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5:大森林観測村VSガムラン町

633:グランジ・ロコロ村、注意書きと石像と鏡

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「こんなひれもり満杯まんぱいになるこたぁ、ねぇたぁおもうがぁ――」
 あおかおをする、大申女ゲスロット村長ジューク
 そして女将おかみさんや村長四人組そんちょうよにんぐみまで、しぶつらをしはじめた。
 まゆつばをつけねぇといけねぇような、化けもの姿すがたを見せられたばかりだ。
 まんいちにも起こらん……とは言い切れん。
 ねんのため、一応いちおうやっとくか。

「おにぎりっ!」
 おれはおにぎりの、収納魔法具箱せなかに手を当て――ヴッ♪
 角材ぼうを取り出した。
 そいつを――「ちょっと、持ってろや」
 おにぎりに持たせ――シュカッカァンチィェエェイッ
 斬りむすぶみたいにして、小太刀こだちけずってとがらせる。

「チイィェイ、アハァン♪」
 おどろいた村人むらびと何人なんにんかが――
「ゥィヤハァァァァーッ♪」
 ――さけびながら逃げていった。

 おれは出来できた木のくいを持ち、『グランジ・ロコロ村へようこそ』と書かれた派手はでつくりの門構もんがまえをとおり過ぎ――
 おにぎりが化けた・・・境目さかいめ手前てまえまで、あるいて行く。

「なぁ、この木のよこつらに、この棒こいつを立ててもかまわねぇかぁ?」
 振りかえ村長ジューク村長どもよにんぐみに、おうかがいを立てた。

「そりゃぁぁぁぁー♪」
べつにっ♪」「かまわっ♪」
「ないけど――ぃやぁぁぁぁぁぁあぁっ♪」
 村長そんちょうどもが長髪ながかみを振りまわして、返事へんじをして――
「うん。かまわない……のじゃ?」
 村長ジュークが、くびかしげる。

 ズガァン――よこに生えた木に、くいを突き刺した。
 ガムラン温泉街おんせんがいつくるときにつちかった、阿吽あうん呼吸こきゅう健在けんざいで――
 指示さしずをしなくても、おにぎりが平手ひらてで、ぱこぉんとつよく打ち込んでくれた。

「よし良いぞ。じゃぁ、いつものいたぺら出せや」
 おにぎりに手を差し出すと――ヴッ♪
 自分おにぎりとか、お猫さまロォグ猫共用語ねこご翻訳やくする木板いたを、パタンと取り出した。
 そいつを受け取りくいに、ぶら下げる。

文面ぶんめんは――」
 ふぉん♪
『この村に入るべからず。
 ※現在、森の主により退村規制されています。
 大森林観測村②グランジ・ロコロ村 村長ズ』
 こんなもんだろ。

「これでは足りませんわね、ジューク?」
 てのひらを突き出す、大申おおざるゲスロットリンデ。
「そうだね、ロットリンデ」
 おなじくてのひらを突き出す、村長そんちょうジューク。
 おれが建てた看板いたぺraに、異をとなえるフカフ村勢むらぜい

「どういうこったぜ――――?」
「みゃにゃぎゃぁー
 よこ小首こpくびかしげる、おにぎり。
 そうだそうだ。
 なんて言ってるかはわからんが――
 もっと言ってやれ。

「ですから、こんな入りぐちが、あと五カ所有ごかしょあるので、看板かんばんが足りませんともうしているのですわ?」
 なんだぜ、それならそうとはやく言えや。

 なんでも、はなしを聞けばロコロむらには、全部ぜんぶ六カ所ろっかしょもの出入り口でいりぐちがあり――
 そのつるで編んだ坂道さかみちには、魔物まものもよくのぼってくるそうだ。

   §

「まったくもうっ! 当分とうぶんあいだむらそとに出られませんでしてよ!」
 ひたいを押さえる、悪逆令嬢ゲスロット

 のこりの看板かんばんをぶら下げ、魔物まものよけのさくなんかも取り付けたから――
 そうそう満杯まんぱいには、ならなくなったとおもう。

 ふぉん♪
『ホシガミー>問題は、まるで解決していませんけれども? プークス♪』
 やかましいが、そのとおりだぜ。

「まえにもおなじことを、フカフ村でされた・・・・・・・・ことがあったんだけど――あったのじゃがぁ、ふぉっふぉっふぉっ♪」
 村長ジューク大申女おおざるおんなをなだめようと、近寄ちかよっていく。
 こしに下げた頭陀袋ずだぶくろが、ガランと揺れた。
 なかには、あの魔法具箱まほうぐばこ――魔法自販機まほうじはんきとやらがはいってるのだろう。

「あのときわぁ、三ヶ月程掛さんかげつほどかかかったんだったかしらぁ……そとに出られるようになるまで?」
 いつの間にかコッヘル商会しょうかい商会長しょうかいちょう|(手練てだれ)が悪逆令嬢ゲスロットかたわらに立ち、ゆび三本数さんぼんかぞえた。
「そのときわたしは、央都おうとに詰めてたから――くわしいことは、なにも知らないさねぇ?」
 商会長しょうかいちょうむすめ魔導騎士団きさじしょくどう総大将のおかみ人類最強じんるいさいきょう)が、腕組うでぐみをしてくびかたむける。

面倒めんどうなことに、なりやがったぜ」
 三ヶ月みつき足止あしどめされたら、いろいろとまずことになるぞ。

 ガシガシとあたまを掻いてたら――「こら、小猿こざるっ! 折角せっかくつややかなかみが、いたむでしょうがっ!」
 悪逆令嬢ゲスロットうでをつかまれ、おこられた――はえぇ!
 つかまれるまで、ちかづかれたことに気づかなかったぞ!?
 にせ山道やまみちで、やり合ったときにもおもったが――
 本当ほんとうはえぇ。

「まったくです。いつも注意ちゅういしているのですけれど――」
 リオレイニアまで、おれのうでをつかんで来た。
 こっちもはえぇ――っていうかまた、サキラテ家の隠形術おんぎょうじゅつ使つかわれた!

 こいつらぁ、気配けはいころかたが――しのびのものと変わらねぇ!
 気をつけねぇと起きたまま正面から・・・・・・・・・――寝首ねくびを掻かれそうだぜ!

「「お返事へんじは――?」」
 両手りょうてたかく持ち上げられた、おれは――
「へ、へぇ――以後いご、気を付ける所存しょぞんでござるわよぜ」
 うな垂れて、そう言うしかなかった。

「「いまdれか、〝ござる〟って言ったぁ!?」」
 子供らがきども地図男おっさんを引き連れた、子供らレイダとビビビーが駆け込んできた。

   §

もりぬし森域結界なんたらやぶ方法ほうほうわぁ、ねぇのかぁ――!?」
 女神像めがみぞうが無いから――とびらつくれん。つまり逃げられん。

多分たぶん……有りますけれど、見ても面白おもしろものではありませんよ?」
 その目がジューク村長そんちょうを見た。
「はぁ? 有んのかよっ!?」
 おれも村長そんちょうを見ると――そのあたまたてうごいた。

「たぶん……向こうだとおもうよ」
「そうね……行ってみましょう」
 スッタスタとあるいて行ってしまう、二人ふたり

 おれとリオと茅野姫ほしがみとロォグ、そして子供こどもらとおっさんは――
 あわてて、そのあとを追いかけた。

   §

 つるおおわれた、木のうえにある地面じめん
 木がまばららで開けたところに、確かに有った・・・・・・

 ぼうかまてんを衝く、精悍せいかん面構つらがまえ――

「やっぱり此処ここわぁ、大申おおざるむらっ!?」
 地面じめんから生えていたのは――
 細身ほそみ小袖こそでに身をつつみ、歯をむき出しにした――
 いかつい大申おおざるような……魔物まもの姿すがたをした石像せきぞうか?

 いや、かろうじてからだつきが、おんならしいか?
 いやいやまてまて……このドレスに……手にしたぼうに付いたとげかたち

「こりゃ、おまえさまかぁっ!? マジ・・大申女おおざるおんなじゃぁねぇーかぁ!」
 おれは、此処ここぞとばかりに悪逆令嬢ゲスロットリンデにらみつけ、ゆびを指してやっ――
 ぼごわぁぁん――――ぷすぷすぷすん♪

「どわぁれがぁ、大猿女おおざるおんなですのっ。燃やしますわよっ?」
 ぼごごぅわぁぁっ――――♪
 対魔王結界たいまおうけっかい煉獄ゲヘナねつにも耐えた、おれの金糸しんしかみが――
 一瞬いっしゅん、燃え上がった!

「あっちちっ!? けっほけほっ、なんてことしやがる!? 燃やしてから・・・・・・ぁ、言うんじゃぁねぇやぁい!」
 かみの焦げたにおいにつつまれた。
 しかも自分じぶんかみのだ。
 到底とうてい心地ここちの良いものではない。

「ぶふふっ!?」
 リオレイニアが突然とつぜん折れ曲がった・・・・・・
「なんだぜ? どうしたんだぜ!?」
 あわてて駆け寄るおれを見る、彼女リオひとみ見開みひらかれる!

「ぐぴゃ――ごごん!」
 あたま地面じめんに打ち付け、微動びどうだにしなくなった。
 いや、かたがブルブルしてる?
 まさか雷魔法いかづちを、はなちやがったかぁっ!

「やい、おまえさまが悪虐非道あくぎゃくひどう吸血鬼きゅうけつきとやらでも、これはねぇんじゃねぇのかぁ?」
 ぐるるるん――――ジャッリィィンッ♪
 錫杖しゃくじょうかまえ、くずれ落ちたパーティーメンバーのまえに立ちふさがった!

 ん? なんかあたまがふらつくぜ?
 おれも魔法いかづちを、食らっていたのかも知れねぇ!

 ひゅひゅひゅひゅひゅひゅひゅうひゅひゅんっ――――
 ゴガァン♪
 錫杖しゃくじょう地面じめん太蔓ふとづるの当たりに、打ち付ける。
 ほそつるを打ち付けたら、流石さすが地面じめんやぶれかねないからな。
 しかし、あたまおもいというか、うごきに遅れて揺さぶられてる・・・・・・・・・・

「「「あはははっ♪」」」
「「「「ぷぐひひっ♪」」」」
 居合いあわせたやつらが、呑気のんきわらい出した!?

「な、なんだぜ!?」
 おれはたおれたままのリオを、まもるべく――
 じりじりと後退あとじさる――チャリン♪
 まるで銀貨ぎんか鉄箱てつはこに、投げ入れたかのようなおとがした。

随分ずいぶんとファンキーになったね……なったものじゃなぁ♪」
 フカフ村村長むらそんちょうさまが、とんと置いたのはかがみ

 しかも、猪蟹屋うちのみせで売ってる相当立派そうとうりっぱなのとおなじくらい、よく見えた・・・・・

 そのわくなか錫杖しゃくじょうかまえ、おれを見つめているのは――
 あたまの毛が、チリチリモサモサになった……おれだった。
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