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5:大森林観測村VSガムラン町

657:厨房ダンジョン、躾と名代さまと殻つき

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「それにしても小猿こざるしつけのなってなさには、目をおおいたくなりますわよ?」
 ウカカカッ――ぐうの音も出ねぇ。

「まったくわ
 おれのあたまを踏みつける、女神御神体めがみごしんたい

猪蟹屋代表ししがにやだいひょう冒険者ぼうけんしゃパーティーリーダーをつとめる以上いじょう多少たしょういさましさに目をつむりつづけた結果けっか、こんな事態じたいに」
 なんだろうこの、かたをすくめるリオレイニアの、ちいささときたら。

 ふぉん♪
『>>シガミー、この件に関しては戦略的観点からも、一考の余地があるのでは?』
 猪蟹屋ししがにや客足きゃくあしにもかかわるってはなしだろ。ただただみみいてぇ。
「わかったぜ! 学院がくいんもどったらマナー講座こうざに、ちゃんと参加さんかすらぁ……ですわぜっ!」

「「「はぁーーーーーーーーーーっ!」」――
 とんでもなく長ぇ、ためいきかれた。

   §

 ガサガサザッ、シュゴッ、ブァハーッ――――♪
 おれは分けてもらったこめを、食えるようにしていく。
 本来面倒ほんらいめんどうな行程しごとも、おれのスキルで一瞬いっしゅんで済んだ。
 あとはみずひたして、炊くだけだ。

 どごん――土鍋どなべを火に掛ける。

 ふぉん♪
『シガミー>>五百乃大角よお、村長の魔法具は結局の所、どーいう物だぜ?』
 SSSきゅうのおたからてのが、どれだけすごかろうと――
 アーティファクト・御神体こんさいや、アーティファクト・迅雷そらとぶぼうほどではねぇ。
 それでも多少たしょう興味きょうみが、湧いたのだ。

 ふぉん♪
『イオノ>>SSS級のお宝わ、攻略本にわ載ってないわよ。なんせ初版ですし、おすし♪』
 ふぉん♪
『シガミー>>虎の巻じゃなくてよ。お前さまが殊更に、詳しいって話じゃ?』

 ふぉん♪
『イオノ>>は? あたくしさまの専攻は〝行動地理学〟と〝システム工学〟なんですけど?』
 ふぉん♪
『>>はい。ですので、あの魔法自販機は、時空間経路における管理領域を元に』
 わからんが過ぎる、切っとけ。

 ふぉん♪
『イオノ>>時間地理学に準えても空間異常を』
 此方こっちも切っとけ。

ところでよ、レル金貨きんかってなぁなんだぜ? パケタじゃねーのか?」
 おれにわかる……わからん・・・・ところを、リオレイニアに聞いてみる。

 ふぉん♪
『イオノ>えっとねぇー、レル金貨とぉい・う・の・わぁー! 古く使われていた貨幣でぇー〝現在は使用されておりません。〟だってぇーさぁー。それで、揚げ物の準備わ? まだわの?』
 こいつ、切っとけって言ったのに。
 迅雷ジンライはなしをしつつ、攻略本とらのまきめくりりつつ、めし催促さいそくまでしやがって。

 ふぉん♪
『イオノ>>マルチタスクですので。なにを揚げてくれるのん♪』
 もうすこし待て。こめが炊けるころには、決めらぁ。
 おにぎりが居たら、背負せおった収納しゅうのう魔法具箱まほうぐばこなかに詰め込んだ――
 日のもと食材しょくざい使つかえたから、なんでも出来できたんだが。

「たしか30年程前ねんほどまえ央都おうと王国おうこくとして存在そんざいしており、自治権じちけんを持たず宰相さいしょうによる統治とうちがなされておりました。その後、ラスクトール自治領憲法じちりょうけんぽう制定せいていされ、自治領じちりょう発行金貨はっこうきんかである〝パケタ〟が誕生たんじょうしたと聞いています」
 まないた包丁ほうちょう準備じゅんびを、してくれるリオレイニア。

 言ってることがまつりごとだってのわぁわかったが、随分ずいぶん小難こむずかしいな。
央都おうとじゃふるくて使つかえねぇのが、レロ・・金貨きんかってことだな?」
 ふぉん♪
『>>つまり村長は取って置きの金貨を、無尽蔵に使える訳ではないと思われます』
 そういうことだ。

レル・・金貨きんかです――ジューク村長そんちょうさま! この倉庫そうこにあるもの使つかってもよろしいのでしょうかー?」
 早速さっそく倉庫そうこあさ給仕服リオレイニア
 倉庫そうこたなにはかご小箱こばこならんでいて、野菜やさい乾物かんぶつなんかが詰まってる。

「えー? ファロコとー、この卵以外たまごいがいならー、なんでも自由じゆう使つかってくださーい! ……のじゃぁ!」
 村人むらびと一緒いっしょになって、ファロコがはいった木箱きばこを――
 たなに押し込む、村長そんちょうさま。
 倉庫入そうこいぐちに置かれっぱなしで、邪魔じゃまだったからな。

したごしらえは、いつもとおなじで良いのかい?」
 台車だいしゃ野菜やさいを積んでたら、ニゲルが来て厨房ちゅうぼうへ持って行ってくれた。

たすかるぜ。そしたらぁ――野菜やさいと、さっき獲れた猪肉ししにくを、くしに刺して揚げるか♪」
 ふぉん♪
『>>米がもうすぐ、炊き上がります』

「じゃぁさ、じゃぁさぁ! メニューわぁ――お野菜やさいとおにく串揚くしあげげと、お寿司すしってわけねぇん
 てちてちてちり♪

 ふぉん♪
『マオウファラー>>良きわね♪』
 ふぉん♪
『メガミファラー>>良きわよ♪』
 ふぉん♪
『イオノ2>>良きわだわー♪』

 ヴォヴォヴォォォォゥン♪
 土鍋こめまわりをうろつく、五百乃大角いおのはらども。
 おれはおれのあたまうえおおはしゃぎの、根菜こんさいさまをつかんで――
 調理台ちょうりだいうえに解きはなった。

「そろそろ、女神一式そいつら全部ぜんぶ仕舞しまっとけ」
 料理りょうり邪魔じゃまになるから。

   §

「ぅぎゃっ――――!?」
 土鍋こめ様子ようすを見てたら――一番端いちばんはしかまど伏せて乗せてあった鍋・・・・・・・・・・が、ばこんと吹っ飛んだ!
 けどそれはからではなく、ルリーロの体を生やしていた・・・・・・・・

「ルードホルドノ魔法杖まほうツえの、起動音きどうオん確認かくにん
 なんだと!?
 きゅう鉄鍋てつなべかぶり、置物おきもののようになっていたのを――
 すっかりわすれてた。
 なんせここは調理場いたばだ。
 ひっくりかえったなべなんか、いちいち気にしていられん。

 魔法杖まほうつえ調理台ちょうりだいよこに立てかけてあったのが、何処どこかかに行ったから――
 そのへんたなうえにでも、だれかが仕舞しまってくれたものと、勝手かっておもい込んでた。

 シュッゴォッ、ヴァヴァヴァヴァヴァッ――――!
 かまどから飛び出した、奥方おくがたさまが――
 その場でギュリュリュリュルと、旋回せんかいする!

「あっぶなぁっ――――!?」
 魔法杖ルードホルド先端あたまだか尻尾しりだかが、おれの鼻先はなさきかすった!

 かまどたかささは1シガミーもねぇのに――
 どうやって巨大な魔法杖ルードホルドを、かくしてやがった!?
 ふぉん♪
『>>腰に巻いた収納魔法具と思われますが、魔法杖の全長を考えると、我々に見つからずに取り出すことは、不可能です』
 不可能ふかのうったって、げん「にこうして飛びまわっとるだろうが!

「おちつけ、奥方おくがたさまっ! もう、ミノ太郎たろう……〝つののはえたまもの〟は出てこねぇから!」
 いや、つのの生えたファロコの弟妹きょうだいが出てくるなら、それは角が生えた魔物・・・・・・・か!?
 まぎらわしいな!

「はぁっ、ヴァミヤラーク洞穴どうけつのっ――ココォォォンッ!? か、かんがえちゃ駄目だめかんがえちゃ駄目だめよぉ、あれだけは・・・・・ぜぇぇったいにぃぃ、出てきたらだめ・・・・・・・なんですからぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
 巨大杖きょだいつえり――――ヒュドドドシュゴゴゴゴゴォゥワァァァァッ!

 物音おとよりもはやく飛べる、巨大きょだいな〝ルードホルドの魔法杖まほうつえ〟。
 その正体しょうたいは、タターの〝魔銃まじゅうオルタネーター〟とおなじく――
 SSSきゅうレア素材そざい――超特選ちょうとくせんアダマンタイト鉱石こうせき

 ガッチャッガッチャン、パリパリパリィィン――――ゴガンゴドガァン!
 触れてこわれるのは、あたりのものだ。

「「「「ぅわぁー!?」」」」
「「「「「きゃぁーっ!?」」」」」
「「「ぎゃぁっ!?」」」
「「「ァハァン!?」」」
「「「「ゥォゥィェー!?」」」」

 厨房ちゅうぼうを飛びまわり、細長ほそなが通路つうろを駆け抜け、まだ見ぬ厨房ちゅうぼう彼方かなたへ――
 飛んで行ってしまう、辺境伯へんきょうはく名代みょうだいさま。

「きゃぁぁぁぁっ――――奥方おくがたさま!? つえよ!」
 太長ふとなが魔法杖まほうつえ。いつもの練習用れんしゅうよう魔法杖まほうつえとはべつの――
 乗りものとして使つか魔法杖まほうつえを、前掛けエプロン物入れポケットから取り出すリオレイニア。

「まてまて、はぐれたらあぶねぇ!」
 おれはリオのかたに、必死ひっしに飛びついた!

 見る間にとおのいていく、ルードホルドの魔法杖まほうつえ
大丈夫だいじょうぶですわよ。当家とうけ名代みょうだいは、迷子まいごになったくらいで、死にはしませ――」
 母上ルリーロ心配しんぱいを、それほどしているように見えないのは――
 その強さ・・を、信頼している・・・・・・からだ。

 ガギュッ――「ココォォォォンッ!?」
 突然とつぜんよこから突き出たなにかに――ザッキュッ!
 さらわれ、姿すがたを消す辺境伯名代ルリーロ

なんだぜ、いまのは!?」
類推るイすいになりマすが――全長ぜンちょう4メートル超エの、甲殻類こうかクるい
硬貨狂こうかくるい? なんだぁ、そいつぁ――!?」
海老えびさんとかかにさんとかぁ、ヤドカリさんよぉねぇ――
 ちっ、蝦蟹えびかに寄居虫やどかりだと!?
 丁度ちょうど今欲いまほしい食材しょくざいばかりだぜ!

巨大きょだい甲羅付からつき!? だ、駄目だめかも知れませんわね?」
 狐耳の娘リカルル口元くちもとが、引きつった。
 どうした?
 相手てき巨大きょだい蝦蟹えびかにでも奥方おくがたさま、希代きだい大妖弧相手だいようこあいてかなわけはねぇだろが?
 そもそも普段ふだんなら真っさきに、飛び込んでいくだろうに?

 ふぉん♪
『>>魔物は大型化することがありますが、大型化した場合に難敵となる候補として甲殻類が挙げられます』
 でかい蝦蟹えびかには、そんなにやべぇのか?

 チャリィン♪
 小気味こきみよいおとに振り向くと、村長ジューク板ぺら・・・裏返うがらえし――
 銀色・・の硬貨《かね》を、投げ込むところだった。

 ガチャガチャガチャガチャ、ドガドガドガドガガガッ――――!!!
 積み上がるのは、ちいさな木箱きばこ
 そのなかに詰め込まれた小瓶こびんは、紫色むらさきいろ緑色みどりいろ青色あおいろ
 蘇生薬エリクサー回復薬ポーション解毒薬アンチドートだ。

「これを使つかって、みんなで生きのびるのじゃよ、ふぉっふぉっふぉ♪」
 そうだな。いのちあっての物種ものだねだが――

「シガミー! いまこそ、あたくしさまの料理番りょうりばんとしての、うでの見せどころでしょっ
 ばかやろう。いのちあっての物種ものだねだって、言っとるだろうが!

ーーー
色界/三界の一つ。仏教における欲と精神と物質の段階を表す概念。欲と煩悩がなく、かといって肉体や物質から抜け出せていない、純粋な物質だけの世界。色天界、色天。
行動地理学/人間の行動を計量し、地理的な行動分析を行う学問。
システム工学/システムの設計制御や効率化を行う学問。システムには人や企業体なども含まれる。
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