滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

６６０：厨房ダンジョンＬＶ２、レトラベラ嬢あらわる

　瓦礫がれきをよじ登のぼり、明かりが灯ともった部屋へやに飛び込む。
　そこはさっきまで居た三番目さんばんめの倉庫そうこと、寸分違すんぶんたがわぬ佇たたずまい。

「んぅぇーっと？」
　隣となりの倉庫そうこを出たら・・・、同おなじ倉庫そうこだった。
　此方こちらのの横壁よこかべを破やぶって侵入しんにゅうした――又また、別の同じ倉庫・・・・・・。
　その入り口から出たら・・・・・・・・――何なにがあるんだ？

　ひょいと、首くびを出す。
　其処そこは通路つうろのように、細長ほそながい場所ばしょだった。

「おい、やっと別べつの場所ばしょに、出られたぞ？」
　やっと元もとの三つ目の倉庫・・・・・・からは、出られたが――
　通路つうろの柱はしらに道幅みちはば。明かりの魔法具まほうぐ。
　なのに、倉庫そうこのように棚たなや木箱きばこが――
　壁かべに沿って、疎まばらに置かれている。

「はイ。でスが荷物にもツノ置かれ方に・・・・・、三みッツ目ノ倉庫そうコとノ相似点そうじテんが、ザっと――３２２箇所かシょ、発見はッけんさレました・」
　鉄鍋てつなべの柄つかの突き出方・・・・や、羽根芋はねいもの葉の重ね方・・・。
　魔山椒まざんしょうが入はいった瓶びんの、曲がったラベル・・・・・・・。

「確たしかによく見りゃ、雑ざつな物ものの置き方・・・に見覚みおぼえがあらぁ」
　ってこたぁ、まだ偽にせの厨房ちゅうぼうの回廊かいろうからは――
　まるで抜け出せてねぇ・・・・・・・・・・ってことか？

「そのようデす。注意ちゅうイしテ進すスみまシょう・」
　ヴォヴォヴォゥゥゥンッ♪
　迅雷ジンライが唸うなりを上げ、先さきを行く。

「あっ、迅雷ジンライさま♪」
　曲がり角かど、その先さきから声こえがした。

　慌あわてて駆けつければ――ヴォォォン♪
　浮かぶ棒ぼうの前まえ。
　棚たなと棚たなの間あいだに、机つくえと椅いす子が置かれていた。

「あっ、シガミーちゃんも！　こっちこっち！」
　椅子いすに座すわり、此方こちらを手招てまねきするのは――
　レイダやビビビーの隣となりに居ることが多おおい――

「えーっと、そうだぜ！　眼鏡太郎めがねたろうだ、眼鏡太郎めがねたろう！」
　思おもい出したぜ！
「レトラベラよ。レトラベラ・ルリミット！　一文字いちもじもあってないよ!?」
　違ちがったか。そういやぁ、そんな名だった。
　礼虎れとらだ、礼虎れとら。

「悪わりぃ悪わりぃ、つい、ど忘わすれしちまってよ。へへっ♪」
　愛想笑あいそわらいをしておく。
「……〝眼鏡めがねたろぅ〟って言ったことは、聞かなかったことにしてあげる」
　ふぅと、ため息いきをつかれた。

　ふぉん♪
『人物ＤＢ／レトラベラ・ルリミット
　　　　　　初等魔導学院１年Ａ組生徒
　　　　　　出席番号１３』
　この顔かお、この眼鏡めがね――

「悪わりぃ、どうにもしゃらあしゃらした・・・・・・・・・名前なまえには、疎うとくてよ。へへはは♪」
　おい迅雷ジンライ、こいつぁー例れいのアレ・・じゃぁねぇのかぁ!?

　ふぉん♪
『＞＞いいえ、偽の山道でも彼女が先兵として姿を現したからと言って、今回も魔法自販機なる魔法具による、〝自衛行動の発露〟とは限りません。慎重に判断しましょう』

「そうだなっ！」
　ヴッ――――スッパァァァァァァンッ♪
　おれは張り扇ハリセンで力ちからの限かぎりに、眼鏡の童レトラベラの頭あたまを引っ叩ぱたいてやった！
　これで消えりゃ、偽物・・ってこったろ――ウカカカカッ♪

「いひゃいっ!?」
　やべぇ！　砂になって崩れ・・・・・・・、姿すがたを消すはずが――
　今回こんかいは、本物ほんものだったらしいぜ!?

　ふぉん♪
『＞＞はい。素直に謝罪しましょう』

「シガミーちゃん、ひどいっ！」
　童わらしは頭あたまを両手りょうてで押さえ、涙目なみだめになった。

「悪わりぃ悪わりぃ！　この厨房ちゅうぼうが連つらなる道みちにわぁ、偽物が出るから・・・・・・・――叩たたいて確たしかめるしか、手がなくてだなっ!?」
　机つくえの上うえに落とした眼鏡めがねを拾ひろって、そっと掛けてやった。

　くきゅりゅるる♪
　頭あたまと腹はらを押さえ頬ほほを染める、眼鏡の童レトラベラ。

「なんでぇい、腹はらぁ空かせてんのか？」
　目の前まえで揚げ物ものと寿司すしを作つくられて、お預けを食らわされたら――
　そりゃ、腹はらも空くか。

「引っ叩ぱたいた詫びだ、遠慮無えんりょなく食ってくれ」
　ヴッ――ことん、どさどさっ♪
　置いた皿さらの上うえに、饅頭まんじゅうの箱はこを置いてやった。

　二箱ふたはこ、計四けいよっつの饅頭まんじゅうを――ぺろり。
　五百乃大角いおのはら並なみの、早食い・・・だぜ。
　もう二箱ふたはこ、置いてやる――ぺろり。
　さらに二箱ふたはこ――ぺろり。

　おかわりをすること、三階目さんかいめにして――
　漸ようやく気づいた。おい迅雷ジンライ。

『＞ええ、シガミー。彼女は、またもや人ではなかったようです』
　小太刀こだちを抜くのが、遅おそかった――
　彼女レトラは大おおきな口くちを開け――すぁぁぁぁっ♪
　部屋ごと・・・・、おれたちを丸呑みにした・・・・・・。

　村長ジュークが入れた金貨かねが特別製レアで、この偽にせの厨房ちゅうぼうも特別製そうだと言っていた。
　偽者にせものを見破みやぶるのには、張り扇ハリセンで叩たたくだけでは――
　足りなかったようだぜ！