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5:大森林観測村VSガムラン町

613:大森林探索行、渓谷へ

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「(ははははっ♪)」
 かくれモテおんなうわさされる彼女かのじょの、太股ふとももかかえてはしる。
 今生こんじょう二度にどは無いだろうなぁ。
 そんなうわついた心持こころもちが――

「――――! ――――!」
 聞こえん。
 ふぉん♪
『リオレイニア>こらっ、止まりなさい! もうっ、全部はだけちゃ)」
 ごちごちごちごちんっ!

 ――まるでいたみを、かんじさせなかった。

 金色きん冒険者ぼうけんしゃカードを持つ冒険者ぼうけんしゃなら、やろうとおもえばかてぇ木の実を素手すでで割れないこともない。
 ましてや彼女リオは、辺境伯へんきょうはくコントゥル家につかえる――凄腕すごうで侍女メイドだ。
 おれのあたまくらい割れてもおかしくねぇところだが――
 それはまぁ、加減かげんをしてくれて――――ごちごちごちごちんっ!
 ごちごちごちごちごちごちごちごちんっ――――!

 流石さすがいてぇ――やめんかぁ!
 女将おかみさんみたいな、あたまかぶれる鉄鍋なべを、おれも工房長ノヴァドつくってもらうかな。

――いいから――――渓谷は見えたか?」
 ぐらぐら揺れる大地だいち翻弄ほんろうされる、木々きぎ
 ニゲルみてぇに木のうえを行けりゃ、見通みとおしは良いが――
 おれ程度ていどはやさでうえを行くと、足場が無くて・・・・・・かえって時間じかんが掛かっちまう。

 ふぉん♪
『シガミー>渓谷は見えたか?』
 ひとの目で追えねぇくらいはやさで、うっそうとしげもりなかすすんでいるのだ。
 木のえだ彼女リオが、ぶつからないように身をかがめつつはしるのは、結構大変けっこうたいへんで――
 さき見通みとおしは、目線めせんたかやつにやってもらう。

 ながれていく、もり湿しめった空気くうき
 まえを行くはずのシシガニャンどもの殿しんがりは、まだ見えない。

「(――!)」
 ふぉん♪
『リオレイニア>立ち止まったら、お話がありますので覚えておいて下さい!』
 ふぉん♪
『シガミー>おう、合切承知!』
 給仕服きゅうじふくすそが、はだけるのもかまわずに――
 リオが身を起こした。

 ふぉん♪
『リオレイニア>ガムラン町ギルド支部正面、鍛冶工房の方角。大地に亀裂が見えました』
 彼女かのじょが掛けた眼鏡めがねは――〝誰彼構わず、たらし込む魔眼まがん〟を押さえ込むための特別製とくべつせいだ。
 そして遠目ズーム夜目ナイトビジョンがきく、魔法具まほうぐでもある。

 ガムランちょうの――ギルド支部正面しぶしょうめんから見て――鍛冶工房かじこうぼうがある方向ほうこう
 つまり〝とら方角ほうがく〟か。
 シシガニャンどもは、正面しょうめんに居るとおもってたが――結構けっこうずれてやがったな。

 おれは向きを変えるついでに――たかい木のみきを蹴り上がる。
「――!?」
 一気いっきあたりがひらけた。
 目のまえひろがるのは、さき大陸壊滅たいりくかいめつのような――うねる大地だいち
 うねるかたむきに根が耐えられなかったのか大木たいぼく次々つぎつぎと、おとも立てずにたおれていく。

――居たぜ!」
 亀裂きれつの向こう。
 曲がりくねる渓谷けいこくを――
 その断崖絶壁だんがいぜっぺきを――
 一直線いっちょくせんのぼっていく――
 露草色つゆくさいろと、躑躅色つつじいろ

 ふぉん♪
『シガミー>結構速え。迅雷と大杖を両方使ったら、少し跳べたりしねえか?』
 ふぉん♪
『リオレイニア>浮かぶことは可能ですが、マナ欠乏時に制動が掛かるため、速度の維持は難しいです』

 ふぉん♪
『シガミー>ちっ、使えねえ!』
 ふぉん♪
『リオレイニア>なんですって!?』
 ごちん♪
 ふぉん♪
『シガミー>違う違う、使えねぇのは迅雷のことだぜ!』
 いてぇな!
 リカルルとルリーロだけじゃなくて、リオまで――
 おれのあたま小突こづくのに、躊躇ちゅうちょが無くなっちまったぜ。

「――そんなことを言うなら、轟雷ゴウライを着て飛べないのですか――――!?」
「――それで落ちたときに、手に持ったリオをつぶしちまいかねん!」
 あ、こえが出た。やべぇ、また引きはなされた!

 ん?
 なんだかみちさきに、もり自然しぜんには似つかわしくない――
 派手はでいろのが、落ちてやがる・・・・・・

「こいつぁ――おれの〝11ばん〟だぜ」
 行きだおれていたのは、最後尾さいこうびはしっていたはずの――特撃型改とくげきがたかいの11ばん
 たぶん小石こいしにでもあしを取られて、すっころび――そのまま、置いて行かれたんだろう。

 おれは立ち止まる。
 おれの腕時計うでどけいはいっているのは――
 今着いまきてる給仕服せいふくと――
 轟雷ごうらいと――
 強化服きょうかふく10号改ごうかいだ。

   §

 シュッゴオッバァァァァァァッ――――!!
 はえはえぇ!
「ヴュザッ――きゃぁぁぁぁっ――――!?」
 轟雷ごうらいの背で爆ぜる大筒スラスター
 そのいきお自体じたいは、本気ほんき魔法杖つえを駆る彼女かのじょと、そこまでは変わらんだろぅ。
 それでも自分じぶんで飛ぶのとは、ちがうらしぃ。

 ヴュパ――『((°□ °))』
 強化服10号改シシガニャン中の彼女は・・・・・大口おおぐちを開けふるえている。
 まぁ、じっとしてくれてるなら、持ちやすくて良い。

 よぉーし♪
 さっき拾った特撃型改とくげきがたかい11ばんを、簡単かんたんに着られるかんじに仕立したててみたが――
 いまのところ、上手うまく着られているぞ。

 やすつくりのほうを、リオに着せるわけにはいかねぇから――本式ほんしきほうを着せてやった。
 ヴュゥワッ――ジザザッ♪
 シシガニャンのあたまつくりは、そこそこ複雑ふくざつで――おれ一人ひとりじゃ、完全かんぜんには再現出来さいげんできなかったが――
 轟雷ごうらいさきに着ていたおかげで、れい演算単位すげぇとんち肩代かたがわりしてくれた。

 耳栓みみせんよっつと、分解ぶんかいして、〝11ばん〟を着られるようにつくなおし――
 轟雷ゴウライを脱いで、特撃型改とくげきがたかい10ごうも脱いで――
 特撃型改とくげきがたかい11ばんを着て、最後さいご轟雷ごうらいを着た。

 はっきり言って、超絶面倒ちょうぜつめんどうだったが――いたかたねぇ。
 五百乃大角いおのはら迅雷ジンライ直ったら・・・・本格的ほんかくてきにシシガニャンどもをつく行程こうてい見直みなおしてやる。
 目標もくひょうとしては腕輪うでわに絶えず10ぴきの、シシガニャンを持てるくらいつくりたい。

▼▼▼▼▼ピピピピピッ▼▼▼▼▼ピピピピピッ▼▼▼▼▼ピピピピピッ▼▼▼▼▼ピピピピピッ――――♪』
 うるせぇ。
 したを見れば、断崖絶壁だんがいぜっぺきを駆けていく、ねこ魔物風まものふうどもが見えてきた。

「あーあーっ? よぉーし。強化服きょうかふく中なら・・・、こうしてはなせるぜ♪」
 こえ物音ものおとみみに届くまえに消されちまうのは、ことほか――厄介やっかいだってことが、わかった。

「ザザザッ――ふぅ、本当ほんとうですね♪」
 よし。服越ふくごしに、ちゃんとこえも聞こえる――ってことはだ。
 いまリオレイニアは、魔法まほう使つかえるってことだ。
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