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旦那編 marito
45:年初祭 Festa del Mondo
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今日は、建国3年年初祭(Festa del Mondo/Auc.03)
つまりゲーム内のお正月、ゲーム開始から二周年を迎えたということだ。
正確にいうと、日の出が一日の始まりなので、第一昼刻の開始から年初祭となる。
街全体もなんだか浮かれているようだ。
特別に十万リラの支給もあった。お年玉を頂きました。
生命の腕輪に運営からお知らせが送信されている。
------------------------------------------------------------------------
運営からのお知らせ
ユーザーの皆様方へ
建国以来、二周年になりました。
皆様方の熱いご声援に支えられてここまで来ることができました。
運営一同、感謝を申し上げます。
二周年を記念して、記念指輪を贈らせていただきました。
この指輪の性能は、各人の個性に合わせて調整されております。
皆様が過ごされるゲーム・ライフの一助になることを願っております。
なお、この指輪は右手中指専用となります。
また、新たなステージへの拡張も検討中です。
ユーザーの皆様方がこの終わりのない世界を楽しんで行けますよう、
運営一同あらためて決意しております。
今後とも、世界をよろしくお願い申し上げます。
世界運営一同
----------------------------------------------------------------------------
ゲーム世界も現実のように変化して行く。
直接会うことのない場所から、リアルタイムを集合でき、現実では決してできない経験を積重ねる。どちらからも得られる経験自体は同じだ。
ひょっとしたら、人間は既に幻想世界を手に入れたのかもしれない。
「今日はお休みだね」
みんなに提案する。
「お正月くらいはのんびりするかのぅ」
はるっちも賛成らしい。
「せっかくですし、吟遊詩人の演奏会などを見たいですね」ポロロン♪
いいなぁ、わたしも一緒に行こうかな。
「ワイは、来たばかりなので、街の見物をしたいわ!」
「サブやん、デートですね!」
「腕輪はん、楽しい新年を見て回ろう」
相変わらずのラブラブ状態だ。サブ、現実は大丈夫だろうな。
「あたしは、ふらふら歩いてみるわ!」
エドは散歩かぃ?
今日はそれぞれ個人行動とした。みんなたまには好きなことをしたいよね。
この街に来たばかりだし、様子を見て回るのも良いと思う。
でも、せっかくの機会だし、ジョルジュと一緒に演奏会に行くことにした。
南東側の酒場あたりでもやってるらしいけど、本格的なものを見ようとベアトリッツ・デ・ディアさんの屋敷まで行って、執事さんに高級店が立ち並ぶ場所にある酒場を紹介して貰う。劇場もあるらしいけど、さすがに入場券は手に入らない。
立派な店で少々服装が気になったが、紹介状があったせいかなんとか入店させて貰う
舞台《パルコシェーニコ》も広く、魔法の光でとても綺麗だ。
そして登場して来たのは、四人のアンサンブルだ。それぞれ違う楽器を持っている。
「珍しいですね。これだけのものが見られるのは、大きな街だけでしょう」
ジョルジュが楽器を説明してくれる。
日本の琵琶を少し小さくしたようなギターっぽい楽器がリュートと言うらしい。
バイオリンのような感じで膝の上に乗せているのがヴィオール、チェロみたいに弾くとのこと。
縦笛を持っている人がいる。木管のようだ。これもフルートと呼ぶらしい。まぁ親戚なんだろうな。
最後に打楽器というか、日本の鼓に当たるのだろうか、太鼓の小さいもの。
どれもこれも見たことない楽器ばかり、ヨーロッパの吟遊詩人たちはこんな感じだったのだろうか?
太鼓のリズムから演奏が始まる。
高く低く、大きく小さく、軽やかにリズムを刻む。
リュートの分散和音が太鼓のリズムに合わせる。鉄弦なのだろう、僅かに混じる雑音のような音色が年代を感じさせる。
単調だが気持ちに染み入るように響き渡る。
舞台《パルコシェーニコ》の両側から男女二人の歌手が登壇する。
ヴィオールとフルートが哀愁帯びた調べを弾く。
二人は歌い始める。どこまでも澄み切った声で聴く人々を魅了する。
新しき草がひときわ緑を現すとき
枝の上にある葉の間に花が咲く
ナイチンゲールは高く清らに囀り渡る
その歌の調べは求める
彼の喜びと花の喜びを私は知っている
私の喜びと私の年上の彼女の喜びを知っている
近くにある全ての喜びが閉じ惹き付ける
しかしこれは他のどんな喜びも打ち負かす
何と悲しいことか、郷愁で私は死ぬようだ
しばしば、苦悩によりそうなってしまう
盗人たちが私を運び去る
そして私はしていることに気付かない
愛、あなたは容易に私を打ち破る
何人かの友達共に、そして他の男もなしに
私の女はそのとき、せめてと説得している
愛の熱望を私が溶かしてしまう前に
…………
遠い過去から蘇るような声と調べ。
激しい歴史の流れの中で生き残った音は美しい。
夜は花火大会だ。
第一夜刻の途中で始めるらしい。
みんな街の郊外、北側に集まる。
何故に北側? と思ったけど、偉い人たちが街中で眺めるんだろうな。
今日は特別な日なので満月だ。四元素を司る主星たちも三つの伴星も明るく輝く。
年に一度しか見ることのできない華やかな夜空だ。
新年おめでとう! の声と共に一斉に花火が打ち上げられる。
夜空を背景に色彩豊かな絵や文字が浮かび上がる。
電子の花火だから、デザインはやり放題だな。
明日からはどんなゲーム・ライフが待っているだろうか?
つまりゲーム内のお正月、ゲーム開始から二周年を迎えたということだ。
正確にいうと、日の出が一日の始まりなので、第一昼刻の開始から年初祭となる。
街全体もなんだか浮かれているようだ。
特別に十万リラの支給もあった。お年玉を頂きました。
生命の腕輪に運営からお知らせが送信されている。
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運営からのお知らせ
ユーザーの皆様方へ
建国以来、二周年になりました。
皆様方の熱いご声援に支えられてここまで来ることができました。
運営一同、感謝を申し上げます。
二周年を記念して、記念指輪を贈らせていただきました。
この指輪の性能は、各人の個性に合わせて調整されております。
皆様が過ごされるゲーム・ライフの一助になることを願っております。
なお、この指輪は右手中指専用となります。
また、新たなステージへの拡張も検討中です。
ユーザーの皆様方がこの終わりのない世界を楽しんで行けますよう、
運営一同あらためて決意しております。
今後とも、世界をよろしくお願い申し上げます。
世界運営一同
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ゲーム世界も現実のように変化して行く。
直接会うことのない場所から、リアルタイムを集合でき、現実では決してできない経験を積重ねる。どちらからも得られる経験自体は同じだ。
ひょっとしたら、人間は既に幻想世界を手に入れたのかもしれない。
「今日はお休みだね」
みんなに提案する。
「お正月くらいはのんびりするかのぅ」
はるっちも賛成らしい。
「せっかくですし、吟遊詩人の演奏会などを見たいですね」ポロロン♪
いいなぁ、わたしも一緒に行こうかな。
「ワイは、来たばかりなので、街の見物をしたいわ!」
「サブやん、デートですね!」
「腕輪はん、楽しい新年を見て回ろう」
相変わらずのラブラブ状態だ。サブ、現実は大丈夫だろうな。
「あたしは、ふらふら歩いてみるわ!」
エドは散歩かぃ?
今日はそれぞれ個人行動とした。みんなたまには好きなことをしたいよね。
この街に来たばかりだし、様子を見て回るのも良いと思う。
でも、せっかくの機会だし、ジョルジュと一緒に演奏会に行くことにした。
南東側の酒場あたりでもやってるらしいけど、本格的なものを見ようとベアトリッツ・デ・ディアさんの屋敷まで行って、執事さんに高級店が立ち並ぶ場所にある酒場を紹介して貰う。劇場もあるらしいけど、さすがに入場券は手に入らない。
立派な店で少々服装が気になったが、紹介状があったせいかなんとか入店させて貰う
舞台《パルコシェーニコ》も広く、魔法の光でとても綺麗だ。
そして登場して来たのは、四人のアンサンブルだ。それぞれ違う楽器を持っている。
「珍しいですね。これだけのものが見られるのは、大きな街だけでしょう」
ジョルジュが楽器を説明してくれる。
日本の琵琶を少し小さくしたようなギターっぽい楽器がリュートと言うらしい。
バイオリンのような感じで膝の上に乗せているのがヴィオール、チェロみたいに弾くとのこと。
縦笛を持っている人がいる。木管のようだ。これもフルートと呼ぶらしい。まぁ親戚なんだろうな。
最後に打楽器というか、日本の鼓に当たるのだろうか、太鼓の小さいもの。
どれもこれも見たことない楽器ばかり、ヨーロッパの吟遊詩人たちはこんな感じだったのだろうか?
太鼓のリズムから演奏が始まる。
高く低く、大きく小さく、軽やかにリズムを刻む。
リュートの分散和音が太鼓のリズムに合わせる。鉄弦なのだろう、僅かに混じる雑音のような音色が年代を感じさせる。
単調だが気持ちに染み入るように響き渡る。
舞台《パルコシェーニコ》の両側から男女二人の歌手が登壇する。
ヴィオールとフルートが哀愁帯びた調べを弾く。
二人は歌い始める。どこまでも澄み切った声で聴く人々を魅了する。
新しき草がひときわ緑を現すとき
枝の上にある葉の間に花が咲く
ナイチンゲールは高く清らに囀り渡る
その歌の調べは求める
彼の喜びと花の喜びを私は知っている
私の喜びと私の年上の彼女の喜びを知っている
近くにある全ての喜びが閉じ惹き付ける
しかしこれは他のどんな喜びも打ち負かす
何と悲しいことか、郷愁で私は死ぬようだ
しばしば、苦悩によりそうなってしまう
盗人たちが私を運び去る
そして私はしていることに気付かない
愛、あなたは容易に私を打ち破る
何人かの友達共に、そして他の男もなしに
私の女はそのとき、せめてと説得している
愛の熱望を私が溶かしてしまう前に
…………
遠い過去から蘇るような声と調べ。
激しい歴史の流れの中で生き残った音は美しい。
夜は花火大会だ。
第一夜刻の途中で始めるらしい。
みんな街の郊外、北側に集まる。
何故に北側? と思ったけど、偉い人たちが街中で眺めるんだろうな。
今日は特別な日なので満月だ。四元素を司る主星たちも三つの伴星も明るく輝く。
年に一度しか見ることのできない華やかな夜空だ。
新年おめでとう! の声と共に一斉に花火が打ち上げられる。
夜空を背景に色彩豊かな絵や文字が浮かび上がる。
電子の花火だから、デザインはやり放題だな。
明日からはどんなゲーム・ライフが待っているだろうか?
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