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梅の思念3

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「……」

 ぼーっとしながら周りを見る。あれ? 私は何をしていたんだっけ?
 そうだ、お姉様を探していたんだ。

「きゃあああああああああ!」

 悲鳴が聞こえる。この声はお姉様だわ! 廊下の向こうでお姉様が何かを見ながら腰を抜かしていた。

「お姉様、どうしたの?」

 私が声をかけると私がいる場所を指差す。そこには干からびた人間らしきものが横たわっている。服装からすると先程のメイドよね。これはどうしたんだっけ? ああそうだ、あれは……

 私の食事の残骸だ。

「これがどうかしたの?」

 不思議に思いお姉様に尋ねる。お姉様は困惑した顔をした。

「どうかしたのって……人がミイラみたいになって……死んで……」

 ガクガクと怯えるお姉様に近づくとそっと抱きしめる。

「お姉様、大丈夫よ怖くないわ。あれはただの食べ残しだもの」

 安心させるつもりで言ったのにお姉様はまだ震えたままだ。どうすれば落ち着いてくれるのだろう。
 その時、お姉様が私の指先を見ながら

「それは……何?」

 とつぶやいた。

「え?」

 私の指先には白っぽい玉がくっついていた。

「これは……」

 考えて思い出す。そうだこれは、お花の種だ!

「お姉様一緒に来て」

 私はそこにあった食べ残しを肩に担ぐ、それを見たお姉様はヒッ!と言って後ずさった。

「どうしたの?」
「どうしたのって……あなた、それ人間の死体なのよ!?」
「だから?」

 私がそう言うとお姉様は真っ青な顔をして逃げようとする。
 けれど私は逃げ出さない様にしっかりとその手首を掴んだ。

「さあ、来て! 素敵なものを見せてあげるから!」

 そう言ってお姉様の手を引く。嫌がるお姉様を強引に引っ張って温室に入る。

「見ていてね」

 先程、爪に生えていた玉を死体の口に入れると一気に芽吹き根が生え、あっという間にヒデリコが群生した。

「あれ? お花咲かなかった……」
「梅子…………」

 後ろからお姉様の声がする。声がいつもと違って冷たい。きっとお花が咲かなかったからだわ。

「ごめんなさい、お姉様。お花咲かなかったわ。今度はもう少し養分を残してみるね。そして約束通りお花をたくさん育てるわ」

 子供の頃に約束した。お花でいっぱいの小さな家で二人一緒に暮らそう。その夢を元気になった今の私なら叶えられるわ。
 お姉様が抱きしめてくる。

「梅子……ああ……なんてことなの……」
「お姉様泣いてるの? どうしたの?」

 お姉様が泣いている。
 ああ……美味しそうだなあ。また私をあの香りが包む。この香りを嗅ぐと相手が抵抗しなくなってとっても食べやすくなる。
 けどお姉様は食べてはだめ。けど美味しそうだわ……ああ……。

「いい、この事は誰にも言っては駄目よ」
「え?」

 お姉様にはこの香りが効いてないみたいだ。なぜだろうか。けど良かった。これならお姉様を食べずに済むわ。

「わかったわね」

 真剣な顔をするお姉様に頷く。

「わかったわ。お姉様の言う事はちゃんと聞くわ。だって言う事を聞かないとお姉様に嫌われてしまうもの」

 その言葉にお姉様は少し微笑んだ様に見えた。
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