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5:大森林観測村VSガムラン町

707:旅籠屋三階内湯にて、森の主あらわる

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波浪雲ファローモ!? とうとううつつにまで、姿すがたあらわしやがったな!?」
 まさかの森の主・・・は、おれがまえ想像したのと・・・・・・大差たいさない姿形すがたかたちをしていた。

 大渦おおうずえがいた着流きながしのようなふくのまま、湯に浸かるのは――
 ひたいから小枝こえだを生やした、やさしげで珍妙ちんみょうおんな

@うがあるのはわたしではありません、樹界虫きかいちゅうです。このもり命運めいうんを、になってください」
 かすかに目を、つり上げると――
 ふらふらと揺れていた小枝つのが・・・ピタリと止まった。

「うむ。おまえさまの言うことは矢張やはり、何一なにひとつ、わからん」
 なんはなしなんだぜ?

龍脈@ゅうみゃくからだ宿やどすもの。それは樹界虫きかいちゅうです」
 龍脈・・まわりのはなしならぁ、せめて星神ほしがみにでも言えやぁ。

   §

「そもそも、おまえさまが、むらから出られなくしたんじゃねぇか」
 くぴり。ふぅぅぃ――久々ひさびさの澄みざけわぁ、染みるな。

樹界虫@かいちゅうを逃がしてしまっては、もとも子もないので……森域結界しんいきけっかいを張るのは、当然とうぜんのことゆえ」
 その結界けっかいとやらには、五百乃大角いおのはらお猫さまロォグが――
 女神像めがみぞうかいして、あなを空けちまったがなぁ。

 とくとくとくん――からみのある澄んださけを、猪口ちょくそそぐ。
 リオレイニアの居ぬ間に、なんとやらだぜ。
 はたらきづめのおれが、おれの酒瓶さけを持ち出したからといって――
 とがめられる、道理どうりはねぇ。

 れいによって森の主ファローモの言うことは、まるで要領ようりょうを得なかった。
 それでもはらを割ってはなすならぁ、やはり般若湯こいつだろ――ウカカカッ♪

「おまえさまも、一献いっこんどうでい?」
 湯に浮かべたぼんに、さけいだ猪口ちょくを乗せてやる。
 まえに瞼の裏で話をしたとき・・・・・・・・・・わぁ、そこそこ飲み食い・・・・したからな。

れは、さけですか?」
 ちびり。ウカカッ――いけるくちだな。
 一緒いっしょに、飲み食いが出来できりゃ――大抵たいていのことは、なんとかなるもんだ。

ー。あて・・に、あまものいただきたく」
 そうだった。此奴こいつさまはあまいもんに、目が無かった・・・・・・んだったぜ。

あまものなぁ」
 ガムラン饅頭《まんじゅう》で良――
「(ちょっと、いまあまものって言っったぁ!?)」
 てちりと、おれの頭上あたま降臨こうりんする御神体さまいおのはら

 ィィィィィィンッ――――殺気さっきっ!?
 かすかに湯が、揺れた気がするぜっ?

「やい、念話ねんわは止めとけやぃ。湯船ゆぶねあなを空けられたら、折角せっかく風流ふうりゅうさけがぁ台無だいなしだろぅがっ!」
 狐耳族きつねみみぞくちかくで、根菜いおのはらジンライ念話ねんわ使つかうと、殺気さっきが飛んでくる。
 しかも其奴そいつ場合ばあいによっては、ほそするど狐火・仙花きつねびともない――
 壁床天井にところかまわず大穴おおあなを空けるのだ。

「ところでシガミー。こちらのかたわぁ、どなたぁ
「なんという、ちいさきもの……樹界虫きかいちゅうでは、ないようですが?」
 見つめ合う、美の女神いおのはら森の主ファローモ

「聞いておどろけ、もりぬしさまだ。失礼しつれいの無いように、気をつけろやぁ――」
 ふぉん♪
『イオノ>>ファロコちゃんの、お母さんわのねん?』
 そういうことだな。

「――そしてぬしさまよ、こいつ・・・ぁこうみえてひとの世のかみ……ぬしみたいなもんだ。うやま必要ひつようはねぇが、仲良なかよくしてやってくれや」
 二人とも、平穏無事《へいおんぶじ》にたのむぜ。
 また念話ねんわで、がなられてもかなわんからな。

「(てなわけで迅雷ジンライ星神ほしがみを連れてこい)」
 ちなみに生身なまみのおれが、念話ねんわ使つかっても――
 狐耳の連中コントゥルおやこかんに、さわることはない。

 ふぉん♪
『>>茅野姫なら、厨房に居ます』
 ふぉん♪
『ホシガミー>>はい。あとからお出しする分の料理の、下ごしらえをしておりますわ?』
 森の主ファローモとのはなしが済んだら、おれも厨房そっちはいるが――

 おれは耳栓みみせんを、ぎゅっと押し込んだ。
 おれが付ける耳栓みみせんから突き出た、ちいさな機械腕きかいうで
 その先端さきから、ほとばし赤光せっこう
 湿気しっけおお風呂場ここでは、一行表示ティッカー文字もじすこにじむが――
 読めないほどではない。

 ふぉん♪
『シガミー>>どうも森の主が言うには、おれぁ〝樹界虫〟とか言う虫らしくてな』
 全身ぜんしん龍脈りゅうみゃくと言われても、おれにはまるでわからん。
 けど、こと龍脈りゅうみゃくかんしてなら、専門家くわしいやつがいる。
 ほかならぬ茅野姫かやのひめ、そのひとだ。

「というわけで、いそしいところわりぃがぁ――」
 ――なんあまい、さけさかなたのむぜ。
 女神像近めがみぞうちかくなら視線しせんとおらなくても、こうして念話ねんわつうじる。
 こまかいことは全部ぜんぶ迅雷ジンライ女神像任めがみぞうまかせだが、使つかえるのだから問題もんだいない。

 ふぉん♪
『シガミー>>三階南側の客間まで、持ってきてくれや』
 ふぉん♪
『ホシガミー>>では冷たい物と温かい物、どちらに致しましょうか、くすくす?』

つめたいものあたたかいものなら、どっちが良いんだぜ?」
 おれは小枝つのを生やした珍妙ちんみょう森の主おんなに、聞いてやる。

「はい、はぁい♪ お風呂ふろで食べる甘い物・・・って言ったらぁ――冷たいの・・・・に決まってるでしょっ
 神さんおまえには、聞いてないんだが――

は、わたくしもそれで」
 まぁ森の主ほんにんも、そう言うなら良いだろう。
 じゃぁつめたいものを、たのむぜ。

 ふぉん♪
『ホシガミー>>くすくす、承りましたわ♪』

「よいしょぉ
 トタンと、ぼんに飛び乗る女神御神体いおのはら
「ぅわぷっ! さけこぼれるだろぅがぁ」
 芋茸めがみさまがとなりに浸かる、森の主ファローモ見上みあげた。
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