8 / 48
8、疑い
しおりを挟む急に恐くなってきた。
この人、きっと別世界の住人だ!
裕は、せいぜい自分へのご褒美で買う時計は2~3万だ。
それだって、ただのOLの裕なら奮発する特別な買い物。
それを、400万もの買い物を覚えてないとは・・・。
近寄らない方がいい、と裕の危険センサーが鳴り出す。
私に声をかけたのも、何か悪い考えがあってかも、疑り出す。
例えば・・・振られたばかりの落ち込んでいる女を慰めるふりして夜の世界に売り飛ばすとか?!
考えすぎか・・・でも、なんかこのカフェも隠れ家的な感じだったし、疑いはどんどん増す。
裕の思考は暗い闇社会へと向かって行った。
「・・・あれ?なんか顔色が急に悪くなってない?大丈夫?」
考えの中心にいる昊人に急に声をかけられ、ビクッと身体を震わせる裕。
「大丈夫ではないから、ちょっと帰ろうかと・・・。」
「おまたせ!」
裕が逃げようと帰る言葉を言い切らないうちに、声を載せてきたのはオーナーの柊馬。
2人の前に大き目のツルンとした白い器に入るラテを置いてくれた。
「わあ!」
途端に感動の声を上げる裕。
裕のラテは、ミルクの泡でできた熊が中央から顔を出していた。
まるで3Dのように飛び出している。
「初めてみました!すごく立体的でかわいい!」
かわいい熊のお蔭で、帰ろうかと思っていた気持ちは遠いかなたに飛ばされてしまった。
「昊人さんのは音符、ですか?」
隣に置かれた昊人のカップを見るとミルクの面に書かれたいくつのも音符が可愛らしかった。
「そ!やっぱり昊人には音楽系でしょ。」
「音楽系?」
なんのことだろう?と不思議な表情を浮かべる裕。
「・・・本当にわからないの?」
「?」
何が?と眉を寄せて柊馬と昊人の顔を見比べるように視線を迷わした。
「・・・まだ、疑ってたんだ。だから、裕ちゃんは、そんなこと関係なくここに来たんだよ。もう、わかったでしょ?疑がうのはもう辞め!」
昊人が柊馬を叱るように少しだけ強めに言い放つ。
「・・・そうだな。なんか、ごめんね。・・・そうだ!サービスで新作のストロベリーとクリームチーズのパンケーキをご馳走するよ!待てて。」
始めこそ反省の表情を見せたが、切り替えが早いようで柊馬は足早にカウンターの奥にあるキッチンへと行ってしまった。
「え?待ってください・・・いっちゃいましたね。疑うって、私が疑われていたんですよね?いったいなんですか?」
柊馬を座ったまま上半身だけ後ろにし、引きとめようとした裕だった。
でも、目すらあわせずそそくさと引き返していく柊馬がキッチンに入ると、今度は昊人に話しかけた。
「う~ん・・・。」
言いづらそうにラテの音符を見つめる昊人を黙って見つめる。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
おじさんは予防線にはなりません
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」
それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。
4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。
女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。
「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」
そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。
でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。
さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。
だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。
……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。
羽坂詩乃
24歳、派遣社員
地味で堅実
真面目
一生懸命で応援してあげたくなる感じ
×
池松和佳
38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長
気配り上手でLF部の良心
怒ると怖い
黒ラブ系眼鏡男子
ただし、既婚
×
宗正大河
28歳、アパレル総合商社LF部主任
可愛いのは実は計算?
でももしかして根は真面目?
ミニチュアダックス系男子
選ぶのはもちろん大河?
それとも禁断の恋に手を出すの……?
******
表紙
巴世里様
Twitter@parsley0129
******
毎日20:10更新
【実話】高1の夏休み、海の家のアルバイトはイケメンパラダイスでした☆
Rua*°
恋愛
高校1年の夏休みに、友達の彼氏の紹介で、海の家でアルバイトをすることになった筆者の実話体験談を、当時の日記を見返しながら事細かに綴っています。
高校生活では、『特別進学コースの選抜クラス』で、毎日勉強の日々で、クラスにイケメンもひとりもいない状態。ハイスペックイケメン好きの私は、これではモチベーションを保てなかった。
つまらなすぎる毎日から脱却を図り、部活動ではバスケ部マネージャーになってみたが、意地悪な先輩と反りが合わず、夏休み前に退部することに。
夏休みこそは、楽しく、イケメンに囲まれた、充実した高校生ライフを送ろう!そう誓った筆者は、海の家でバイトをする事に。
そこには女子は私1人。逆ハーレム状態。高校のミスターコンテスト優勝者のイケメンくんや、サーフ雑誌に載ってるイケメンくん、中学時代の憧れの男子と過ごしたひと夏の思い出を綴ります…。
バスケ部時代のお話はコチラ⬇
◇【実話】高1バスケ部マネ時代、個性的イケメンキャプテンにストーキングされたり集団で囲まれたり色々あったけどやっぱり退部を選択しました◇
ズボラ上司の甘い罠
松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる