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あの時、内報部が動いていて、その責任者でもある公爵様が私にはついていたから、心配ないと思ったとか・・・。
遅かれ早かれ、私との婚約は無くなるとジェラールは判断したのだろう。
だからまずは、2人のこれからのこと優先した。
2人のお父様たちに、コーベンヌ伯爵とシャンタル男爵への説明を急いだ。
その2人の許しを得なければ、2人の未来は無い。
だったら、私たちに会いたいというのはなぜ?
思いつくのは、正式に婚約解消を申し入れに来たかった、ということ。
人に任せっぱなしより、筋を通したかったのかもしれない。
こんな事態になって、婚約が解消されれば、私たちとの関係は最悪になるし、他の貴族の付き合いも大変になるだろう。
でも、いずれ関係修復を望むなら、罵倒されることがわかっていても本人が来るべきだ。
その方が、誠意を感じる。
私のつたない考えでしかないけど、ジェラールの性格を知る私が考えた事をお兄様に話した。
だったら私がやるべきことは・・・。

「だからこそ婚約を早く解消してあげて。そうすれば、あちらの問題も早く解決するはず。」

昨夜のことが切欠で、2人はやっと言い出せたはず。
私という邪魔者のせいで、思い合っている2人に、これ以上負担をかけてはいけない。
こんなことになって残念だけど、2人はたくさんの時間を一緒にすごした幼馴染、大切な友達なんだから。

「早く婚約を解消するのは僕も賛成だ。・・・既に昨夜、いろいろ見られていて噂が広まりつつある。エル、君をこれ以上、傷つけないためにもだ。・・・婚約破棄に必要な書類は昨夜のうちに作成し、1つはジェラールの父・コーベンヌ伯爵に送りつける手はずは整えてある。正式な婚約を白紙に戻す為には、王族の承認が必要だから、もう1つは皇太子殿下に提出できるように揃えておいた。後はエルの確認をとるだけにしてね。」

仕事で皇太子殿下とよく話をすると、以前お兄様が言っていた事を思い出す。
お願いしやすいくらい、皇太子殿下とお兄様は親しい関係なのかもしれない。

「・・・忙しいのにいろいろありがとうございます。そして、ごめんなさい。」

ソファからたちその場でお兄様に頭を下げた。
これで、終わるのね。
昨日と何が違うのだろう。
自分では何もしていないのだから、どこがどう変わるかよくわからないし実感がない。
いつか、ジェラールやライラとの関係は昔の友達のように戻れるかしら。
しばらくは会いたくないし、会えないと思うけど。
早速とりかかる、と言ってお兄様は部屋のドアを開け身体を半分廊下へ出した所で振り返った。

「それから、昼過ぎには父さんたちが帰ってくるはずだよ。早馬を出しておいたから・・・そのころユーゴ公爵もくる予定だから、支度をしていて。」

「ユーゴ公爵が?・・・なぜですか?」

「・・・エルに結婚を申し込みにくるそうだよ。そっちの話は父さんたちが帰ってからでいいかと思ったから、昨夜は保留にしておいたけど・・・僕は異存ないけど。」

そう言ってお兄様はドアを閉めた。





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