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プロポーズもどき

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そもそも、一緒に住むことに美桜は乗り気ではなかった。

大学入学と同時に一人暮らしをはじめてもうすぐ丸3年。

学校や家事・バイト・楽しい一人の過ごし方などペースが固まってる状態だ。

本当はこのペースを壊したくない。

しかし、久貴と付き合うようになってペースが崩れ始めた。

忙しい久貴に合わせていれば、二人が会えるのは夜しかない。

外食に出かけたり、飲みに行ったり。

自然に睡眠時間が短くなった。

それに加えて、美桜の大学の後期試験の期間となり、さらに睡眠が削られた。

その結果、試験期間が終わる頃に美桜は大学で倒れた。

診断は、過労と睡眠不足。

当然といえば当然のこと。

これで単位でも落として留年なんてことになれば親も巻き込む、美桜にとっては一大事だ。

久貴にとっても他人事ではない。

まして今回の事は自分にも責任がある。

一生涯、美桜を手放すつもりもない久貴にとって初っ端から義理の親となる美桜の両親に悪い印象を与えたくない。

今までの美桜の生活に二人の付き合いが入ったのだから付き合いを控えるのが一番だ。

だからといって会わずにはいられない。



そして久貴が出した提案が「一緒に住む」だ。



美桜にとって思いもよらない提案だった。

二人は付き合うことになってまだ2ヶ月もたっていない。

それが同棲なんて早すぎるよね!

と思いが口に出る前に必要な身の回りのものと一緒に久貴のマンションに連れて来られた。


「でも…やっぱり…」

と、何度か帰る旨を伝えようとしたときに急に腕を引かれ久貴の胸に収まりながら耳元で静かにその言葉は伝えられた。



「私にとって何日も美桜と会わないなんてことはできない。
それが美桜のためと解っていても無理なんだ。
美桜が倒れたとも知らずにいたとか、連絡がとれずに一晩中眠れずに過ごすのは、私にとって良くない事だと思わないか。
自分本位ですまない。
美桜は今までの生活を何も変えなくていい。
変わらなくていいから。
ただそばにいてくれないか。
一日の中で君の寝顔だけでも見られたら、それだけで安心できる。」



どれもこれも久貴に都合のいい事ばかり言われているのに、まるでプロポーズのように聞こえてしまった美桜は、コクリと頷いておずおずと久貴の背中にまわした手に力を込めた。


うれしかった…

そんな風に思っていてくれたこと。

久貴の思いを疑っていた訳ではない。

久貴は、誰が見てもイケメンだ。

モデルのように身長が高く、顔だって芸能人に負けないくらい人目を引く美しさ。

実際の年齢である36歳よりずーと若く見える。

それにこの若さでいくつもの会社の役員をしているバックグランドもモテる要素の一つだろう。

よってくる女性もハイスペックそうだし、どこから見ても女の人に不自由しなさそうな素敵な人。

そんな人が平凡な女子大生である自分と付き合いたいと言われても何を信じろというのだろう。

ただ、自分が好きなだけでそばにいた。

それだけでいいと思っていた。

でも、私を必要だと切々とつたえてくれた。

それが自分勝手な思いでもうれしかった。

美桜の気持ちなど関係ない、とまで言ってくれてるのがなんだかうれしかった。





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