上 下
45 / 54

水野家の朝

しおりを挟む
 「ってどうしてお前ここで寝てるんだよっ!?」
 目覚め早々真実は赤い顔で慌てたように布団から飛び起きた。
 「……何よ朝から……自分が間違ったくせに……」
 「は?!」
 真実は寝ぼけまなこで周りを見渡し……
 「悪かった……」
 と私に謝る。
 しかしハッとしたような顔で透クンに抱きつきながら幸せそうな顔で眠っている水野さんに毒づいた。
 「でどうして泉が俺の布団で寝てるんだよ。……いつの間に……!?」
 困惑したように頭を押さえた真実……しかし謎を解き明かす手立てはなく……。

 




 昨日の夜更けに目を覚ました真実がトイレに立った隙に水野さんはしめたとばかりに真実の寝ていた布団に潜り込んで、戻ってきた真実は気づかず空いていた布団に……寝ぼけていたためなんの疑問も抱かず寝たというわけだった。




 そのまま朝が来て……この有様だった。

 透クンは一度眠ったら起きないタチらしく、水野さんは幸せそうな顔で透クンに抱きついていた。

 それにしても……
 真実は隣に人が寝ていると抱きつくクセでもあるのか、はたまた隣に寝ているのが透クンだと思ってやったのか分からないが……

 朝方真実に抱きしめられているのに気づいた瞬間、心臓が破裂するのではないかというくらいドキドキしたし、すごく嬉しかった。

 きっと水野さんもこんな気持ちなんだろうなと思いながら真実を堪能した。
 静かな吐息に真実の体温……
 密着する背中に、抱かれた腕……
 堪らなく切なくて、泣きたくなるほど大好きだと思った。

 我慢の限界に達して、こっそり眠る真実にキスをしたところで驚いたように真実が目を覚ましたのだった。

 「悪い俺っ……透かと思って……」

 そんな事を口走る真実。
 ……透クンだと思ったって……
 それで……キスしてる時に舌まで入れてきたの??

 思わずそう言いかけて、やめた。
 
 困ったような顔で戸惑う真実をそれ以上困らせたくなかった。

 

 その静けさを破るように真実の携帯の目覚まし時計が鳴り始める。

 目覚ましを止めた真実はただ、早朝マラソンに行くと言ってリビングを出て行ってしまった。

 

 「もう……シンジのバカっ……」
 一人呟いて、さっきまで真実が眠っていた布団に顔を埋める。
 
 シンジとキスして……舌を絡めたの……すごく気持ちよかった……

 思い出すだけで心臓の鼓動が早くなっていく。

 呼吸をするたびに入り込んでくる真実の匂いが一層さっきまでの真実をリアルに思い出させていた。

 「……死んじゃいそう……」

 本当……どうしようもないくらい真実のことが好きで好きで堪らなかった。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...