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5:大森林観測村VSガムラン町
627:大森林探索行、成体ファローモの生態その3
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ぽこぽこぽこここんっ――――ガシャズザッ!
頭の中の、机の上。
並べられたのは、小さな木や大きな木。
そして切り立つ渓谷や岩場。
此方には沼地や火山に、滝や湖まであるな。
五百乃大角や迅雷の映し絵とは、また別の感じの――地図。
双六の駒みてぇなので、形作られたのは――大森林だった。
「ここがフカフ村だとするとぉ……相当な森の奥に生えたぁ、このどでかい太木ぃおぉー斬り倒しゃぁ良いのかぁ?」
おれの小首が傾く。
「まぁ概ね、そのような……もぐもぐ。おいしい♡」
額から小枝を生やした、珍妙な男の声をした女。
〝考え〟は、おれの頭の中に居座り――
饅頭のお代わりを、ぺろりと平らげた。
大森林の外れにあるフカフ村からは、相当奥。
大森林の真ん中から流れている川を、数本のとんでもなく大きな木が、せき止めているようだった。
ひのふのみ――結構、生えてやがるなぁ。
「その木ってのわぁ……たぶん、巨木のこったろぉ? おれ一人じゃ、厳しいかも知れんぞ?」
ネネルド村を襲った巨木・木龍。
あれ一本で沼地に、大きな湖を作り出しやがったからな。
木の根の周りに水を溜め込むスキルを持った、魔物の木。
対魔王結界から吹き出す程の大火を生み出し、その熱を使い――
一晩で成長するスキルも持った、厄介な木。
そして、央都建国の礎となった龍――そのものでもある。
幸いなことに、その龍……木龍を倒した奴らが、ここに居る。
少女タターと鬼娘オルコトリアだ。
タターが使う長銃には、五百乃大角が作る丸が要るから――
五百乃大角が動かん今、本当は戦えんのだが――
魔法具作りの妖精、お猫さまが居てくれるので――
いやまて、あの草を枯らす丸は……五百乃大角にしか、作れんのだったか?
それでも、生えちまった巨木を切れってことなら――
女将さんとおれと……ニゲルを連れてくりゃいけるか?
せめてリカルルかルリーロの、どっちかが居てくれりゃぁ――
狐火でスパンと、切り倒してくれそうだが。
「そうですか? 私の頭突きでも簡単に倒せる程度ですので、ご心配なく」
「じゃぁ、お前さんが切り倒しゃぁ良いじゃんかぁ?」
「いえ、ソレには及びません。お構いなく、ご存分にどうぞ」
また話が、ひん曲がってきたぞ?
頭の中の机の上に、空になった紙箱が置かれている。
空の箱を弄ってるから――ヴッ♪
駄目元で饅頭を出してみたら、ちゃんと出た。
此方は甘くねぇ味だが、構うまい。
「ほら娘よ、あなたも頂きなさい」
男の声の女が、そんなことを言うと――
「ぎにゅるりぃぃぃぃ?」
頬を膨らませた若い女が、傍らに立っていた。
「うわっ!? どっから出やがった!?」
おれの手先を斬り飛ばした、あいつだ!
こうしてみると、大人びて見える。
といっても、そんな気がしているだけだが――
その片目は、まだ『Θ』のままな……気がするぞ。
「ありゃっ!? 悪ぃ、この箱わぁ、空じゃねぇか!」
おれは、何度か収納魔法具を使ってみたが――
何も出て来なくなった。
「随分と大きな寝言で……いえまさか、この様子――アレが、来ているのですの?」
「うん。なんかそうみたいだよ、ロットリンデ」
瞼の外から、そんな声が聞こえる。
フカフ村に置いてきたはずの大申女が、追いかけて来たのか?
そういやさっき、黒板を出してやった……っけか?
「仕方ありませんわね。お供え用に持っ来て、良かったですわ――」
がさごそと、何かを探る音。
「ぎゅぎゅぅ――――!?」
空箱を渡された二股角の娘の目が、つり上がっていく。
おれはまた、饅頭を取り出そうと――ヴッ♪
「何だぜこりゃ? こいつぁ、さっき話に出た、高級な菓子じゃんか!?」
ふぉん♪
『シガミー>おにぎり、居るのか?』
一行表示には返事がねぇが――
何にしても、ありがてぇ。
おれはその菓子箱を、開いて見た。
§
「こんな辺鄙な森の中で、央都の菓子ってのわぁ、どういうことだぜ?」
目の前には、リカルルが執心してた高級菓子店の箱の――気配。
中身はちゃんと入っていて、手に取り貪る森の主の母娘たちの――気配。
「どういうことも何も、この菓子店は私のレシピを元に宮廷魔……商会長が店舗化したものですわ?」
この声、やっぱり……「大申女ゲスロットだなっ!?」
「だれが、ゲスロットかっ!」
ゴチン――痛ぇっ!
あまりの痛さで、おれの目が開いた!
頭の中の、机の上。
並べられたのは、小さな木や大きな木。
そして切り立つ渓谷や岩場。
此方には沼地や火山に、滝や湖まであるな。
五百乃大角や迅雷の映し絵とは、また別の感じの――地図。
双六の駒みてぇなので、形作られたのは――大森林だった。
「ここがフカフ村だとするとぉ……相当な森の奥に生えたぁ、このどでかい太木ぃおぉー斬り倒しゃぁ良いのかぁ?」
おれの小首が傾く。
「まぁ概ね、そのような……もぐもぐ。おいしい♡」
額から小枝を生やした、珍妙な男の声をした女。
〝考え〟は、おれの頭の中に居座り――
饅頭のお代わりを、ぺろりと平らげた。
大森林の外れにあるフカフ村からは、相当奥。
大森林の真ん中から流れている川を、数本のとんでもなく大きな木が、せき止めているようだった。
ひのふのみ――結構、生えてやがるなぁ。
「その木ってのわぁ……たぶん、巨木のこったろぉ? おれ一人じゃ、厳しいかも知れんぞ?」
ネネルド村を襲った巨木・木龍。
あれ一本で沼地に、大きな湖を作り出しやがったからな。
木の根の周りに水を溜め込むスキルを持った、魔物の木。
対魔王結界から吹き出す程の大火を生み出し、その熱を使い――
一晩で成長するスキルも持った、厄介な木。
そして、央都建国の礎となった龍――そのものでもある。
幸いなことに、その龍……木龍を倒した奴らが、ここに居る。
少女タターと鬼娘オルコトリアだ。
タターが使う長銃には、五百乃大角が作る丸が要るから――
五百乃大角が動かん今、本当は戦えんのだが――
魔法具作りの妖精、お猫さまが居てくれるので――
いやまて、あの草を枯らす丸は……五百乃大角にしか、作れんのだったか?
それでも、生えちまった巨木を切れってことなら――
女将さんとおれと……ニゲルを連れてくりゃいけるか?
せめてリカルルかルリーロの、どっちかが居てくれりゃぁ――
狐火でスパンと、切り倒してくれそうだが。
「そうですか? 私の頭突きでも簡単に倒せる程度ですので、ご心配なく」
「じゃぁ、お前さんが切り倒しゃぁ良いじゃんかぁ?」
「いえ、ソレには及びません。お構いなく、ご存分にどうぞ」
また話が、ひん曲がってきたぞ?
頭の中の机の上に、空になった紙箱が置かれている。
空の箱を弄ってるから――ヴッ♪
駄目元で饅頭を出してみたら、ちゃんと出た。
此方は甘くねぇ味だが、構うまい。
「ほら娘よ、あなたも頂きなさい」
男の声の女が、そんなことを言うと――
「ぎにゅるりぃぃぃぃ?」
頬を膨らませた若い女が、傍らに立っていた。
「うわっ!? どっから出やがった!?」
おれの手先を斬り飛ばした、あいつだ!
こうしてみると、大人びて見える。
といっても、そんな気がしているだけだが――
その片目は、まだ『Θ』のままな……気がするぞ。
「ありゃっ!? 悪ぃ、この箱わぁ、空じゃねぇか!」
おれは、何度か収納魔法具を使ってみたが――
何も出て来なくなった。
「随分と大きな寝言で……いえまさか、この様子――アレが、来ているのですの?」
「うん。なんかそうみたいだよ、ロットリンデ」
瞼の外から、そんな声が聞こえる。
フカフ村に置いてきたはずの大申女が、追いかけて来たのか?
そういやさっき、黒板を出してやった……っけか?
「仕方ありませんわね。お供え用に持っ来て、良かったですわ――」
がさごそと、何かを探る音。
「ぎゅぎゅぅ――――!?」
空箱を渡された二股角の娘の目が、つり上がっていく。
おれはまた、饅頭を取り出そうと――ヴッ♪
「何だぜこりゃ? こいつぁ、さっき話に出た、高級な菓子じゃんか!?」
ふぉん♪
『シガミー>おにぎり、居るのか?』
一行表示には返事がねぇが――
何にしても、ありがてぇ。
おれはその菓子箱を、開いて見た。
§
「こんな辺鄙な森の中で、央都の菓子ってのわぁ、どういうことだぜ?」
目の前には、リカルルが執心してた高級菓子店の箱の――気配。
中身はちゃんと入っていて、手に取り貪る森の主の母娘たちの――気配。
「どういうことも何も、この菓子店は私のレシピを元に宮廷魔……商会長が店舗化したものですわ?」
この声、やっぱり……「大申女ゲスロットだなっ!?」
「だれが、ゲスロットかっ!」
ゴチン――痛ぇっ!
あまりの痛さで、おれの目が開いた!
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