上 下
645 / 739
5:大森林観測村VSガムラン町

645:冒険者ギルド大森林観測村支部、一番出てきて欲しいものと一番出てきて欲しくないもの

しおりを挟む
「やべぇじゃねぇかよぉっ!?」
 ふぉん♪
『シガミー>やべぇじゃねぇかよお!?』

「そうですね。早急さっきゅう方針ほうしんかためなくては――奥方おくがたさまぁー!」
 リオレイニアが鉄鍋てつなべの取っ手を持ち上げると、奥方さまルリーロからだも一緒いっしょに持ち上がる。
 なんだか知らんが〝巨大な卵イイスタァエッグ〟を、殊更ことさらおそれてやがるぜ。

 ためしに鉄器てつうつわを持ち上げてみれば、なにも居ねぇ。
 ひっくりかえしてみたら、裏側うらがわにひっついてやがる。
 自分じぶんの目を猫手ねこてかくしてふるえるさまに、いじらしさ・・・・・のようなものをかんじたから――
 おれは鉄器それを、そっともどしてやった。

「なんだか面白おもしろそうなことに、なりつつありませんこと?」
 ガムラン代表だいひょうが、くぎみたいなかかとを打ち鳴らす。
 よく見ればうしろにひかえたニゲル青年せいねんは、ちいさな荷車にぐるまを引かされていた。
 矢鱈やたらおおきなかばん紙箱かみばこなん使つかうつもりなのか――
 おおきなかがみなんかまで、積まれている。
 まったく、ニゲルの野郎やろうは、なにをさせられてるんだぜ。

奇遇きぐうですわね、わたくしもそうかんがえていたところですのよ?」
 細身ほそみのドレスは竜胆りんどうはなおもわせる、落ち着いた配色いろ
 調理台ちょうりだいに寄りかかる、そのからだつきは引き締まっており――
 どんなドレスでも、華麗かれいに着こなすことだろう。
 そしてやはり、うしろにおとこ一人控ひとりひかえていた。
 かれ、フカフ村村長むらそんちょうが手にしているのは――
 れい四角しかく魔法具箱まほうぐばこが、ただひとつのみ。

「「「「「やばいね」」」」」
 ああ、今回こんかいばかりは、何処どこかから湧いた子供らがきどもの言うとおりだぜ!
 こいつぁ、やばいなんてもんじゃぁねぇ。
 ただでさえ、災厄の狂獣ミノたろうが出てきかねねぇっていう、一大事いちだいじに――
 この組み合わせ・・・・・だ。

 ふぉん♪
『>>要するに、一番出てきてほしいものと、一番出てきて欲しくないもの。それらは各人につき一つづつ存在しています。その思いの強さが重複し最大値を取った物が、あの卵の中から出てくると言うことと思われます』

 ヴォォゥン♪
『超上級鑑定>一番出てきてほしいものと、一番出てきて欲しくないもの。それらは各人につき一つづつ存在しています。その思いの強さが一番大きい物が、あの卵の中から出てくると思われます』

 ふぉん♪
『イオノ>アンケート形式わのねん♪ ウケケケッケケケケケッ!』
 ぱらららっ、ぱらららららっ――またほんめくってやがる。
 だからその料理本推レシピぼんおしは、一体何いったいなんなんでぇい?

 一番出いちばんでてきて欲しいものと、一番出いちばんでてきて欲しくないものなぁ。
 おもいがつよいものが出てくるってぇのわぁ、やべぇぜ。
 人間にんげん、どうしたって悪感情あくかんじょうに引っ張られちまわぁ!

「「そんなの――一人しか居ない・・・・・・・じゃないかぁ!?」」
 突然とつぜんさけぶ、お付きのおとこたち。

二人ふたりに増えたりしたら、どっちかなんてえらべないし――」
うれしいけど、とてもじゃないけど――」
「「――身が持たない!」」
 ニゲルと村長そんちょうの、そんなたましいさけびは――
 それぞれの思い人以外・・・・・人々ひとびとに――
 おおむ好意的こういてきとらえられた。

 ふぉん♪
『シガミー>少なくともミノタ、ミノ太郎が出てきて欲しい奴が、居ねぇだけでも大助かりだぜ』

 すっぽこ――ここここぉぉん♪
 おれのあたまうえに、てちりと降り立つ御神体ごしんたい
「出てきてほしいものぉーっ? そっんなのぉっ、惑星ヒースこのせかいで一番いちばんおいしいものにぃー、決まってる・・・・・じゃぁないのよさ

 ふぉん♪
『シガミー>まて、おいしいものだとぉう!?』
 さっきからずっと見てやがった、料理の本レシピぼん
 気になっては、いたのだ。

『>おいしいもの? まさかイオノファラー!?』
 女神御神体いおのはらを引っつかみ、そのつらをじっと見た。
『(º﹃ºじゅるり♪)』
 うつろな目。ソレはありし日の――最高さいこうめしに、おもいをはせているように見えた。

   §

「ニゲル! あのたまご模様もよう間違まちがいありませんわよねっ?」
 細身ほそみ豪奢ごうしゃけんを、こしに巻きなおす。

「ジューク! このたまごがら、アナタなら見極められる・・・・・・でしょう?」
 とげの付いた鉄棒まほうつえを、組み立てはじめる。

「「はっ、はぁいぃいぃっ! 間違まちがいないよ!」」
 遠巻とおまきに見つめる村人むらびとたちや、おれたちからの視線しせん一身いっしんに受ける――
 腰巾着こしぎんちゃく男性二名だんせいにめい

「ねぇどっちのひとが――」「身分違みぶんちがいのこい――」「えっ、どっちもなのっ!?」
「すでに尻に敷か――」「みゃにゃぎゃにゃぁー」「プークス
 などのこえが、飛び交う。


 〝一番出てきて欲しいものと、一番出てきて欲しくないもの〟
 〝そんなの――キミしかいない〟
 〝愛の形は人それぞれ/恋愛相談所所長 斧原イオノ〟

 などという銘文めいぶんが、ロットリンデ女神像めがみぞう建立記念碑こんりゅうきねんひ後日ごじつきざまれることとなり――
 連綿れんめんかたり継がれていくのだが――
 それはいまは、どうでも良いはなしである。

 かおを真っ赤にしたかれらは――
 それぞれ安物やすもの聖剣・・と、金貨・・に手を掛けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

魔法少女のなんでも屋

モブ乙
ファンタジー
魔法が使えるJC の不思議な部活のお話です

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

暴虎馮河伝

知己
ファンタジー
神仙と妖が棲まう世界「神州」。だがいつしか神や仙人はその姿を消し、人々は妖怪の驚異に怯えて生きていた。    とある田舎町で目つきと口と態度の悪い青年が、不思議な魅力を持った少女と運命的に出会い、物語が始まる。 ————王道中華風バトルファンタジーここに開幕!

処理中です...