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この体勢に諦めて、恥ずかしいので視線を彷徨わせながら話す。

「少しずつですが、思い出した事があります。・・・たくさんの傷を負っているアンドレア様のお顔とか・・・クレアス・・・私の屋敷の前で会いましたよね?私の馬。その馬に力なく乗っていらっしゃるところとか・・・そして、私がクレアスの横腹を叩いて見送ったところ・・・。でも、本当に断片的で、すべては思い出せなくて。」

「無理して思い出さなくてもいい。今の私達には、きっと必要ないことだ。だから、思い出せなんだ。きっと。」

私を支える手に力を感じる。

「・・・そうかもしれません。・・・でも、どうして昔に会った事を教えてくださらなかったのですか?」

お互いの顔が見える所まで、身体を離してくれた。

「・・・君にとって恐ろしい思いをした記憶なら、私との出会いの記憶さえ必要ない。・・・私との事は、これからいい記憶として作ればいいと思っていたのだが、こんな事になってしまって・・・。再び出会った、私の記憶と共に、今回の事も忘れてしまってかまわない。何度でも、君と出会い、君に心を奪われる事が私の運命だと思うから。」

いつもより優しい言葉の色と瞳に心が溶けていく感じがした。
私の安心する場所・・・。
自分から、広くて温かな胸に頬を寄せる。

「忘れません。・・・いろいろ辛い思いはしたけど・・・アンドレア様を好きな事も、あなたの妻だということも、忘れていません。」

私は忘れたくなんかない、と伝えたくて掴んでいたアンドレア様の袖をシワができるくらい強く握る。
アンドレア様の抱きしめてくれる腕の力は強くて少し痛いが、今はそれくらいがいい。




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