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5:大森林観測村VSガムラン町
714:ファローモからの依頼、水入らずそして爆発魔法
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ヴォヴォヴォヴォヴゥゥン♪
うるせぇ神力の唸りが、廊下の向こうから近づいてくる。
「ロットリンデちゃん、宴会場わぁ――こっちこっちぃ!」
姿を現す丸い球と、それに乗る丸い――
芋茸さまめ、今更来やがって!
「貴っ様ぁ――何処行ってたぁ!」
いや十中八九、板場だろうが――
見ろや、この有様ぁ!!
未だ中腰のまま、珍妙な女の様子を覗う奥方さまに――
仕える家の実質最高権力者をまえに、思案する蜂の魔神。
遊撃隊の仲間である少女を抱きかかえ、一本角から小さな雷を迸らせる鬼族の麗人に――
着流しの女と対峙する、猫の魔物にして魔法具の精霊ロォグ。
そして後ろ頭を押さえ――ぽぎゅりっ?
体を起こした黄緑色の、無いはずの目が吊り上がってる。
バキィィン――ドガァンッ――バリバリバリィッ!!
戸口辺りに積み重なる、襖や平机、座布団の山、そして――
「「「きゃぁぁぁっ――――!?」」」
顧問氏と秘書と担任教師なんかを、吹っ飛ばし――
飛び込んで来たのは、大森林切っての悪逆令嬢。
浴衣の前が開けるのも厭わす、大申並みの怪力を発揮する彼女が――
「ロットリンデッ、居た! ファロコ居たよ!」
大の大人を小脇に抱え、客間をぐるっと見渡した。
「この気配、やたらと空気もおいしいですし――」
その視線が、化け狐、蜂のメイド、鬼族の麗人を彷徨い――
「――まさかまたアレが、来ているのではなくって!?」
最後に着流しの女を見据えて、動かなくなった。
「スハァー、本当だ。でも……角が生えてないよ?」
村長め、余計なことを言うんじゃねぇやい。
生やされたら、おれがまた死ぬだろうがぁ。
「此方の御仁は、ちゃんとした森の主さまだぜ? おれが森の中で見たのと、同じ姿をしてるしよっ!」
おれは必死に弁明する。
そうしねぇと又、おれの頭に果物を生やされちまうからだ。
ふぉん♪
『>>〝痛覚耐性〟や〝体内龍脈操作〟に類するスキルを、習得しますか? Y/N』
まて、余計な気を利かすな。
〝痛み〟や〝体の巡り〟に手を入れて、万が一のことが起きたら――
致命的に拙いことに、なりかねねぇ。
「おや、そちらの二人には見覚えが。約定を交わした者たちに、似ていますね?」
そう言って袂から、ガランと取り出したのは――大きな鈴。
「その鈴――おれが作った奴だぜ!」
戸口に積み上がった座布団や人の山を押しのけ、髭の一人が顔を出した。
「ふぅ、どうしようロットリンデ。本物のファローモみたいだ――痛てっ!」
投げ捨てられる村長。
「どうもこうもありませんわ、成体ファローモ。アナタには、言いたいことがございますのよ!」
ツカツカと客間を横切る、悪逆令嬢。
その嫋やかな手が、こんがらかる、おれたちの中から――
ファロコと、その妹をつかみ上げた。
「まったくもう、世話の焼けますこと!」
ファローモの娘たちは、その硬い髪をつかまれ、難なく持ち上げられた。
ファロコを抱え、その上に妹を乗せ――ぽいっと。
「ふむん?」
両手で、それを受け取る珍妙な女。
森の主と呼ばれ、天気すら操るまさに神獣。
その瞳が困惑に歪む。
「人の大きさになれるのでしたら、家族は一緒に暮らすべきでしてよ!」
人の理の及ばない、森深くに棲む神獣。
その群れへ向かって、人差し指を突きつける――
悪逆令嬢にして吸血鬼とまで噂される、ロットリンデ・ナァク・ルシランツェル。
今は無き超名門、ルシランツェル家ご令嬢。
大人の絵本にまでなった、その艶やかな口元が微かに綻んだとき――
「みゃにゃぎゃにゃぎゃぁ――――!」
奇襲を掛けたのは黄緑色、手にしたのは張り扇。
相当に力を込めて叩いても、怪我をするには至らない――
五百乃大角開発の、紙製武器だ。
「あぃったぁ――――!?」
頭を押さえ身を屈める、その足の間を――
魔法具の妖精が、ちょこまかと逃げていく。
後から聞いた話だと、〝順路検索の一部に発生中のバグ〟……おにぎりの中に入ってる酢蛸の不調が原因で、手元が狂ったらしい。
「いま、狼藉をお働きになったのわあ、どーなーたーかーしーるーぁ――――?」
淑女の足の間、落ちる鉄棒。
一瞬で組み立てられる、魔法杖――ガッシャンッ♪
「消し飛びなさぃなっ、爆・発・魔・法!」
消し飛んだら、駄目だろうが!
ヒュヒュヒュヒュボボボボボゴゥワワワァァァァッ♪
棘が付いた先端から、七色の噴煙が湧き上がった!
「みゃぎゃー♪」
地に伏せ、それを躱した――おにぎりの背後。
ひゅひゅひゅひゅっ、ぼっごごごごごごぅぅわぁぁぁぁあっぁぁぁあっ!
爆発を一身に受け、パタリと倒れる尖った耳。
「ぎゃあっ、間違えましたわぁー!?」
などと慌てる悪逆ご令嬢の眼前、ゆらりと。
まるで糸に引かれるかのように、すくりと。
立ち上がるのは、巫女装束。
立ち上るのは、幽遠の灯火。
万年ルーキーと、悪漢令嬢の姿が見えん。
くそう、逃げやがったな!
§
「結果としてわさぁ、呼んで正解だったわよねぇん?」
まぁなぁ、もう一度、旅籠屋を一から建て直す羽目になったから――
奴が背負った収納魔法具箱と、奴の正確な大工仕事の腕は大層役立ったぜ。
「でスが、建テ直ス原因モ、〝強化服自律型おにぎり一号〟のせイでは?」
それもそうだが、風呂場で助けられた恩義もあるし――
何よりこの光景を見るに、あのときあの場で――
これ以上の収めようが、あったとは思えん。
「「「「「「「おかわりー♪」」」」」」」
「「「「「「「こっちもー♪」」」」」」」
最初に建てたのと比べて、倍の広さで建て直した宴会場は――
モコモコした大きな頭をした奴らで、賑わっている。
そう、全員が悪逆令嬢の、爆発魔法の餌食になったのだ。
そして皆、矢鱈と腹が減ってるのは、辺境伯名代さまの狐火に当てられたからで――
ジリジリヒリヒリした、あの場は――
全員が吹っ飛ばされ、みんな同じ髪型になったことで――
良い感じに収まりが付いた。
「ちょっとニゲル、そこの薬味を取ってちょうだいな」
「もう、人使いが荒いなぁ。はい、どうぞ」
「ニゲルさま、私も――」
ちなみに旅籠屋の中に居た者の中で、逃げ果せた者は居ない。
「みゃにゃぎゃぁ♪」
空いた皿を積み上げ、鳴く黄緑色。
「こらっ、あたくしさまのおかわりが先でしょっ!?」
どういう訳か作り物であるはずの、女神御神体やおにぎりまで――
その頭を一様に、縮れさせている。
わいわいわいわい、がやがやがやがや。
もぐもぐもぐもぐ、ぱくぱくぱくぱく。
ふむ、同じ飯を旨いと言って食えるなら――
大抵の事わぁ、何とかなるもんだぜ。
「がはははははははっ、リオレイニア! どうしてそっぽを向いてやがるんだぁ?」
上機嫌な工房長ノヴァド。
樽酒を蒸留した強い酒を、沢山、造ってやったからな。
「おろぉ? その丸焼きは俺たちが頼んだ奴だぜ、嬢ちゃんよ?」
まるで毛玉から直接、手足が生えたようになったドワーフ族の二人。
スタスタスタスタ!
大盆を持ったまま顔を必死に背け、逃げていくメイド服。
確かに今の毛玉の様子を、彼女に見せるのは酷だぜ。
ただでさえ髭のおっさん二人の、あまりのそっくりさで、笑わされてたってのに、その上――
フカフ村名物の、丸く縮れた大きな髪型。
やっと克服したそれも、ふらつく毛玉たちに、ああも追いかけまわされたら――
「ぷっぐっ、ぐひゃぴぃ――ゴンッ♪」
あー、柱に頭をぶつけやがった。
そろそろやべぇ、給仕役を変わってやらねぇと。
うるせぇ神力の唸りが、廊下の向こうから近づいてくる。
「ロットリンデちゃん、宴会場わぁ――こっちこっちぃ!」
姿を現す丸い球と、それに乗る丸い――
芋茸さまめ、今更来やがって!
「貴っ様ぁ――何処行ってたぁ!」
いや十中八九、板場だろうが――
見ろや、この有様ぁ!!
未だ中腰のまま、珍妙な女の様子を覗う奥方さまに――
仕える家の実質最高権力者をまえに、思案する蜂の魔神。
遊撃隊の仲間である少女を抱きかかえ、一本角から小さな雷を迸らせる鬼族の麗人に――
着流しの女と対峙する、猫の魔物にして魔法具の精霊ロォグ。
そして後ろ頭を押さえ――ぽぎゅりっ?
体を起こした黄緑色の、無いはずの目が吊り上がってる。
バキィィン――ドガァンッ――バリバリバリィッ!!
戸口辺りに積み重なる、襖や平机、座布団の山、そして――
「「「きゃぁぁぁっ――――!?」」」
顧問氏と秘書と担任教師なんかを、吹っ飛ばし――
飛び込んで来たのは、大森林切っての悪逆令嬢。
浴衣の前が開けるのも厭わす、大申並みの怪力を発揮する彼女が――
「ロットリンデッ、居た! ファロコ居たよ!」
大の大人を小脇に抱え、客間をぐるっと見渡した。
「この気配、やたらと空気もおいしいですし――」
その視線が、化け狐、蜂のメイド、鬼族の麗人を彷徨い――
「――まさかまたアレが、来ているのではなくって!?」
最後に着流しの女を見据えて、動かなくなった。
「スハァー、本当だ。でも……角が生えてないよ?」
村長め、余計なことを言うんじゃねぇやい。
生やされたら、おれがまた死ぬだろうがぁ。
「此方の御仁は、ちゃんとした森の主さまだぜ? おれが森の中で見たのと、同じ姿をしてるしよっ!」
おれは必死に弁明する。
そうしねぇと又、おれの頭に果物を生やされちまうからだ。
ふぉん♪
『>>〝痛覚耐性〟や〝体内龍脈操作〟に類するスキルを、習得しますか? Y/N』
まて、余計な気を利かすな。
〝痛み〟や〝体の巡り〟に手を入れて、万が一のことが起きたら――
致命的に拙いことに、なりかねねぇ。
「おや、そちらの二人には見覚えが。約定を交わした者たちに、似ていますね?」
そう言って袂から、ガランと取り出したのは――大きな鈴。
「その鈴――おれが作った奴だぜ!」
戸口に積み上がった座布団や人の山を押しのけ、髭の一人が顔を出した。
「ふぅ、どうしようロットリンデ。本物のファローモみたいだ――痛てっ!」
投げ捨てられる村長。
「どうもこうもありませんわ、成体ファローモ。アナタには、言いたいことがございますのよ!」
ツカツカと客間を横切る、悪逆令嬢。
その嫋やかな手が、こんがらかる、おれたちの中から――
ファロコと、その妹をつかみ上げた。
「まったくもう、世話の焼けますこと!」
ファローモの娘たちは、その硬い髪をつかまれ、難なく持ち上げられた。
ファロコを抱え、その上に妹を乗せ――ぽいっと。
「ふむん?」
両手で、それを受け取る珍妙な女。
森の主と呼ばれ、天気すら操るまさに神獣。
その瞳が困惑に歪む。
「人の大きさになれるのでしたら、家族は一緒に暮らすべきでしてよ!」
人の理の及ばない、森深くに棲む神獣。
その群れへ向かって、人差し指を突きつける――
悪逆令嬢にして吸血鬼とまで噂される、ロットリンデ・ナァク・ルシランツェル。
今は無き超名門、ルシランツェル家ご令嬢。
大人の絵本にまでなった、その艶やかな口元が微かに綻んだとき――
「みゃにゃぎゃにゃぎゃぁ――――!」
奇襲を掛けたのは黄緑色、手にしたのは張り扇。
相当に力を込めて叩いても、怪我をするには至らない――
五百乃大角開発の、紙製武器だ。
「あぃったぁ――――!?」
頭を押さえ身を屈める、その足の間を――
魔法具の妖精が、ちょこまかと逃げていく。
後から聞いた話だと、〝順路検索の一部に発生中のバグ〟……おにぎりの中に入ってる酢蛸の不調が原因で、手元が狂ったらしい。
「いま、狼藉をお働きになったのわあ、どーなーたーかーしーるーぁ――――?」
淑女の足の間、落ちる鉄棒。
一瞬で組み立てられる、魔法杖――ガッシャンッ♪
「消し飛びなさぃなっ、爆・発・魔・法!」
消し飛んだら、駄目だろうが!
ヒュヒュヒュヒュボボボボボゴゥワワワァァァァッ♪
棘が付いた先端から、七色の噴煙が湧き上がった!
「みゃぎゃー♪」
地に伏せ、それを躱した――おにぎりの背後。
ひゅひゅひゅひゅっ、ぼっごごごごごごぅぅわぁぁぁぁあっぁぁぁあっ!
爆発を一身に受け、パタリと倒れる尖った耳。
「ぎゃあっ、間違えましたわぁー!?」
などと慌てる悪逆ご令嬢の眼前、ゆらりと。
まるで糸に引かれるかのように、すくりと。
立ち上がるのは、巫女装束。
立ち上るのは、幽遠の灯火。
万年ルーキーと、悪漢令嬢の姿が見えん。
くそう、逃げやがったな!
§
「結果としてわさぁ、呼んで正解だったわよねぇん?」
まぁなぁ、もう一度、旅籠屋を一から建て直す羽目になったから――
奴が背負った収納魔法具箱と、奴の正確な大工仕事の腕は大層役立ったぜ。
「でスが、建テ直ス原因モ、〝強化服自律型おにぎり一号〟のせイでは?」
それもそうだが、風呂場で助けられた恩義もあるし――
何よりこの光景を見るに、あのときあの場で――
これ以上の収めようが、あったとは思えん。
「「「「「「「おかわりー♪」」」」」」」
「「「「「「「こっちもー♪」」」」」」」
最初に建てたのと比べて、倍の広さで建て直した宴会場は――
モコモコした大きな頭をした奴らで、賑わっている。
そう、全員が悪逆令嬢の、爆発魔法の餌食になったのだ。
そして皆、矢鱈と腹が減ってるのは、辺境伯名代さまの狐火に当てられたからで――
ジリジリヒリヒリした、あの場は――
全員が吹っ飛ばされ、みんな同じ髪型になったことで――
良い感じに収まりが付いた。
「ちょっとニゲル、そこの薬味を取ってちょうだいな」
「もう、人使いが荒いなぁ。はい、どうぞ」
「ニゲルさま、私も――」
ちなみに旅籠屋の中に居た者の中で、逃げ果せた者は居ない。
「みゃにゃぎゃぁ♪」
空いた皿を積み上げ、鳴く黄緑色。
「こらっ、あたくしさまのおかわりが先でしょっ!?」
どういう訳か作り物であるはずの、女神御神体やおにぎりまで――
その頭を一様に、縮れさせている。
わいわいわいわい、がやがやがやがや。
もぐもぐもぐもぐ、ぱくぱくぱくぱく。
ふむ、同じ飯を旨いと言って食えるなら――
大抵の事わぁ、何とかなるもんだぜ。
「がはははははははっ、リオレイニア! どうしてそっぽを向いてやがるんだぁ?」
上機嫌な工房長ノヴァド。
樽酒を蒸留した強い酒を、沢山、造ってやったからな。
「おろぉ? その丸焼きは俺たちが頼んだ奴だぜ、嬢ちゃんよ?」
まるで毛玉から直接、手足が生えたようになったドワーフ族の二人。
スタスタスタスタ!
大盆を持ったまま顔を必死に背け、逃げていくメイド服。
確かに今の毛玉の様子を、彼女に見せるのは酷だぜ。
ただでさえ髭のおっさん二人の、あまりのそっくりさで、笑わされてたってのに、その上――
フカフ村名物の、丸く縮れた大きな髪型。
やっと克服したそれも、ふらつく毛玉たちに、ああも追いかけまわされたら――
「ぷっぐっ、ぐひゃぴぃ――ゴンッ♪」
あー、柱に頭をぶつけやがった。
そろそろやべぇ、給仕役を変わってやらねぇと。
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