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日常

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 温かな泉の胸に顔を埋めて眠る……

 泉はただ優しく抱きしめてくれ、オレの後頭部を撫で続ける……

 「いずみ……愛してるよ……」

 泉の背中に腕を回してきつく抱きしめる。

 なにもせずにただただ裸で抱き合っていた。

 今はとてもエッチなことをする気分にもなれなくて……

 ひたすらに抱きしめて、お互いの体温を確かめ合う。

 








 不妊検査の後も生活は変わらなかった。

 毎日泉は変わらず仕事に行っていたし、オレも泉の世話を焼きながら在宅ワークを続ける。

 すずしろは毎日変わらずに元気に走り回って、お腹がすけば騒いで、遊んで欲しい時に猫じゃらしを咥えて寄ってきてくれる。

 今までと変わらない日常……

 ただ何故かその日常から彩りが失われてしまったような気がした。

 その理由はわかっていた。 

 オレ達の夫婦の間には多分子供はできない。

 検査直後からオレの中から消えてしまった性欲は復活する兆しもなく、ただただ今は生きているといった感じになってしまった。

 そんなオレを泉は毎晩ひたすらに抱きしめ続けてくれていた。

 ……本当は泉のほうがツラいはずなのに……

 ……情けないなあ……

 そう思いながらも何もできずにいた。

 







 「いずみ……あんまり仕事で無理しないでね」

 今日も眠そうな顔で起き出した泉に声をかける。

 「ん?ありがとう。私は大丈夫だよ」

 泉が微笑みオレを見つめる。

 「もうオレたちだけが生きていける分だけ稼げればいいんだし……」

 自分達2人とすずしろが生活できる分くらいはオレの収入でなんとかできるくらいにはなっていた。

 今までは子供ができた時のために……そう思って余分に働いていたのでもうその必要も無くなった今無理をする必要はなくなった。

 泉は意図を察したのか、一瞬寂しそうな顔をしたがすぐに微笑んだ。

 「それとこれとは別だよ。私は真実のことも支えたいし、水野家の娘として育てて貰った以上はやっぱり……真実だけに任せるのは悪いって思うから……無理もしてないよ」

 泉はそう言いながら起き上がり、オレの頬にキスしてくれた。

 「そんなことより、来週から夏季休暇なの忘れてるでしょ?今年はおじいちゃんが伊豆の別荘に招待してくれてるし……週末に一緒に水着見に行こうねっ★」

 

 泉のじいちゃん……ずうっと孫ができるの楽しみにしてたんだよなあ……

 そのうち……きちんと説明しなきゃ…

 ベッドから起き出した泉を追いかけながらそう思っていた。


 







 
 「こっちはどう?」

 「うん、凄い可愛いよ。泉にピッタリだね」

 可愛らしいヒラヒラのついた水着を着た泉はなんだか人魚のようだ。

 さっき見せてくれたシンプルなタイプのものも良かったし、こっちも可愛くてイイ。

 「どっちにしようかな……」

 迷っている泉の手から両方とも水着を受け取りレジに向かう。

 「透っ、ちょっと待って」

 追いかけてくる泉に微笑みかける。

 「どっちも似合ってるんだからどっちも買えばいいよ。日替わりでオレに見せてっ」

 支払いを済ませて店を出る。

 「透っ、私払うからっ!」

 財布を出そうとする泉をやんわり止めて手を繋ぎ、レストラン街に移動する。

 「オレ好みの水着着てくれるんならむしろオレに払わせて。泉他に欲しい物とかあるでしょ?ご飯食べながら次どこ行くか考えようよ」

 「ええっ、でもっ……」

 泉と一緒にレストラン街を眺める。

 「何食べようか?洋食和食、中華にイタリアン……何でもあるね」

 ぐるりと回ってトンカツ屋さんが気になると言うのでそこに入った。

 2人でカツ丼を注文して泉と話す。

 「やっぱりこのショッピングモールすごいね。全部回ろうと思ったら1日かかるね」

 泉はここの施設のガイドマップを眺めながら苦笑する。

 「本当に広いよね。行きたいお店探すのにも、移動するのにも疲れるねえ…まあオレには良い運動になるけど」

 注文したかつ丼を食べながら次にどこに行こうかと話す。

 「せっかくのバカンスなんだから、泉のお出掛けようのワンピース見にいこうよ。可愛いの選んであげるから……」

 そう言いながら泉の持っている施設マップを覗き込む。

 レディースのフロアーは……そう思った瞬間泉が意を決したように口を開いた。

 「あの、透っ!!」




 






 
 

 
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