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5:大森林観測村VSガムラン町
645:冒険者ギルド大森林観測村支部、一番出てきて欲しいものと一番出てきて欲しくないもの
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「やべぇじゃねぇかよぉっ!?」
ふぉん♪
『シガミー>やべぇじゃねぇかよお!?』
「そうですね。早急に方針を固めなくては――奥方さまぁー!」
リオレイニアが鉄鍋の取っ手を持ち上げると、奥方さまの体も一緒に持ち上がる。
何だか知らんが〝巨大な卵〟を、殊更に恐れてやがるぜ。
試しに鉄器を持ち上げてみれば、何も居ねぇ。
ひっくり返してみたら、裏側にひっついてやがる。
自分の目を猫手で隠して震えるさまに、いじらしさのようなものを感じたから――
おれは鉄器を、そっと戻してやった。
「なんだか面白そうなことに、なりつつありませんこと?」
ガムラン代表が、釘みたいな踵を打ち鳴らす。
よく見れば後ろに控えたニゲル青年は、小さな荷車を引かされていた。
矢鱈と大きな鞄や紙箱、何に使うつもりなのか――
大きな鏡なんかまで、積まれている。
まったく、ニゲルの野郎は、何をさせられてるんだぜ。
「奇遇ですわね、私もそう考えていたところですのよ?」
細身のドレスは竜胆の花を思わせる、落ち着いた配色。
調理台に寄りかかる、その体つきは引き締まっており――
どんなドレスでも、華麗に着こなすことだろう。
そしてやはり、後ろに男が一人控えていた。
彼、フカフ村村長が手にしているのは――
例の四角い魔法具箱が、ただ一つのみ。
「「「「「やばいね」」」」」
ああ、今回ばかりは、何処かから湧いた子供らの言うとおりだぜ!
こいつぁ、やばいなんてもんじゃぁねぇ。
ただでさえ、災厄の狂獣が出てきかねねぇっていう、一大事に――
この組み合わせだ。
ふぉん♪
『>>要するに、一番出てきてほしいものと、一番出てきて欲しくないもの。それらは各人につき一つづつ存在しています。その思いの強さが重複し最大値を取った物が、あの卵の中から出てくると言うことと思われます』
ヴォォゥン♪
『超上級鑑定>一番出てきてほしいものと、一番出てきて欲しくないもの。それらは各人につき一つづつ存在しています。その思いの強さが一番大きい物が、あの卵の中から出てくると思われます』
ふぉん♪
『イオノ>アンケート形式わのねん♪ ウケケケッケケケケケッ!』
ぱらららっ、ぱらららららっ――また本を捲ってやがる。
だからその料理本推しは、一体何なんでぇい?
一番出てきて欲しいものと、一番出てきて欲しくないものなぁ。
思いが強いものが出てくるってぇのわぁ、やべぇぜ。
人間、どうしたって悪感情に引っ張られちまわぁ!
「「そんなの――一人しか居ないじゃないかぁ!?」」
突然、叫ぶ、お付きの男たち。
「二人に増えたりしたら、どっちかなんて選べないし――」
「嬉しいけど、とてもじゃないけど――」
「「――身が持たない!」」
ニゲルと村長の、そんな魂の叫びは――
それぞれの思い人以外の人々に――
概ね好意的に捉えられた。
ふぉん♪
『シガミー>少なくともミノタ、ミノ太郎が出てきて欲しい奴が、居ねぇだけでも大助かりだぜ』
すっぽこ――ここここぉぉん♪
おれの頭の上に、てちりと降り立つ御神体。
「出てきてほしいものぉーっ? そっんなのぉっ、惑星ヒースで一番おいしい物にぃー、決まってるじゃぁないのよさ♪」
ふぉん♪
『シガミー>まて、おいしいものだとぉう!?』
さっきからずっと見てやがった、料理の本。
気になっては、いたのだ。
『>おいしいもの? まさかイオノファラー!?』
女神御神体を引っつかみ、その面をじっと見た。
『(º﹃º)』
虚ろな目。ソレはありし日の――最高の飯に、思いをはせているように見えた。
§
「ニゲル! あの卵の模様、間違いありませんわよねっ?」
細身の豪奢な剣を、腰に巻き直す。
「ジューク! この卵の柄、アナタなら見極められるでしょう?」
棘の付いた鉄棒を、組み立て始める。
「「はっ、はぁいぃいぃっ! 間違いないよ!」」
遠巻きに見つめる村人たちや、おれたちからの視線を一身に受ける――
腰巾着の男性二名。
「ねぇどっちの人が――」「身分違いの恋――」「えっ、どっちもなのっ!?」
「すでに尻に敷か――」「みゃにゃぎゃにゃぁー?」「プークス♪」
などの声が、飛び交う。
〝一番出てきて欲しいものと、一番出てきて欲しくないもの〟
〝そんなの――キミしかいない〟
〝愛の形は人それぞれ/恋愛相談所所長 斧原イオノ〟
などという銘文が、ロットリンデ女神像の建立記念碑に後日、刻まれることとなり――
連綿と語り継がれていくのだが――
それは今は、どうでも良い話である。
顔を真っ赤にした彼らは――
それぞれ安物の聖剣と、金貨に手を掛けた。
ふぉん♪
『シガミー>やべぇじゃねぇかよお!?』
「そうですね。早急に方針を固めなくては――奥方さまぁー!」
リオレイニアが鉄鍋の取っ手を持ち上げると、奥方さまの体も一緒に持ち上がる。
何だか知らんが〝巨大な卵〟を、殊更に恐れてやがるぜ。
試しに鉄器を持ち上げてみれば、何も居ねぇ。
ひっくり返してみたら、裏側にひっついてやがる。
自分の目を猫手で隠して震えるさまに、いじらしさのようなものを感じたから――
おれは鉄器を、そっと戻してやった。
「なんだか面白そうなことに、なりつつありませんこと?」
ガムラン代表が、釘みたいな踵を打ち鳴らす。
よく見れば後ろに控えたニゲル青年は、小さな荷車を引かされていた。
矢鱈と大きな鞄や紙箱、何に使うつもりなのか――
大きな鏡なんかまで、積まれている。
まったく、ニゲルの野郎は、何をさせられてるんだぜ。
「奇遇ですわね、私もそう考えていたところですのよ?」
細身のドレスは竜胆の花を思わせる、落ち着いた配色。
調理台に寄りかかる、その体つきは引き締まっており――
どんなドレスでも、華麗に着こなすことだろう。
そしてやはり、後ろに男が一人控えていた。
彼、フカフ村村長が手にしているのは――
例の四角い魔法具箱が、ただ一つのみ。
「「「「「やばいね」」」」」
ああ、今回ばかりは、何処かから湧いた子供らの言うとおりだぜ!
こいつぁ、やばいなんてもんじゃぁねぇ。
ただでさえ、災厄の狂獣が出てきかねねぇっていう、一大事に――
この組み合わせだ。
ふぉん♪
『>>要するに、一番出てきてほしいものと、一番出てきて欲しくないもの。それらは各人につき一つづつ存在しています。その思いの強さが重複し最大値を取った物が、あの卵の中から出てくると言うことと思われます』
ヴォォゥン♪
『超上級鑑定>一番出てきてほしいものと、一番出てきて欲しくないもの。それらは各人につき一つづつ存在しています。その思いの強さが一番大きい物が、あの卵の中から出てくると思われます』
ふぉん♪
『イオノ>アンケート形式わのねん♪ ウケケケッケケケケケッ!』
ぱらららっ、ぱらららららっ――また本を捲ってやがる。
だからその料理本推しは、一体何なんでぇい?
一番出てきて欲しいものと、一番出てきて欲しくないものなぁ。
思いが強いものが出てくるってぇのわぁ、やべぇぜ。
人間、どうしたって悪感情に引っ張られちまわぁ!
「「そんなの――一人しか居ないじゃないかぁ!?」」
突然、叫ぶ、お付きの男たち。
「二人に増えたりしたら、どっちかなんて選べないし――」
「嬉しいけど、とてもじゃないけど――」
「「――身が持たない!」」
ニゲルと村長の、そんな魂の叫びは――
それぞれの思い人以外の人々に――
概ね好意的に捉えられた。
ふぉん♪
『シガミー>少なくともミノタ、ミノ太郎が出てきて欲しい奴が、居ねぇだけでも大助かりだぜ』
すっぽこ――ここここぉぉん♪
おれの頭の上に、てちりと降り立つ御神体。
「出てきてほしいものぉーっ? そっんなのぉっ、惑星ヒースで一番おいしい物にぃー、決まってるじゃぁないのよさ♪」
ふぉん♪
『シガミー>まて、おいしいものだとぉう!?』
さっきからずっと見てやがった、料理の本。
気になっては、いたのだ。
『>おいしいもの? まさかイオノファラー!?』
女神御神体を引っつかみ、その面をじっと見た。
『(º﹃º)』
虚ろな目。ソレはありし日の――最高の飯に、思いをはせているように見えた。
§
「ニゲル! あの卵の模様、間違いありませんわよねっ?」
細身の豪奢な剣を、腰に巻き直す。
「ジューク! この卵の柄、アナタなら見極められるでしょう?」
棘の付いた鉄棒を、組み立て始める。
「「はっ、はぁいぃいぃっ! 間違いないよ!」」
遠巻きに見つめる村人たちや、おれたちからの視線を一身に受ける――
腰巾着の男性二名。
「ねぇどっちの人が――」「身分違いの恋――」「えっ、どっちもなのっ!?」
「すでに尻に敷か――」「みゃにゃぎゃにゃぁー?」「プークス♪」
などの声が、飛び交う。
〝一番出てきて欲しいものと、一番出てきて欲しくないもの〟
〝そんなの――キミしかいない〟
〝愛の形は人それぞれ/恋愛相談所所長 斧原イオノ〟
などという銘文が、ロットリンデ女神像の建立記念碑に後日、刻まれることとなり――
連綿と語り継がれていくのだが――
それは今は、どうでも良い話である。
顔を真っ赤にした彼らは――
それぞれ安物の聖剣と、金貨に手を掛けた。
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