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5:大森林観測村VSガムラン町

609:大森林探索行、やせいの尋ね人があらわれた

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 みみいたくなるほどの、静寂せいじゃく世界せかい
 ひか双眸そうぼう――長銃ひなわを持つ少女タターひとみが、チカチカとひかってやがるぜ。

 ふぉん♪
『タター・ネネルド LV:25
 盗賊★★★ /早く動くための何たら/息を潜める何たら/罠に関する何たら/龍殺し』
 一行表示ティッカーおなじやりかたで、おれは画面がめんなかはしり書きをした。
 うろおぼえだが、タターの冒険者ぼうけんしゃカードは――こんなだった気がする。

 このへん全部ぜんぶ迅雷ジンライまかせだったからな。
 元々得意もともととくいだった覚えも・・・にぶくなっちまってる。
 迅雷ジンライ使つかえねぇだけで、ちょうマジ・・こまらぁ。

 ふぉん♪
『追加スキル/風読み/アダマン何たら/魔法具操作術』
 そして追加ついかのスキルは――こんなだった気が。

 『風読み』で目がひかることもないだろ……てなると『魔法具操作術』か。
 よるくらがりでも無けりゃ、そう目立めだつこともねぇーが。
 あとでなにさくかんがえるから、TODOリストやることに――

 (わたくし迅雷ジンライは、現在停止中げんざいていしちゅうです)
 そうだったぜ……阿呆あほうかおれぁ。
 にせのおまえあたまをよぎるから、ついわすれちまうぜ!

――全員――無事かぁ?
 聞こえぬこえを掛けるも、当然とうぜん返事へんじはねぇ!

 のそりと身を起こす、タターをかかえた特撃型改シシガニャン
 それは手足てあし倍加ばいかさせ、はやつよく――研ぎ澄まされていた。
 って、そんなごつい筋肉からだをしてるわけがあるかぁ!

 それは強化服シシガニャンじゃ無くて、オルコトリアだった!
 咄嗟とっさにタターをかかえて火縄ひなわを撃つ修行しゅぎょうの、成果せいか発揮はっきした……んだろぅなぁ。
 正直しょうじきたすかったぜ。

 そして鬼の娘オルコトリアかたには――もうひとつの、ひか双眸そうぼう
「――、――♪」
 しがみ付くお猫さまロォグが、なにか言ってやがる。
 なるほど、丸込たまごやくか。
 まったく、いくら・・・たまを撃ちやがったんだぜよぉ。

 (ごぉ――――)
 きゅうかぜいだ。

「にぎゅるりぃぃ――――?」
 はっきりとしたうなごえに、しんぞぷが跳びはねた。

 とおくから聞こえた、そのこえは――
 すくなくとも、ひとこえじゃなかった。

 ふぉん♪
『リオレイニア>どうやら今度は魔物じゃ無くて、ファロコさんのようですね』
 そうだな。静寂せいじゃくを打ちやぶれるのは――
 それ・・はなったやつ、くらいだろうぜ。

――うぬぅ!?」
 おれはめつ太刀たちはなつときの、境地きょうちにも似た――つよ思い・・に捕らわれた。
 それは〝あせり〟でしかなく――冷えたあせが、からだつたって落ちていく。
 どうにも未熟みじゅくさを痛感つうかんするぜ、まったくよぉ。

「「――!?」」
「「「――、――!」」」
「「「「――――!!!」」」」
 全員みんなあたりを、警戒けいかいしだす。

 ふぉん♪
『ホシガミー>シガミーさん。このエリア全体が電波無響室と化していますわ?』
 わからん。
 ふぉん♪
『リオレイニア>これは詠唱暗室装置と同じ環境を作り出しているようです。ですが音声も遮蔽されていますので、生活魔法すら使えなくなりました!』
 はぁ?
 そうしたら……リオレイニアの魔法まほうが、全部使ぜんぶつかえねぇだろぅが?

 ふぉん♪
『シガミー>そいつは、やべえじゃんか!』
 どうする、むらもどるしかねぇが――

「――――ぎゅぎるるるりぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
 うなごえは〝一直線いっちょくせんつらなる特撃型改おれたち〟を、逃がさないよう・・・・・・・――
「ぎゅぎるるるりぃぃぃぃぃぃぃぃっ――――!」
 とんでもねぇはやさで、まわり込んできた!

 此処ここたたかうしかねぇか?
 この静寂せいじゃく使つかわれりゃ、どこに居てもおなじことだぜ。

 魔法まほう高等魔術こうとぷまじゅつたよらずとも、全力ぜんりょくたたかえる――
 ニゲル青年せいねんを置いて来ちまったのは、失敗しっぱいしたかもしれねぇ。

「コラ、ジューク! ヤセイカシテルジャナイカ! ファロコヲヒトリデソトニダシタネ?」
 なんだこの片言かたこと。すぐちかくから聞こえた。
 二股角の娘ファロコとやらこえじゃねぇー。
 おれはメイドふくうえから付けた手甲てっこうを、――ガガァァン!と打ち合わせた!
 火花ひばなが散ったが、おとは聞こえなかった。

 どうなってる――――?
 特撃型11番シシガニャンあたまのぼると――

 おなじく5ばんあたまうえに立つ、女将おかみさんの姿すがたが見えた。
 あたまに巻かれている頭巾ずきんが取りはらわれ、そのかみが――
 まるでみずなかのように持ち上がり、ふわふわとただよっている。

――女将さん! ――――何で声が聞こえる!?」
 返事へんじはねぇ!

 女将おかみさんのつまさきからあたま天辺てっぺんまで、無数むすう魔法まほう神髄しんずい――
 ひかりすじで、おおわれてやがる!
 (オルコトリアの金剛力こんごうりきが、血を媒介とする・・・・・・・なら――おそらく)
 ああ、あの文様もんよう活力マナ発露はつろ――古代魔法こだいまほう呼び水・・・にしてやがる!

 ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォオヴォヴォヴォッ――パルゥルルルルルルルッ♪
 ボバボーンなからだ節々ふしぶしたいして展開されたソレ・・・・・・・は――
 彼女おかみさん全身ぜんしんを、かがやかせ――――フッ!

 おとも無く姿すがたを消す、女将おかみさん。
 (ゴゴゴォォォンッ――――!)
 からだしんつらぬほど衝撃ふるえが、草履ぞうり足裏うらから這い上がってくる・・・・・・・・
 まるで金堂こんどうきょうを読んだときの、くちのどつたわる――おも震え・・だぜ!

 (バリバリバリリィッ――――ギャリギャリギャリンッ!)
 たかい木のうえかみなりが落ち、火花ひばなが散った。
 女将おかみさんと、もう一人ひとり
 背後うしろから飛んできた、でかい木さじを――
 見もせず蹴り払う・・・・人影ひとかげ

 そのあたまには、鬼族オーガのような雷光らいこう
 片角かたつのほとばしらせているのは、つよひかり

 ふぉん♪
『リオレイニア>シガミー、見て下さい。足が蹄になっています』
 リオの耳栓一体型みみせんいったいがた眼鏡めがねは、遠くを見通せる・・・・・・・
 ヴュゥゥゥッ――♪
 自分じぶんが見ている映像ものを、此方こっち画面モニタおくって寄越よこした。
 〝白狐しろぎつねめん〟の写し・・を、もう完全かんぜん使いこなして・・・・・・やがるぜ。

 ふぉん♪
『ルガーサイト改【金剛相】
 防御力310。魔術的特性の構成質量をキャンセルする。
 装備した者の眼光を抑制すると同時に、
 魔術構文の概算化による詠唱時間短縮。
 追加機能/使用者の好みに形状変化可能』

 こっちは記録ブクマを取っておいたからか、ちゃんと表示ひょうじされた。
 これに書かれてはいねぇが、おれや迅雷ジンライが使う――
 動体検知むしのしらせ暗視よめが利く、便利べんり代物しろものだ。

 ふぉん♪
『ホシガミー>あら、かわいらしい。足は蹄になっているようですね』
 画面がめんうつった足先あしさきには、フサフサした毛が生え――
 たしかに、それはうまのようだったが――

 ふぉん♪
『シガミー>かわいいだとお!? 立って歩く馬わぁ、ミノタゥ、ミノ太郎を呼びそうで怖え!』
 (あれ? シガミーともあろうものが、びびってんの? ねぇ、びびってんのぉ――ウッケケケッケッ♪)
 あー。とうとう五百乃大角いおのはら幻聴にせのこえまで、聞こえてきやがったぜ!

 ふぉん♪
『ホシガミー>ミノ太郎さんは馬と同じ〝奇蹄類〟です。そしてファロコさんは、〝偶蹄目〟ですので、羊や豚と同じです。蹄の間も空いているので、生息圏がまるで違います』
 わからんし――ミノ太郎たろうわぁ星神ほしがみのぉ半身はんしん片割れ・・・みたいなもんだろうが!

 けどその手は、普通ふつうひとのそれだった。
 魔物まものよりは、人の方・・・ちかなりをしている。
 女将おかみさんも負けじと、まえに大講堂だいこうどうで見た――小剣しょうけんみたいな短刀たんとうを抜いた!

「コラッ! サッサトショウキニ、オモドリヨ!」
 ヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリパリリィィィィィィィィッ――――!!
 ほとばしる――雷光ひかり
 画面がめんなか女将おかみさんのからだに沿って、回転かいてんする古代魔法こだいまほう

「ゴワルルゥ、モヴヴォォォォォォーーーーゥ!」
 いなな細身ほそみの――二股娘ファロコ

 彼女かのじょが〝ファロコ〟と呼ばれた、尋ね人チラシぬしだ。
 つの小剣たんとうはじかれた、片角かたつの魔物まものむすめが――
 目のまえに、落ちてきた!

ーーー
奇蹄類/蹄がひとつ。馬、シマウマ、ロバなど。ウマ科・サイ科・バク科。
偶蹄目/蹄が分かれている。ウシ、カバ、キリン、シカ、イノシシ、ブタ。ラクダ、リャマなどだけで無くクジラも含まれる。イノシシ亜目、ラクダ亜目、鯨反芻亜目。
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