657 / 738
5:大森林観測村VSガムラン町
657:厨房ダンジョン、躾と名代さまと殻つき
しおりを挟む
「それにしても小猿の躾のなってなさには、目を覆いたくなりますわよ?」
ウカカカッ――ぐうの音も出ねぇ。
「まったくわよ」
おれの頭を踏みつける、女神御神体。
「猪蟹屋代表や冒険者パーティーリーダーを務める以上、多少の勇ましさに目をつむり続けた結果、こんな事態に」
なんだろうこの、肩をすくめるリオレイニアの、小ささときたら。
ふぉん♪
『>>シガミー、この件に関しては戦略的観点からも、一考の余地があるのでは?』
猪蟹屋の客足にも関わるって話だろ。ただただ耳が痛ぇ。
「わかったぜ! 学院に戻ったらマナー講座に、ちゃんと参加すらぁ……ですわぜっ!」
「「「はぁーーーーーーーーーーっ!」」――!」
とんでもなく長ぇ、ため息を吐かれた。
§
ガサガサザッ、シュゴッ、ブァハーッ――――♪
おれは分けてもらった米を、食えるようにしていく。
本来面倒な行程も、おれのスキルで一瞬で済んだ。
あとは水に浸して、炊くだけだ。
どごん――土鍋を火に掛ける。
ふぉん♪
『シガミー>>五百乃大角よお、村長の魔法具は結局の所、どーいう物だぜ?』
SSS級のお宝てのが、どれだけ凄かろうと――
アーティファクト・御神体や、アーティファクト・迅雷程ではねぇ。
それでも多少の興味が、湧いたのだ。
ふぉん♪
『イオノ>>SSS級のお宝わ、攻略本にわ載ってないわよ。なんせ初版ですし、おすし♪』
ふぉん♪
『シガミー>>虎の巻じゃなくてよ。お前さまが殊更に、詳しいって話じゃ?』
ふぉん♪
『イオノ>>は? あたくしさまの専攻は〝行動地理学〟と〝システム工学〟なんですけど?』
ふぉん♪
『>>はい。ですので、あの魔法自販機は、時空間経路における管理領域を元に』
わからんが過ぎる、切っとけ。
ふぉん♪
『イオノ>>時間地理学に準えても空間異常を』
此方も切っとけ。
「所でよ、レル金貨ってなぁ何だぜ? パケタじゃねーのか?」
おれにわかる……わからん所を、リオレイニアに聞いてみる。
ふぉん♪
『イオノ>えっとねぇー、レル金貨とぉい・う・の・わぁー! 古く使われていた貨幣でぇー〝現在は使用されておりません。〟だってぇーさぁー。それで、揚げ物の準備わ? まだわの?』
こいつ、切っとけって言ったのに。
迅雷と話をしつつ、攻略本を捲りつつ、飯の催促までしやがって。
ふぉん♪
『イオノ>>マルチタスクですので。なにを揚げてくれるのん♪』
もう少し待て。米が炊ける頃には、決めらぁ。
おにぎりが居たら、背負った収納魔法具箱の中に詰め込んだ――
日の本の食材も使えたから、何でも出来たんだが。
「たしか30年程前、央都は王国として存在しており、自治権を持たず宰相による統治がなされておりました。その後、ラスクトール自治領憲法が制定され、自治領発行金貨である〝パケタ〟が誕生したと聞いています」
まな板や包丁の準備を、してくれるリオレイニア。
言ってることが政だってのわぁわかったが、随分と小難しいな。
「央都じゃ古くて使えねぇのが、レロ金貨ってことだな?」
ふぉん♪
『>>つまり村長は取って置きの金貨を、無尽蔵に使える訳ではないと思われます』
そういうことだ。
「レル金貨です――ジューク村長さま! この倉庫にある物は使ってもよろしいのでしょうかー?」
早速、倉庫を漁る給仕服。
倉庫の棚には籠や小箱が並んでいて、野菜や乾物なんかが詰まってる。
「えー? ファロコとー、この卵以外ならー、何でも自由に使ってくださーい! ……のじゃぁ!」
村人と一緒になって、ファロコが入った木箱を――
棚に押し込む、村長さま。
倉庫入り口に置かれっぱなしで、邪魔だったからな。
「下ごしらえは、いつもと同じで良いのかい?」
台車に野菜を積んでたら、ニゲルが来て厨房へ持って行ってくれた。
「助かるぜ。そしたらぁ――野菜と、さっき獲れた猪肉を、串に刺して揚げるか♪」
ふぉん♪
『>>米がもうすぐ、炊き上がります』
「じゃぁさ、じゃぁさぁ! メニューわぁ――お野菜とお肉の串揚げと、お寿司ってわけねぇん♪」
てちてちてちり♪
ふぉん♪
『マオウファラー>>良きわね♪』
ふぉん♪
『メガミファラー>>良きわよ♪』
ふぉん♪
『イオノ2>>良きわだわー♪』
ヴォヴォヴォォォォゥン♪
土鍋の周りをうろつく、五百乃大角ども。
おれはおれの頭の上で大はしゃぎの、根菜さまをつかんで――
調理台の上に解き放った。
「そろそろ、女神一式全部、仕舞っとけ」
料理の邪魔になるから。
§
「ぅぎゃっ――――!?」
土鍋の様子を見てたら――一番端の竈に伏せて乗せてあった鍋が、ばこんと吹っ飛んだ!
けどそれは空ではなく、ルリーロの体を生やしていた。
「ルードホルドノ魔法杖の、起動音ヲ確認!」
なんだと!?
急に鉄鍋を被り、置物のようになっていたのを――
すっかり忘れてた。
なんせここは調理場だ。
ひっくり返った鍋なんか、いちいち気にしていられん。
魔法杖も調理台の横に立てかけてあったのが、何処かに行ったから――
その辺の棚の上にでも、誰かが仕舞ってくれた物と、勝手に思い込んでた。
シュッゴォッ、ヴァヴァヴァヴァヴァッ――――!
竈から飛び出した、奥方さまが――
その場でギュリュリュリュルと、旋回する!
「あっぶなぁっ――――!?」
魔法杖の先端だか尻尾だかが、おれの鼻先を掠った!
竈の高さは1シガミーもねぇのに――
どうやって巨大な魔法杖を、隠してやがった!?
ふぉん♪
『>>腰に巻いた収納魔法具と思われますが、魔法杖の全長を考えると、我々に見つからずに取り出すことは、不可能です』
不可能ったって、現にこうして飛び回っとるだろうが!
「おちつけ、奥方さまっ! もう、ミノ太郎……〝つののはえたまもの〟は出てこねぇから!」
いや、角の生えたファロコの弟妹が出てくるなら、それは角が生えた魔物か!?
紛らわしいな!
「はぁっ、ヴァミヤラーク洞穴のっ――ココォォォンッ!? か、考えちゃ駄目、考えちゃ駄目よぉ、あれだけはぜぇぇったいにぃぃ、出てきたらだめなんですからぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
巨大杖を駆り――――ヒュドドドシュゴゴゴゴゴォゥワァァァァッ!
物音よりも速く飛べる、巨大な〝ルードホルドの魔法杖〟。
その正体は、タターの〝魔銃オルタネーター〟と同じく――
SSS級レア素材――超特選アダマンタイト鉱石。
ガッチャッガッチャン、パリパリパリィィン――――ゴガンゴドガァン!
触れて壊れるのは、辺りの物だ。
「「「「ぅわぁー!?」」」」
「「「「「きゃぁーっ!?」」」」」
「「「ぎゃぁっ!?」」」
「「「ァハァン!?」」」
「「「「ゥォゥィェー!?」」」」
厨房を飛び回り、細長い通路を駆け抜け、まだ見ぬ厨房の彼方へ――
飛んで行ってしまう、辺境伯名代さま。
「きゃぁぁぁぁっ――――奥方さま!? 杖よ!」
太長い魔法杖。いつもの練習用魔法杖とは別の――
乗り物として使う魔法杖を、前掛けの物入れから取り出すリオレイニア。
「まてまて、逸れたら危ねぇ!」
おれはリオの肩に、必死に飛びついた!
見る間に遠のいていく、ルードホルドの魔法杖。
「大丈夫ですわよ。当家の名代は、迷子になったくらいで、死にはしませ――」
母上の心配を、それほどしているように見えないのは――
その強さを、信頼しているからだ。
ガギュッ――「ココォォォォンッ!?」
突然、横から突き出た何かに――ザッキュッ!
攫われ、姿を消す辺境伯名代。
「何だぜ、今のは!?」
「類推になりマすが――全長4メートル超エの、甲殻類カと」
「硬貨狂い? 何だぁ、そいつぁ――!?」
「海老さんとか蟹さんとかぁ、ヤドカリさんよぉねぇ――♪」
ちっ、蝦蟹に寄居虫だと!?
丁度、今欲しい食材ばかりだぜ!
「巨大な甲羅付き!? だ、駄目かも知れませんわね?」
狐耳の娘の口元が、引きつった。
どうした?
相手が巨大な蝦蟹でも奥方さま、希代の大妖弧相手に敵う訳はねぇだろが?
そもそも普段なら真っ先に、飛び込んでいくだろうに?
ふぉん♪
『>>魔物は大型化することがありますが、大型化した場合に難敵となる候補として甲殻類が挙げられます』
でかい蝦蟹は、そんなにやべぇのか?
チャリィン♪
小気味よい音に振り向くと、村長が板ぺらを裏返し――
銀色の硬貨《かね》を、投げ込む所だった。
ガチャガチャガチャガチャ、ドガドガドガドガガガッ――――!!!
積み上がるのは、小さな木箱。
その中に詰め込まれた小瓶は、紫色に緑色に青色。
蘇生薬に回復薬に解毒薬だ。
「これを使って、みんなで生きのびるのじゃよ、ふぉっふぉっふぉ♪」
そうだな。命あっての物種だが――
「シガミー! 今こそ、あたくしさまの料理番としての、腕の見せ所でしょっ!」
ばかやろう。命あっての物種だって、言っとるだろうが!
ーーー
色界/三界の一つ。仏教における欲と精神と物質の段階を表す概念。欲と煩悩がなく、かといって肉体や物質から抜け出せていない、純粋な物質だけの世界。色天界、色天。
行動地理学/人間の行動を計量し、地理的な行動分析を行う学問。
システム工学/システムの設計制御や効率化を行う学問。システムには人や企業体なども含まれる。
ウカカカッ――ぐうの音も出ねぇ。
「まったくわよ」
おれの頭を踏みつける、女神御神体。
「猪蟹屋代表や冒険者パーティーリーダーを務める以上、多少の勇ましさに目をつむり続けた結果、こんな事態に」
なんだろうこの、肩をすくめるリオレイニアの、小ささときたら。
ふぉん♪
『>>シガミー、この件に関しては戦略的観点からも、一考の余地があるのでは?』
猪蟹屋の客足にも関わるって話だろ。ただただ耳が痛ぇ。
「わかったぜ! 学院に戻ったらマナー講座に、ちゃんと参加すらぁ……ですわぜっ!」
「「「はぁーーーーーーーーーーっ!」」――!」
とんでもなく長ぇ、ため息を吐かれた。
§
ガサガサザッ、シュゴッ、ブァハーッ――――♪
おれは分けてもらった米を、食えるようにしていく。
本来面倒な行程も、おれのスキルで一瞬で済んだ。
あとは水に浸して、炊くだけだ。
どごん――土鍋を火に掛ける。
ふぉん♪
『シガミー>>五百乃大角よお、村長の魔法具は結局の所、どーいう物だぜ?』
SSS級のお宝てのが、どれだけ凄かろうと――
アーティファクト・御神体や、アーティファクト・迅雷程ではねぇ。
それでも多少の興味が、湧いたのだ。
ふぉん♪
『イオノ>>SSS級のお宝わ、攻略本にわ載ってないわよ。なんせ初版ですし、おすし♪』
ふぉん♪
『シガミー>>虎の巻じゃなくてよ。お前さまが殊更に、詳しいって話じゃ?』
ふぉん♪
『イオノ>>は? あたくしさまの専攻は〝行動地理学〟と〝システム工学〟なんですけど?』
ふぉん♪
『>>はい。ですので、あの魔法自販機は、時空間経路における管理領域を元に』
わからんが過ぎる、切っとけ。
ふぉん♪
『イオノ>>時間地理学に準えても空間異常を』
此方も切っとけ。
「所でよ、レル金貨ってなぁ何だぜ? パケタじゃねーのか?」
おれにわかる……わからん所を、リオレイニアに聞いてみる。
ふぉん♪
『イオノ>えっとねぇー、レル金貨とぉい・う・の・わぁー! 古く使われていた貨幣でぇー〝現在は使用されておりません。〟だってぇーさぁー。それで、揚げ物の準備わ? まだわの?』
こいつ、切っとけって言ったのに。
迅雷と話をしつつ、攻略本を捲りつつ、飯の催促までしやがって。
ふぉん♪
『イオノ>>マルチタスクですので。なにを揚げてくれるのん♪』
もう少し待て。米が炊ける頃には、決めらぁ。
おにぎりが居たら、背負った収納魔法具箱の中に詰め込んだ――
日の本の食材も使えたから、何でも出来たんだが。
「たしか30年程前、央都は王国として存在しており、自治権を持たず宰相による統治がなされておりました。その後、ラスクトール自治領憲法が制定され、自治領発行金貨である〝パケタ〟が誕生したと聞いています」
まな板や包丁の準備を、してくれるリオレイニア。
言ってることが政だってのわぁわかったが、随分と小難しいな。
「央都じゃ古くて使えねぇのが、レロ金貨ってことだな?」
ふぉん♪
『>>つまり村長は取って置きの金貨を、無尽蔵に使える訳ではないと思われます』
そういうことだ。
「レル金貨です――ジューク村長さま! この倉庫にある物は使ってもよろしいのでしょうかー?」
早速、倉庫を漁る給仕服。
倉庫の棚には籠や小箱が並んでいて、野菜や乾物なんかが詰まってる。
「えー? ファロコとー、この卵以外ならー、何でも自由に使ってくださーい! ……のじゃぁ!」
村人と一緒になって、ファロコが入った木箱を――
棚に押し込む、村長さま。
倉庫入り口に置かれっぱなしで、邪魔だったからな。
「下ごしらえは、いつもと同じで良いのかい?」
台車に野菜を積んでたら、ニゲルが来て厨房へ持って行ってくれた。
「助かるぜ。そしたらぁ――野菜と、さっき獲れた猪肉を、串に刺して揚げるか♪」
ふぉん♪
『>>米がもうすぐ、炊き上がります』
「じゃぁさ、じゃぁさぁ! メニューわぁ――お野菜とお肉の串揚げと、お寿司ってわけねぇん♪」
てちてちてちり♪
ふぉん♪
『マオウファラー>>良きわね♪』
ふぉん♪
『メガミファラー>>良きわよ♪』
ふぉん♪
『イオノ2>>良きわだわー♪』
ヴォヴォヴォォォォゥン♪
土鍋の周りをうろつく、五百乃大角ども。
おれはおれの頭の上で大はしゃぎの、根菜さまをつかんで――
調理台の上に解き放った。
「そろそろ、女神一式全部、仕舞っとけ」
料理の邪魔になるから。
§
「ぅぎゃっ――――!?」
土鍋の様子を見てたら――一番端の竈に伏せて乗せてあった鍋が、ばこんと吹っ飛んだ!
けどそれは空ではなく、ルリーロの体を生やしていた。
「ルードホルドノ魔法杖の、起動音ヲ確認!」
なんだと!?
急に鉄鍋を被り、置物のようになっていたのを――
すっかり忘れてた。
なんせここは調理場だ。
ひっくり返った鍋なんか、いちいち気にしていられん。
魔法杖も調理台の横に立てかけてあったのが、何処かに行ったから――
その辺の棚の上にでも、誰かが仕舞ってくれた物と、勝手に思い込んでた。
シュッゴォッ、ヴァヴァヴァヴァヴァッ――――!
竈から飛び出した、奥方さまが――
その場でギュリュリュリュルと、旋回する!
「あっぶなぁっ――――!?」
魔法杖の先端だか尻尾だかが、おれの鼻先を掠った!
竈の高さは1シガミーもねぇのに――
どうやって巨大な魔法杖を、隠してやがった!?
ふぉん♪
『>>腰に巻いた収納魔法具と思われますが、魔法杖の全長を考えると、我々に見つからずに取り出すことは、不可能です』
不可能ったって、現にこうして飛び回っとるだろうが!
「おちつけ、奥方さまっ! もう、ミノ太郎……〝つののはえたまもの〟は出てこねぇから!」
いや、角の生えたファロコの弟妹が出てくるなら、それは角が生えた魔物か!?
紛らわしいな!
「はぁっ、ヴァミヤラーク洞穴のっ――ココォォォンッ!? か、考えちゃ駄目、考えちゃ駄目よぉ、あれだけはぜぇぇったいにぃぃ、出てきたらだめなんですからぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
巨大杖を駆り――――ヒュドドドシュゴゴゴゴゴォゥワァァァァッ!
物音よりも速く飛べる、巨大な〝ルードホルドの魔法杖〟。
その正体は、タターの〝魔銃オルタネーター〟と同じく――
SSS級レア素材――超特選アダマンタイト鉱石。
ガッチャッガッチャン、パリパリパリィィン――――ゴガンゴドガァン!
触れて壊れるのは、辺りの物だ。
「「「「ぅわぁー!?」」」」
「「「「「きゃぁーっ!?」」」」」
「「「ぎゃぁっ!?」」」
「「「ァハァン!?」」」
「「「「ゥォゥィェー!?」」」」
厨房を飛び回り、細長い通路を駆け抜け、まだ見ぬ厨房の彼方へ――
飛んで行ってしまう、辺境伯名代さま。
「きゃぁぁぁぁっ――――奥方さま!? 杖よ!」
太長い魔法杖。いつもの練習用魔法杖とは別の――
乗り物として使う魔法杖を、前掛けの物入れから取り出すリオレイニア。
「まてまて、逸れたら危ねぇ!」
おれはリオの肩に、必死に飛びついた!
見る間に遠のいていく、ルードホルドの魔法杖。
「大丈夫ですわよ。当家の名代は、迷子になったくらいで、死にはしませ――」
母上の心配を、それほどしているように見えないのは――
その強さを、信頼しているからだ。
ガギュッ――「ココォォォォンッ!?」
突然、横から突き出た何かに――ザッキュッ!
攫われ、姿を消す辺境伯名代。
「何だぜ、今のは!?」
「類推になりマすが――全長4メートル超エの、甲殻類カと」
「硬貨狂い? 何だぁ、そいつぁ――!?」
「海老さんとか蟹さんとかぁ、ヤドカリさんよぉねぇ――♪」
ちっ、蝦蟹に寄居虫だと!?
丁度、今欲しい食材ばかりだぜ!
「巨大な甲羅付き!? だ、駄目かも知れませんわね?」
狐耳の娘の口元が、引きつった。
どうした?
相手が巨大な蝦蟹でも奥方さま、希代の大妖弧相手に敵う訳はねぇだろが?
そもそも普段なら真っ先に、飛び込んでいくだろうに?
ふぉん♪
『>>魔物は大型化することがありますが、大型化した場合に難敵となる候補として甲殻類が挙げられます』
でかい蝦蟹は、そんなにやべぇのか?
チャリィン♪
小気味よい音に振り向くと、村長が板ぺらを裏返し――
銀色の硬貨《かね》を、投げ込む所だった。
ガチャガチャガチャガチャ、ドガドガドガドガガガッ――――!!!
積み上がるのは、小さな木箱。
その中に詰め込まれた小瓶は、紫色に緑色に青色。
蘇生薬に回復薬に解毒薬だ。
「これを使って、みんなで生きのびるのじゃよ、ふぉっふぉっふぉ♪」
そうだな。命あっての物種だが――
「シガミー! 今こそ、あたくしさまの料理番としての、腕の見せ所でしょっ!」
ばかやろう。命あっての物種だって、言っとるだろうが!
ーーー
色界/三界の一つ。仏教における欲と精神と物質の段階を表す概念。欲と煩悩がなく、かといって肉体や物質から抜け出せていない、純粋な物質だけの世界。色天界、色天。
行動地理学/人間の行動を計量し、地理的な行動分析を行う学問。
システム工学/システムの設計制御や効率化を行う学問。システムには人や企業体なども含まれる。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
クマちゃんと森の街の冒険者とものづくり ~転生赤ちゃんクマちゃんのもふもふ溺愛スローライフ~
猫野コロ
ファンタジー
転生したもこもこは動揺を隠し、震える肉球をなめ――思わず一言呟いた。
「クマちゃん……」と。
猫のような、クマのぬいぐるみの赤ちゃんのような――とにかく愛くるしいクマちゃんと、謎の生き物クマちゃんを拾ってしまった面倒見の良い冒険者達のお話。
犬に頭をくわえられ運ばれていたクマちゃんは、かっこいい冒険者のお兄さん達に助けられ、恩返しをしたいと考えた。
冷たそうに見えるが行動は優しい、過保護な最強冒険者の青年ルークに甘やかされながら、冒険者ギルドの皆の助けになるものを作ろうと日々頑張っている。
一生懸命ではあるが、常識はあまりない。生活力は家猫くらい。
甘えっこで寂しがり屋。異世界転生だが何も覚えていないクマちゃんが、アイテム無双する日はくるのだろうか?
時々森の街で起こる不思議な事件は赤ちゃんクマちゃんが可愛い肉球で何でも解決!
最高に愛らしいクマちゃんと、癖の強い冒険者達の愛と癒しと仲良しな日常の物語。
【かんたんな説明:良い声のイケメン達と錬金系ゲームと料理と転生もふもふクマちゃんを混ぜたようなお話。クマちゃん以外は全員男性】
【物語の主成分:甘々・溺愛・愛され・日常・温泉・お料理・お菓子作り・スローライフ・ちびっこ子猫系クマちゃん・良い声・イケボ・イケメン・イケオジ・ややチート・可愛さ最強・ややコメディ・ハッピーエンド!】
《カクヨム、ノベルアップ+、なろう、ノベマ!にも掲載中です》
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ
夜刀神一輝
ファンタジー
異世界定食屋 八百万 -素人料理はじめましたー
八意斗真、田舎から便利な都会に出る人が多い中、都会の生活に疲れ、田舎の定食屋をほぼただ同然で借りて生活する。
田舎の中でも端っこにある、この店、来るのは定期的に食材を注文する配達員が来ること以外人はほとんど来ない、そのはずだった。
でかい厨房で自分のご飯を作っていると、店の外に人影が?こんな田舎に人影?まさか物の怪か?と思い開けてみると、そこには人が、しかもけもみみ、コスプレじゃなく本物っぽい!?
どういう原理か知らないが、異世界の何処かの国?の端っこに俺の店は繋がっているみたいだ。
だからどうしたと、俺は引きこもり、生活をしているのだが、料理を作ると、その匂いに釣られて人が一人二人とちらほら、しょうがないから、そいつらの分も作ってやっていると、いつの間にか、料理の店と勘違いされる事に、料理人でもないので大した料理は作れないのだが・・・。
そんな主人公が時には、異世界の食材を使い、めんどくさい時はインスタント食品までが飛び交う、そんな素人料理屋、八百万、異世界人に急かされ、渋々開店!?
BL短篇集
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
BLで全年齢の短篇集。SF(少し不思議)だったり妖(あやかし)だったり、その他いろいろ。1話完結、お好みのものをつまみ食いのようにお楽しみいただければ幸いです。他サイトからのんびり転載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる