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しおりを挟む息を飲む。
どうして、ここにあなたがいるの?
もしかして・・・あの人たちはジェラールの仲間なの?
疑問が次々と沸くが、塞がれている口からは何1つ出ない。
私を袋から出し、抱き起こす。
「怖かっただろ?・・・もう、大丈夫だよ。僕が側にいるからね。」
そう言って私をふわりと抱きしめ、髪を何度も撫でる。
あれ?これって前にも同じ事があったような・・・。
恐怖や不安でいっぱいなのに、忘れていた部分を取り戻せる糸口が、ふいにあらわれて、そちらに気を取られる。
思い出そうとするが、頭の中のその一部分が、まるで霧がかかったみたいな景色で思い出せない。
でも、ジェラールとその肩越しのこの景色は、前にも見たことがある、と私の中の何かが言う。
精一杯考えている頭は、なぜジェラールがここにいるかという事、そして思い出せない記憶の事。
何もかも答えが出なくて、混乱で身体も動かせ無い私は、されるがまま。
「あ!今、紐を切ってあげるね。痛かっただろ?」
小さなナイフを取り出し、手足の紐を切ってくれた。
そして、口を塞いでいた、頭の後ろで縛られていた布も外してくれた。
それでも、私は話すことができず、痺れた腕を摩りながら、ただジェラールを見開いた目で見つめていた。
縄を解いてくれたって事は、あの人たちから助け出してくれたってこと?
でも・・・本当にこの人がジェラールなのか、信じられない気がしてきた。
牢で会ったライラは、ふっくらとした頬がなくなり、つやつやした髪も輝きを失っていて、心をすり減らした様子が窺えた。
今、目の前にいるジェラールは、最後に会った夜会の時と何1つ変わりない。
着ている服でさえ、上質のもので隙も無くキッチリとしていて崩れもない。
顔色もよく、やつれた様子も無いから、ライラとのあまりの違いに違和感を感じる。
牢から逃げ出した人だなんて誰が思うだろう。
「・・・ジェラール・・なの?」
私の言葉に、ん?と小首をかしげるジェラール。
何を聞かれているのかわからない様子だ。
そうか、混乱しているんだね、というと私をまた抱きしめた。
「そうだよ。あれ?僕の事忘れちゃった?・・・長く会いに行けなかったからね。ごめんね・・・でも、僕の事は忘れないでね。・・・それ以外は忘れてもいいよ、イヤ、忘れて・・・すべて。」
最後は怖い色を含んだ声に代わった。
耳の近くで囁かれたそれは、縛られているときよりも怖さを強くした。
それ以外とは、何を忘れろというのだろう。
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