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旦那編 marito
55:白い蛇 Serpente bianca
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今日は “冒険者の集う街„ の北側に来て居る。
北の門は上流階級たち専用の出入口だ。当分はお世話になりそうもない。
ここの道は立派な石畳で交通量も多い。それもそのはず首都への主要道路だ。
いずれは首都に向かわなきゃいけないと強く思う。
周囲が一気に暗くなり、いつもと違う青い渦に巻き込まれる。
インスタンスだな、とは分かるが、色んなパターンが増えて来たように思える。
生命の腕輪の効果音が鳴り響き、仮想画面に表示が現れる。
“インスタンス:白い蛇„
放り出されたのは、深い森の中。来てるのは、はるっちとサブ
最近、はるっちと行動することが多い。
今度はどんなインスタンスだろうか? と思っていた時に、魔法の炸裂音が聞こえる。
何かが戦っている。急いでそちらへ行ってみる。
「ワイには何か変に見えるわ! 一人で多数を相手しているような」
「確かにそうじゃな。魔法の攻撃音が少ないからのぅ」
「あそこだね!」
狼が何かを囲んでいる。
赤い炎が飛び、狼たちを牽制している。
その中心には、白い蛇がいる。かなり小さい。それでも、移動はかなり速く、敵を翻弄している。
それでも多勢に無勢、かなり無理しているのは一目瞭然。
「とりあえず、助けよう!」
「そうじゃの、インスタンスの題からしても、この蛇がキーであることは間違いなかろう」
「おっしゃ、狼の数からしても一掃するのは難しくないわ!」
距離を詰めて、魔法攻撃をする。
「行くで~、火の槍!」
サブの火魔法で攻撃するが、吸い込まれるように消えて行く。
それどころか、こちらの攻撃に気が付いたみたいで、こちらへ向かって来る。
「あれ、こいつらは火属性みたいやな!」
「これはいかん! 水の壁!」
はるっちが慌てて水魔法で防御を固める。
「結界張るよ! 水の加護!」
「了解じゃ、水纏い!」
淡い水色の光が三人を取り囲む。
「次は反撃やな! 氷の矢!」
何とか、狼たちを追い払ったが、白蛇が使っていた炎は何だったんだろう。火属性相手でも効果出てたような気がする。魔法はバリエーションが多いなぁ、少し研究が必要かもしれない。
追われていた白蛇がこちらに近付いて来て、頭をもたげ、また少し下げる。
「ん? お礼を言ってるのかな? 敵意はなさそうだけど」
「腕輪はん!」
サブの言葉に反応し、幻影が現れる。
「腕輪はん、こいつ何を言っているか分かる?」
「ん、少し待って」
淡青な光を纏うフェアリーは、ふわふわ飛んで、白蛇の前に出る。
なんだか頷き合ってるから、意志は通じているようだ。
「えとね。サブやん」
「おう、どうした?」
「ありがとうって言ってる。そして付いて来て欲しいみたい」
「分かった! 案内するように言ってや」
幻影が何か話すと、白蛇はゆっくり森の奥へ進み始める。
「どうしようか? って行くしかないよね」
「そうじゃの。とりあえず案内する先に行くしかなかろう」
森の中を進む白蛇の傍には、フェアリーが同行し、サブがすぐ後ろを続く。
わたしとはるっちは、付いて行くしかない。
しばらく進んだ後、半刻はかかってないと思うが、古い鳥居が見えて来る。
木の柱で造られており、かなりの古さが感じられる。
その先には、あまり大きくないが社がある。
お参りのための大きな鈴から下がっている綱を伝わって、少し大き目の白蛇が巻き付きながら降りて来る。
「ほぅ、叶緒からの登場とは、なかなかじゃのぅ」
「叶緒?」
「おや、知らんのか? 参拝用の鈴に下がっている緒のことじゃ、鈴緒ともいう」
「知らんかった……」
「少しは物事を勉強した方がいいぞ」
いかんなぁ、でも、はるっちってこういう寺社について詳しいな。
地面に降りた白蛇は、ふっと身を変えて大きくなり、こちらの背丈くらいまで頭をもたげる。
わが眷属を救ってくれて感謝する
「おや、喋れるのか」
ほぅ、そのように珍しいか?
人が喋れるのならば、蛇が喋れてもおかしくあるまい
「理解しました」
「ことねはんも、蛇に説得されるレベルやなぁ」
サブに言われてしまった。
「現れたということは、事情を説明してくれるんじゃろうな」
いや、大したことはない
ここは白蛇の社で、眷属が大勢居る
ふと周囲を見回すと、大小色々の白蛇たちが鎌首をもたげて、こちらを見ている。
ちょっとゾッとする。何かあったら、一気にやられそうだ。
「ワイらに、危害を加えたりはしないんやな」
「大丈夫、サブやん。危険は感じない」
眷属を助けて貰ったのだ
危害を加えるなど毛頭考えてない
しかし……珍しい幻影だな
「白蛇は神の使いと聞く。こちらもことを構える気はないぞ」
幻影がふわっと飛び、前に居る白蛇の所に行く。
「白蛇さん、先が見通せるのですね。何か言葉を頂けませんか?」
「何? 神通力持ちか?」
ははっ! そんな大層なものではない
しかし、興味深いものも見える
幻影の主よ!
加護が強い。良き時を過ごすであろう
剣士よ!
一角獣を探せ。運命を掴むために
巫女よ!
能力ゆえに狙われることが多そうだな
我が眷属を守護に伴わせることにしよう
「眷属とな?」
我が子よ!
この方々に恩を受けたのじゃ
返さなければならんぞ
案内してくれた小さな白蛇が、はるっちに近付き、飛び付くように左肩まで攀じ登って来る。
はるっちの方を見て、頭を下げる。
それでよい
はるな殿、我が子はまだ幼い
よろしゅう頼む
「分かった! こちらこそよろしゅうじゃ」
小さな子は寄り添うように頭を寄せる。
「パートナーということかや?」
「そうですよ、サブやん。この子は強いですね」
まだまだ修行中というところかな
はるな殿と一緒すれば、きっと育っていくであろう
「ありがたい。感謝する」
はるっちは正面の白蛇に深々とお辞儀をする。そして左肩に居る小さな蛇に語り掛ける。
「名は小青で良いか?」
小さな白蛇はゆっくりと頭を下げる。
生命の腕輪の効果音が鳴り響き、仮想画面に表示が現れる。
“インスタンス・クリア:白い蛇„
北の門は上流階級たち専用の出入口だ。当分はお世話になりそうもない。
ここの道は立派な石畳で交通量も多い。それもそのはず首都への主要道路だ。
いずれは首都に向かわなきゃいけないと強く思う。
周囲が一気に暗くなり、いつもと違う青い渦に巻き込まれる。
インスタンスだな、とは分かるが、色んなパターンが増えて来たように思える。
生命の腕輪の効果音が鳴り響き、仮想画面に表示が現れる。
“インスタンス:白い蛇„
放り出されたのは、深い森の中。来てるのは、はるっちとサブ
最近、はるっちと行動することが多い。
今度はどんなインスタンスだろうか? と思っていた時に、魔法の炸裂音が聞こえる。
何かが戦っている。急いでそちらへ行ってみる。
「ワイには何か変に見えるわ! 一人で多数を相手しているような」
「確かにそうじゃな。魔法の攻撃音が少ないからのぅ」
「あそこだね!」
狼が何かを囲んでいる。
赤い炎が飛び、狼たちを牽制している。
その中心には、白い蛇がいる。かなり小さい。それでも、移動はかなり速く、敵を翻弄している。
それでも多勢に無勢、かなり無理しているのは一目瞭然。
「とりあえず、助けよう!」
「そうじゃの、インスタンスの題からしても、この蛇がキーであることは間違いなかろう」
「おっしゃ、狼の数からしても一掃するのは難しくないわ!」
距離を詰めて、魔法攻撃をする。
「行くで~、火の槍!」
サブの火魔法で攻撃するが、吸い込まれるように消えて行く。
それどころか、こちらの攻撃に気が付いたみたいで、こちらへ向かって来る。
「あれ、こいつらは火属性みたいやな!」
「これはいかん! 水の壁!」
はるっちが慌てて水魔法で防御を固める。
「結界張るよ! 水の加護!」
「了解じゃ、水纏い!」
淡い水色の光が三人を取り囲む。
「次は反撃やな! 氷の矢!」
何とか、狼たちを追い払ったが、白蛇が使っていた炎は何だったんだろう。火属性相手でも効果出てたような気がする。魔法はバリエーションが多いなぁ、少し研究が必要かもしれない。
追われていた白蛇がこちらに近付いて来て、頭をもたげ、また少し下げる。
「ん? お礼を言ってるのかな? 敵意はなさそうだけど」
「腕輪はん!」
サブの言葉に反応し、幻影が現れる。
「腕輪はん、こいつ何を言っているか分かる?」
「ん、少し待って」
淡青な光を纏うフェアリーは、ふわふわ飛んで、白蛇の前に出る。
なんだか頷き合ってるから、意志は通じているようだ。
「えとね。サブやん」
「おう、どうした?」
「ありがとうって言ってる。そして付いて来て欲しいみたい」
「分かった! 案内するように言ってや」
幻影が何か話すと、白蛇はゆっくり森の奥へ進み始める。
「どうしようか? って行くしかないよね」
「そうじゃの。とりあえず案内する先に行くしかなかろう」
森の中を進む白蛇の傍には、フェアリーが同行し、サブがすぐ後ろを続く。
わたしとはるっちは、付いて行くしかない。
しばらく進んだ後、半刻はかかってないと思うが、古い鳥居が見えて来る。
木の柱で造られており、かなりの古さが感じられる。
その先には、あまり大きくないが社がある。
お参りのための大きな鈴から下がっている綱を伝わって、少し大き目の白蛇が巻き付きながら降りて来る。
「ほぅ、叶緒からの登場とは、なかなかじゃのぅ」
「叶緒?」
「おや、知らんのか? 参拝用の鈴に下がっている緒のことじゃ、鈴緒ともいう」
「知らんかった……」
「少しは物事を勉強した方がいいぞ」
いかんなぁ、でも、はるっちってこういう寺社について詳しいな。
地面に降りた白蛇は、ふっと身を変えて大きくなり、こちらの背丈くらいまで頭をもたげる。
わが眷属を救ってくれて感謝する
「おや、喋れるのか」
ほぅ、そのように珍しいか?
人が喋れるのならば、蛇が喋れてもおかしくあるまい
「理解しました」
「ことねはんも、蛇に説得されるレベルやなぁ」
サブに言われてしまった。
「現れたということは、事情を説明してくれるんじゃろうな」
いや、大したことはない
ここは白蛇の社で、眷属が大勢居る
ふと周囲を見回すと、大小色々の白蛇たちが鎌首をもたげて、こちらを見ている。
ちょっとゾッとする。何かあったら、一気にやられそうだ。
「ワイらに、危害を加えたりはしないんやな」
「大丈夫、サブやん。危険は感じない」
眷属を助けて貰ったのだ
危害を加えるなど毛頭考えてない
しかし……珍しい幻影だな
「白蛇は神の使いと聞く。こちらもことを構える気はないぞ」
幻影がふわっと飛び、前に居る白蛇の所に行く。
「白蛇さん、先が見通せるのですね。何か言葉を頂けませんか?」
「何? 神通力持ちか?」
ははっ! そんな大層なものではない
しかし、興味深いものも見える
幻影の主よ!
加護が強い。良き時を過ごすであろう
剣士よ!
一角獣を探せ。運命を掴むために
巫女よ!
能力ゆえに狙われることが多そうだな
我が眷属を守護に伴わせることにしよう
「眷属とな?」
我が子よ!
この方々に恩を受けたのじゃ
返さなければならんぞ
案内してくれた小さな白蛇が、はるっちに近付き、飛び付くように左肩まで攀じ登って来る。
はるっちの方を見て、頭を下げる。
それでよい
はるな殿、我が子はまだ幼い
よろしゅう頼む
「分かった! こちらこそよろしゅうじゃ」
小さな子は寄り添うように頭を寄せる。
「パートナーということかや?」
「そうですよ、サブやん。この子は強いですね」
まだまだ修行中というところかな
はるな殿と一緒すれば、きっと育っていくであろう
「ありがたい。感謝する」
はるっちは正面の白蛇に深々とお辞儀をする。そして左肩に居る小さな蛇に語り掛ける。
「名は小青で良いか?」
小さな白蛇はゆっくりと頭を下げる。
生命の腕輪の効果音が鳴り響き、仮想画面に表示が現れる。
“インスタンス・クリア:白い蛇„
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