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夏の山

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 「水野さん大丈夫?」

 青海くんが顔を覗き込んでくる。

 「うん、毎年こうだから気にしないで。……少し休めば良くなるから……」

 青海くんが私を支えるようにそばに立ってくれたのでそのまま手を借りて部屋まで連れて行って貰った。

 「外の空気吸うと少しはいいかもしれないから窓開けとくよ」

 青海くんは私がベッドに横たわると窓を少し開けてくれた。

 涼しい風がすうっと部屋に入ってくる。

 「後でまた来るね。少し寝た方がいいよ」

 青海くんはそっと私の背中を撫で、部屋から出ていった。

 
 山道をドライブするとどうしても酔ってしまうな……

 標高の高い場所にあるこの別荘は夏場涼しくて過ごしやすかったが、なにぶん山奥にあったため、途中の山道があまり良くない。

 毎回酔い止めを飲んで眠ってしまうようにはしていたのだがこればかりは治りそうになかった。

 「おい透、ちょっと外に出てこようぜ、川の水が冷たくて気持ちいいぞ」

 廊下で真実の声が聞こえた。

 「あ、ちょっと待って、短パンに着替えるからっ!」

 いいな、二人で川遊びか……

 少し羨ましくなりながら目を閉じる。

 遠ざかっていく二人の声を聞きながらそっと眠りにつく。










 「水野さんどう、調子良くなった?」

 「泉、夕飯食えるか?」

 真実と青海くんが顔を覗き込んでくる。

 結構眠ってしまっていたのか、部屋の中は薄暗い。

 「……んっ、多分もう大丈夫…かな」

 ゆっくり起きようとすると青海くんが起き上がるのを手伝ってくれた。

 「急がないでいいよ。立てる?」

 青海くんの手は暖かくて、何だかホッとした。

 
 気分はすっかりいいようだ。
 
 そう伝えると二人は安心したように笑った。

 「ちょっと川行ってきたんだけど水が気持ちよかったよ。明日は一緒に行こう?」

 青海くんは私の手を引きながら楽しそうに話してくれる。

 自然と手を繋いでいた事に気づくが手を離すタイミングが分からなかった。

 キッチンに着いて、青海くんもそれに気づいたのか照れたように笑った。

 「あっ、ごめんねっ」

 私は首を振り、青海くんに微笑みかける。

 「もうすっかり調子いいみたい。お腹空いちゃったね」

 そう言うと青海くんは嬉しそうに笑う。

 「さっき少し見せて貰ったんだけど夕飯美味しそうだったよ!!信州サーモンっていうのがあるんだね!」

 

 今年は何だか賑やかで、楽しい休暇が過ごせそうだ。

 自然と顔が綻んで、笑顔になった。




 
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