笑顔で挨拶してくる。その笑顔はとても爽やか、所謂美男子と言われる部類の顔立ちだろう。
けれど何となくわかる、この男外見は紳士だが中身は今まで食ってきた男たちと同類だと。
こんな奴にお姉様を奪われる訳にはいかないわ。
そんな事を考えているとお姉様が声をかけてくる。
「梅子、どうしてここにいるの?」
「散歩です、天気が良かったので」
「そう……なるべく早く帰るのよ」
「はい」
お姉様と言葉を交わした後に、男に軽く会釈をして去ろうとする。
けれどわかっている、彼はきっと引き止めてくると。
「待ってください、先ほど桜子さんから伺ったのですが……庭園を管理される予定とか」
かかった。
心の中でにやりとする。この男はもう私の餌確定、あとはうまく言いくるめて家に連れ込むだけなんだけれど……。今はお姉様がいる、やめておこう。
ちらりとお姉様をみると苦々しい顔をしていた。婚約者が他の女に興味を持って面白くないのかしら。
「ええ、今まで療養していた、阿賀家の別宅を父から譲り受けまして」
「俺にお手伝いできることがあれば、何でも言ってください」
この男、隣に婚約者がいる事すら忘れてこんな事を……お姉様を見るとやはり苦々しい顔のまま、けれど私の視線に気が付くとため息をつきながらにこりと笑顔を作った。
「菫太郎さんは経営について如月のおじさまに色々と学んでいるそうなの。義理の兄として面倒を見て下さるとおっしゃっているのよ。お優しい方でしょう?」
やはり、怒ってらっしゃるわ。その怒りは私に向けてなのか男に向けてなのか……両方に向けてかしらね。
ここは……。
「そうなんですね、ありがとうございます」
「では!」
「けれど、結構です。お気持ちだけ受け取っておきます」
そう、きっぱりと断る。男はがっかりした顔、お姉様は少しほっとした顔をした。二人の対比に吹き出しそうになるのをこらえながらお辞儀をしてその場を去る。
男の未練たらしい視線を感じる。ちらっと見るとどうやらお姉様に叱られている様だ。
さて、どうやってあの男を誘い出し食おうか。
私は周りにばれない様に舌なめずりした。
あの男が恐らく婚約者だと言っていた男だろう。ああ、憎らしい。憎悪に心を侵されながらふと思う。
そうだ、あの男……食べてしまおう。
お姉様から男を排除できる、私は栄養補給してお花を増やせる。良い事しかないわ。
私はお姉様の所へ駆け出した。
「桜姉様」
「梅子」
姉様は驚いた顔をしながらもこちらに駆け寄って来てくれる。
「走ってはダメよ、まだ治ったばかりなのよ」
「ごめんなさい、姉様を見たら嬉しくなってしまって」
ちらと男を見ると彼もまた驚いた顔で私を見ていた。瞬きもせずにじっと私を見つめている。香りの効果が出ている様ね。ここは素朴そうな少女を演じておかないと。
「この方は?」
視線を怖がる様にお姉様に尋ねると
「前に話したでしょう、私の婚約者の如月菫太郎さんよ。菫太郎さん妹の梅子です」
男に私を紹介してくれる。男はお姉様の言葉にはっとした顔をすると
「初めまして、如月菫太郎です」
にこりと笑顔で挨拶してくる。その笑顔はとても爽やか、所謂美男子と言われる部類の顔立ちだろう。
けれど何となくわかる、この男外見は紳士だが中身は今まで食ってきた男たちと同類だと。
こんな奴にお姉様を奪われる訳にはいかないわ。
そんな事を考えているとお姉様が声をかけてくる。
「梅子、どうしてここにいるの?」
「散歩です、天気が良かったので」
「そう……なるべく早く帰るのよ」
「はい」
お姉様と言葉を交わした後に、男に軽く会釈をして去ろうとする。
けれどわかっている、彼はきっと引き止めてくると。
「待ってください、先ほど桜子さんから伺ったのですが……庭園を管理される予定とか」
かかった。
心の中でにやりとする。この男はもう私の餌確定、あとはうまく言いくるめて家に連れ込むだけなんだけれど……。今はお姉様がいる、やめておこう。
ちらりとお姉様をみると苦々しい顔をしていた。婚約者が他の女に興味を持って面白くないのかしら。
「ええ、今まで療養していた、阿賀家の別宅を父から譲り受けまして」
「俺にお手伝いできることがあれば、何でも言ってください」
この男、隣に婚約者がいる事すら忘れてこんな事を……お姉様を見るとやはり苦々しい顔のまま、けれど私の視線に気が付くとため息をつきながらにこりと笑顔を作った。
「菫太郎さんは経営について如月のおじさまに色々と学んでいるそうなの。義理の兄として面倒を見て下さるとおっしゃっているのよ。お優しい方でしょう?」
やはり、怒ってらっしゃるわ。その怒りは私に向けてなのか男に向けてなのか……両方に向けてかしらね。
ここは……。
「そうなんですね、ありがとうございます」
「では!」
「けれど、結構です。お気持ちだけ受け取っておきます」
そう、きっぱりと断る。男はがっかりした顔、お姉様は少しほっとした顔をした。二人の対比に吹き出しそうになるのをこらえながらお辞儀をしてその場を去る。
男の未練たらしい視線を感じる。ちらっと見るとどうやらお姉様に叱られている様だ。
さて、どうやってあの男を誘い出し食おうか。
私は周りにばれない様に舌なめずりした。
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