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5:大森林観測村VSガムラン町

684:ロコロ村集会所にて、失意のファロコと第3の観測村?

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「きゃぁぁぁっ――――大変たいへん! レトラちゃんが、食べられちゃう!」
 生意気なまいきそうな子供こどもかおが、あおざめた。

大丈夫だいじょうぶだよ、食べたりっ、しないよっ!」
 村長そんちょう二股ふたまたつのむすめを、かかえている。
 そのかお必死ひっしだ。

「けれど、どこかへかくれられたりしたら、面倒めんどうですわ」
 じたばたとあばれる森の王の子供ファロコを、ひょいと受け取る悪逆令嬢けいこくのまもの

「建てたばかりの観光かんこうスポットを、こわされるわけには行きませんねぇー!」
 コッヘル商会しょうかい商会長しょうかいちょうが、あたりの村人むらびとを引き連れ――厨房ちゅうぼうから出て行った。

 傾国けいこく魔物まものうわさされる、ミス・ロットリンデ。
 その姿すがたかわいらしく模った・・・・・・・・・冒険者ぼうけんしゃギルド大森林だいしんりん観測村支部かんそくむらしぶ
 その全館ぜんかんが、うえしたへの大騒おおさわぎになってから、やく分後ふんご

「あのー。この針鼠はりねずみみたいなのは、なんだい? それにこの目をまわしたおんなの子は、シガミーの友達ともだちだよね?」
 厨房ちゅうぼう姿すがたあらわしたのは、覇気はきの無い青年せいねん
 〝万年まんねんルーキー〟、〝ガムランのおおかみ〟、〝メンテナンスフリー〟、〝LV不詳事レベルふしょうじ〟、〝錆びたけん〟など。
 いろとりどりに揶揄やゆされる、人畜無害じんちくむがいにして最強の・・・青年せいねんだった。

「ぶくぶくぶく」
 かかえられたのは、気絶きぜつし――くちからあわを吹く少女しょうじょ
「ぎぎぎぎゅりぃぃぃ!?」
 そんな少女しょうじょに、四つ足で・・・・しがみ付く毛玉・・

 毛玉けだま内側うちがわには、ちいさなひとからだがあって――
 身をよじり、あばれている。

「ニゲル! でかしましたわっ♪」
 幼子けだまたちをかかえてあられた青年かれを、めずしく褒める暴君ぼうくん
 悪漢令嬢あっかんれいじょう揶揄やゆされる、ガムラン代表だいひょう受付嬢うけつけじょうにして――
 今世代最強こんせだいさいきょううたわれる、S級冒険者きゅうぼうけんしゃパーティーの隊長リーダー

 その高貴こうき細顎あごが、くるり――
 「ふふん、ガムラン冒険者ぼうけんしゃ実力じつりょくは、いかがなものかしら? くすくすくす♪」
 だがそんな、おごった視線を向けられた悪逆令嬢ロットリンデは――

「ああもう――ありがとう! 其処そこの、ぱっとしない・・・・・・殿方とのがた!」
 細身ほそみのドレスを、つまみ上げ――
「このロットリンデ、いまは無きルシランツェル・・・・・・・の名にかけて――このごおんは、一生忘いっしょうわすれませんわっ♪」
 目を伏せ、惚れ惚れするような微笑ほほえみ。
 片足かたあしを引きこしを落とす淑女しゅくじょは、最大限さいだいげんれいかえしたのであった。

 呆気あっけにとられる、悪漢令嬢リカルル横目よこめに――
 悪逆令嬢ロットリンデは、頑丈がんじょうそうな針金はりがねを持ち――
 ガムラン最強さいきょううち一人ひとり、ニゲル青年せいねんへと――
 じりじりと、にじり寄っていくのであった。

   §

「おいでー、ファロコだよー?」
 伸ばされた手。
「にぎゅりらら?」
 その手は無常むじょうにも、ちいさなあしで蹴り飛ばされた。

「レイダちゃぁぁん、たぁすぅけぇてぇー!」
 意識いしきを取りもどした眼鏡めがね少女しょうじょが、たすけを請うも――

「ひとまずは、たくさん食べて栄養えいようを付けて、おおきくそだってもらうまで……その手ははなれないかもしれませんわねー♪」
 やれやれとうでまくりする彼女ロットリンデは、とてもたのしそうだ。

 ぎゃくにうなだれ、この世の不幸ふこう一身いっしんに受けたような――
 壮絶そうぜつかおになる、森の主第一子もりのぬしだいいっしファロコ。

「ぎゅにぎぎぎぎーぃ」
 絶望せつぼうした彼女ファロコは、割れたからしかのこっていない木箱きばこに、もぐり込んでしまった。

   §

「はぁい。お料理りょうり準備じゅんびがぁ、出来できましたぁよぉぅ♪ クースクスクスクス、ププーッ
 猫耳ネコミミがついた頭飾りプリムを、あたまに乗せたメイド姿すがた少女しょうじょが――
 大宴会場だいえんかいじょうと化したギルド支部地下二階しぶちかにかいへと、姿すがたあらわした。

 天井てんじょうが、パカリとひらき――ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴゥゥン!
 修繕しゅうぜんされた鉄籠ゴンドラに乗り――降りて来たのは大量たいりょう料理りょうり

 壇上だんじょう背後はいごには『ファロコちゃんの妹ちゃん、誕生おめでとう♪』という吊り看板かんばん

 ものすごながくておおくてかたい毛を、針金ワイヤーでキツくしばったら。
 毛玉けだまなかには、ちいさなあんなの子がいたのだ。
 壇上だんじょうむらがる村人むらびとたち――

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「本当ほんとうおんなの子だ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
 森域結界しんいきけっかいにより退村規制中たいそんきせいちゅう長髪村ロコロむらに、まるおおきな髪型あたまをした連中れんちゅうだけでなく――
 みみ丸い物を貼り付けた・・・・・・・・・、奇っかい連中れんちゅうまで混じっていた。

「あの……女将おかみさん、あのみみ貝殻のような物・・・・・・・を貼り付けた村人むらびとたちは……どこからいらしたのですか?」
 白金はっきん眼鏡めがねかるく持ち上げる、給仕服姿きゅうじふくすがた
 給仕の手を止めた彼女かのじょが、そうたずねた。

「んー? 見ない連中れんちゅうさね――村長そんちょうたち、おいで!」
 木さじで巨大きょだいなべを、かき混ぜていた恰幅かっぷくの良い女性じょせいが――
「「なんだぁい、かあさん♪」」
「「はぁぁぁあぁぁい♪」」
「どうしたの、トゥナ?」
 ここ〝グランジ・ロコロむら〟と、〝ファンキー・フカフむら〟の村長そんちょうたちを――
 呼びつけた!

「あの耳当て・・・を付けた連中れんちゅうは、どこのものだい?」
「いぇぁー、〝エレクト、ロ・モ、フモむら〟の、やつら、さぁ♪」
 カクカクしたうごきをする、女将おかみさんの息子むすこ

「ふぅん、だそうだよ、リオレイニア。しかし変わった連中れんちゅうさね?」
 女将おかみさんと眼鏡めがねメイドが、村長そんちょうたちとくだん村人むらびとたちを見比みくらべる。
 はな言葉ことばうごきに間断かんだんがあり、それはまるで――

「まるで壊れた・・・、イオノファラーさまのようですわね、ププークスクスクス
 猫耳ねこみみメイドの少女しょうじょが、忌憚きたんのない意見いけんを述べる。

 村長そんちょうたちの不自然ふしぜんうごきは、どうやら〝モフモむら〟からの来訪者らいほうしゃを――
 まねている・・・・・ようだった。
 来訪者かれら文化ぶんか最先端さいせんたんである央都おうとでも、猪蟹屋製品ししがにやせいひんでも見ないような――
 ゆったりとした、不思議ふしぎふくを着ている。

「とて、も気の良、いひとた、ちよ♪」
 やはりカクカクしたうごきをする、女将おかみさんのむすめ
「いぇーぁ♪」
 相槌あいづちを打つ、村長ズ・・・一人ひとり
 見慣みなれない村人むらびとたちは、気の良い連中れんちゅうであるらしい。

「たしか大森林だいしんりんのずーっとおくで、〝ものまねが上手じょうずとり〟を飼ってるんじゃなかったっけ?」
 フカフ村村長むらそんちょう片手かたてなにかを、つまむような仕草しぐさをした。
 おそらくはとりのくちばしの真似まねを、しているのだろう。

「イェー、チェックワンツー♪」
 相槌あいづちを打つ、村長ズ・・・一人ひとり
 見慣みなれない村人むらびとたちは、風変ふうがわりなとりを飼っているらしい。


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「これがぁ、ファロコ・・・・いもうとかぁ♡」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
 壇上だんじょうを取りかこむ、モサモサあたま長髪ちょうはつや、耳当みみあてを付けた――
 大森林だいしんりん点在てんざいする村々むらむらの、多様たよう村人むらびとたち。

 それはむらを挙げての、お食いめだった。
 村人むらびと次々つぎつぎと、なだれ込んでくる。

「じゃぁ、はい。この鉄匙てつさじ鉄箸てつばしで、ごはんを食べさせてあげてくれるかしら?」
 悪逆令嬢あくぎゃくれいじょうロットリンデにおびえつつも、諸々もろもろを受け取る、眼鏡少女めがねしょうじょレトラ。

「ひゃっ、おもっ! こんなにおもいスプーンじゃ、とても無理むりです!」
 毛玉少女向けだましょうじょむけの食器それらは、かなり頑丈がんじょうおもく。
 子供レトラの手には、おもすぎたようだ。

「じゃぁニゲル。手伝てつだっておあげなさいな」
 悪漢令嬢あっかんれいじょうリカルルは、基本的きほんてきにはやさしい。

「えー? な、なんぼくがぁ?」
 万年まんねんルーキー、西計三十六ニゲルせいねんも、基本的きほんてきにはやさしい。
 だがそれはかれ思い人・・・である、リカルルの眼前がんぜんで――
 毛玉けだまのような赤子あかごには、向けづらいたぐいのもので――

「ニゲル……ぼそぼそ……よくお聞きなさい。おじょうさまは、ちいさな子供こどもにもやさしくせっする、貴方あなた姿すがた見たい・・・と……ぼそぼそ……もうしているのですよ?」
 ヴヴウヴヴッ――それはまるで、ルガばちのような。
 黒い眼鏡ルガーサイトを掛けた細身ほそみのメイドが、人知ひとしれずニゲルの背後はいごあらわれ――
 そうささやくように、進言しんげんした。

 それは本来ほんらい、ルガばちである彼女かのじょが見せる習性・・ではなかったが。
 おそらくはかれことわれば、みずか毛玉けだまのような赤子あかごに引っかかれ、蹴飛けとばされ――
 ボロボロになっていくであろう、主人リカルルを見かねてのこととおもわれる。

 「非常ひじょう不本意ふほんいですが、まったく! おじょうさまときたらもう、まったく!」
 うつしい口元くちもとが、そう言っている。
「わ、わかったよ、リオレイニア……さん」
 青年せいねんから言質げんちを取った蜂女はちは、冷ややかにわらい――物陰ものかげから姿すがたを消した。


「きゃぁぁっ!」
「ああもうなんで、頭突ずつきをするのさっ!?」
 不幸ふこうにもなつかれてしまった少女レトラをかばい、青年ニゲルが――
 二人ふたり子供こどもたちが、怪我けがをしないように――
 必死ひっしあいだはいる。

「ギュギュギュギチッ!?」
 毛玉あかごちからすさまじく、格闘しょくじすることやく30ぷん

「けぷぅ――むにゃぁ♪」
 ねむくなった森の主ファローモ子供こどもが、船をこぎ始めた・・・・・・・

「ニゲル! もうよろしくてよ、向こうへ行ってなさいな♪」
 結局けっきょくところ、カワイイ物好ものずきの悪漢令嬢リカルルは、じりじりと――
 毛玉少女けだましょうじょへとみずから、にじり寄っていくのであった。

ーーー
お食い初め/出生後初めての食事を祝う儀式。新しい箸で食べさせる真似をする。本来は生後100日目に行うことが多い。
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