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旦那編 marito

9:夜間戦闘 Combattimento notturno

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「よっしゃあ!」
 ディアの一撃がヨロイトカゲの頭部を砕く!
 トカゲの身体が二つに割れて黄色に光りながら消えて行く。
回復の霧ネッビア・グァレンテ!」
「ありがとう!」
「拙は、これが役目じゃからのぅ」
 わたしとはるっちは、ディアを加えて近くのフィールドを周回する。その時に冒険者ギルドの依頼クエストもこなす。ディアは職能のせいか、様々なアイテムに詳しかった。データが生命の腕輪に着々と蓄えられていく。
「モンスター・コアがドロップしてるな」
「モンスター・コア?」
 珍しいアイテムにわたしとはるっちの声が重なる。
「モンスターのレア・ドロップだね。本当にたまにしかドロップしない」
 ディアは生命の腕輪のインベントリからコアを取り出して見せてくれる。掌に載せられたコアは、一センチメートルくらいの球体、茶色をしている。
「さっきのヨロイトカゲのコアだ。茶色に光るのは地属性だってことだね」
「属性で色が変わるのじゃな?」
「そうそう、青だったり赤だったりする。無属性のときは白になる。これはみんな装備を造るときに使うんだ。そうすると属性がついたり能力がアップしたりする。必ずそうなるとは限らないけどね」
「ふむ、色々あるんだね」
「そうじゃのぅ、覚えることが多すぎるわ」
「このコアって、どれも同じような感じなら、どのモンスターのか見分けるの難しくない?」
「二人共モンスター・コアは初めてみたいだから、どうやって見分けるか見せてあげる」
 ディアはコアをインベントリに戻して、生命の腕輪の仮想画面スケルモ・ヴィルトゥアーレに表示させる。丸い球の中にトカゲの姿が浮かび上がっている。
「なるほど、こうやって確認するのかのぅ。なかなか面白いのじゃ」

 今日の分の依頼クエストをギルドに報告する。順調だった。稼ぎも溜まって来た。
 ギルド入口近くにあるベンチに座って、夜間戦闘について相談する。昨日から話し合ってきたけど、次の町に向かうためにはどうしても経験しておく必要がある。”ぶっつけ本番なんか、避けられない時以外はするもんじゃない” と言うディアはとても真面目だった。

「さて、今日は夜間戦闘をしようと思う。これまでは順調だし、連携も取れて来た。挑戦チャレンジする時期だと思う」
「うん! やろう! ただ無理はしたくない。近くのフィールドにしたい」
「拙も賛成じゃ。夜の敵は昼間と違うと聞いた」
「よし、それでは第一夜刻が始まる頃に、北側出入口の集合だ。アイテムなどは万全にしておいてくれ。初めてなので、第二夜刻が始まる頃には戻ろう」
 ディアの言葉に頷く。

 第六昼刻が終わると同時に日は西に沈んでしまい、一気に暗くなる。空には星々が煌めく。初めての村付近は砂漠地帯なので雨はほとんど降らない。水の季節に少しだけ降雨があるそうだ。
現実レアーレでは見られない星だね」
「天頂近くにある四つの星が主星じゃな」
「主星?」
「なんじゃ? 指導所の講義で言っていたではないか」
「ははっ! あれって聞いただけじゃ覚えていないよね」
 ディアは丁寧に説明し始める。

 天頂付近で四角形を形作る四つの星は主星、四つの季節と属性に連動する。
 地の星テラは茶、水の星アクアは青、火の星フォコは赤、風の星ヴェントは黄
 それぞれ、三つの伴星を従える。
 今は、乾月かわきつき三旬目だから、火星フォコと三つの伴星が強く輝いている。
 第三祭ラ・フェスタ・テルツァを過ぎると、火星フォコは輝きを失い風星《ヴェント》が輝き出す。

「そか、そんなこと言われたような……」
「まぁあまり気にし過ぎることはない。魔法職は結構気になるのじゃが」
 月が西の空に細い弧を見せる。赤い色に染まっている。

「そっちに行ったぞ!」
水の壁ムーロ・ディ・アクア!」
水の球パッラ・ディ・アクア!」
 昼間とは全く違う。ハネネズミもトビウサギも活発で動きも素早い。しかも群れて来る。
 普段は雑魚扱いのイエロー・ハムスターも群で襲われると脅威だ。
 火魔法は厳禁、うっかりハムスターやフェネックに当てると回復グァレンテされる可能性がある。ハネネズミには火魔法が有効なんだけど、暗闇の中、瞬間的に敵を判断するのは難しい。
 風の束縛レガンテ・ダ・ヴェント泥濘メルマで動きを抑えようとしても、なかなか嵌ってくれない。
 回復の霧ネッビア・グァレンテは、少しタイミング遅れるので、回復剤ポツィオーネ・グァレンテ投げまくり、コストもかかるわぁ……
 
 そうこうやりながら、移動するための経験と経験値を稼いでいたんだけど
 乾月かわきつき30日、初めての村に居る全冒険者にギルドから声が掛かった。
 第三祭ラ・フェスタ・テルツァに何かあるらしい。
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