上 下
48 / 54

喪失

しおりを挟む
 母が亡くなったのは12月の終わり、明日は大晦日という時だった。

 家に母の着替えを取りに帰りに行っていた、まさにその時だった。

 連絡を受けて大慌てで病院に引き返したのだが、その時には既に母は逝った後だった。

 
 「ママ!?」

 母のいた病室に駆け込むと、ベッドには顔に白布を掛けられた、母だったものが横たわっていた。

 「……」




 なんとなく、もう長くないだろうという予感はあった。

 母は日を追うごとに元気を取り戻すどころか、寝ている時間が多くなっていた。

 薬をきちんと飲んでいたし、医者の診療も受けていた。

 ……それなのに……

 

 結局回復に向かうことはなかった。





 ★


 
 霊安室に移動した私と母はしばらくの間2人で過ごした。

 
 線香の煙がゆっくりと立ち昇っていく。

 ……とても静かだった。

 

 
しおりを挟む

処理中です...