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5:大森林観測村VSガムラン町

593:大森林境界、破戒僧シガミー(メイド?)VS悪逆令嬢ロットリンデ(吸血鬼?)

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 すそなが細身ほそみのドレス。
 それがまくれ上がるほどに、ひらかれていく――
 綺麗きれいおんな太股ふともも
 カァンと踏まれた平石ひらいしが、バガンと割れ――
 ぼががんと、はじけ飛ぶ。

 まさかそのとがったかかとの、ぼうささえわぁ――
 魔法杖まほうつえじゃ、ねぇだろうなぁ!?
 素手すでのミスロット・リンデが、さらに歩をすすめると――
 ばっがぁぁぁぁん、ぼぼごごぉぉぉぉんっ♪
 地を爆発ばくはつつよまり――垂直すいちょくに突き刺さっていた、鉄棒てつぼうが吹き飛ぶ!

「お行儀ぎょうぎわりぃぜ? 大森林だいしんりん領主あるじさ――ま――よ――ぉ――!」
 はじけ飛ぶ地面じめん小石こいしや木くずが、空中ちゅうに止まった。

 くるんくるん――くる――る――ん――――ぱ――し――りっ!
 落ちてきた魔法杖まほうつえを、うしろ手に受け取るさまも――ぴたり。
 ミスロット・リンデのうごきが止まった。

 こりゃ念話ねんわなんだっけか……たしか〝思考加速しこうかそく〟とか言うやつ――
 かとおもったが、迅雷ジンライうつつを抜かして止まってる・・・・・以上いじょう、そうじゃねぇ。
 悪鬼羅刹あっきらせつと呼ばれた、おれが日の本いくさつちかった――いつものやつだ。
 言ってみりゃ、せいへの執着しゅうちゃくそのもの。
 仏道ぶつどう帰依きえした身じゃ――皆目かいもく面目めんぼくのねぇはなしで。

 背後せなかから突き込まれた切っさきを避けたり、一里向いちりむこうのやまに生える木の、葉が揺れるのが見えたり。
 甲冑かっちゅうを着た雑兵相手ぞうひょうあいてに生き抜いた、僧兵ぼうずのなれの果て。
 そのわざは、何度か・・・つくり替えられたらしい、いまわらしからだにもいきづいている。

 ぼっ――――!
 突き込まれる鉄棒まほうつえがぁ、おれのくちねらってやがるぜ!

「ッチィイェェェェェェェェェェェェェェイッ――――――――――――――――!!!」
 斬る。斬らんと、こっちがなかからはじけちまわぁ。
 あの重い鉄棒・・・・は、おれの居合いあいより――剣速まあいはえぇ!

 ザッギィィィィィィィィ――――――――――――!
 散る火花ひばなに、目をすがめる。

 ヴォゥ――♪
『HP/■■■■■■■■■□4936/5009
 MP/■■47/48』
 閉じた目にうつる、この世界うつつことわり
 緑色の棒たいりょく紫色の棒まりょくは、迅雷ジンライが見せる画面モニタとはべつに、うつし出されている。

 緑色みどりいろ数字HPが、減ってやがるぜ。
 あの馬鹿力かいりきで、こうも押し込まれちゃ――
 斬られてなくても、つかれが溜まる。

 対外的たてまえにはLVレベル46のおれが、この体力HPを持っていたらおかしい。
 魔力MPすくなさも人並ひとなはずれていて、一般的いっぱんてき冒険者ぼうけんしゃ埒外らちがいに居る。
 もっとも此方こっち本当ほんとうに、まるで上がらないままLVレベル100になっちまったんだから、仕方しかたが無い。
 それでも、追加ついかで取ったスキルのおかげで、ほんのすこし増えてくれたのはありがたい。
 HP・MPこいつ内訳うちわけひとから見られることが無いから、冒険者ぼうけんしゃカードみたいに偽装ぎそうしなくて良いからたすかった。

 そして画面がめんなか
 おれのからだ様子ようすを知らせてくる――
 伸びちじみするぼうや、うごめ波形なみがた
 表示ひょうじされるのは、迅雷ジンライが居なくても使つかえる部分ぶぶんだけで――
 見た目は相当そうとうさびしくなった。

 迅雷ジンライ五百乃大角いおのはらも、まるで返事へんじをしやがらねぇ。
 神域惑星しんいきわくせいのときは返事へんじが無くても、仕事しごとはしてくれたんだがな。

 ふぉん♪
『シガミー>迅雷、小太刀を出せるか?』
 返事へんじはねぇーし、小太刀こだちも出ねぇ。
 このとんでもねぇ爆発ばくはつする高等魔術こうとうまじゅつと、オルコやノヴァド張りの怪力かいりき
 まだいまのところ、そこまで体力たいりょくけずられちゃいねぇが――
 でかいのを一発いっぱつもらえば、常人じょうじんばい体力たいりょくがあろうと――
 どうなるか、わからん。

 ザッギィ――火花ひばなは、まだ散ってる。
 この間延まのびした刹那せつななか
 この自前じまえでも金剛力パワーアシストなみのちから使つかえるようになった、この体で。
 力一杯ちからいっぱい、押しかえしてるってのに――
 突き込まれた刺刺きっさきが、まるで引きはなせん。

 自分てめえからだおなながさの直刀しゃくじょうを抜くには、一息ひといきかたなを投げ飛ばす必要ひつようがある。
 刺刺とげとげ杖先つえさきは押し込まれる一方いっぽうで、もう鼻先はなさきだ。
 そうなるとさやを持つこしひねり、そららしながらからだを引き――
 さらに踏み込んで――打ち込むしかねぇ!

 こんな芸当げいとうてき轟雷ごうらいや、手足てあし倍加ばいかした鬼娘並おにむすめなみの――
 怪力かいりきだから、出来できることだ。
 斬るのに要る剣速まあいは、向こうの怪力かいりきおぎなってもらう。

 ザギギィ――おれはもう一度いちど、目をすがめ――――

 ギュヴヴヴヴッ――――――『滅モー』
 きゅう画面モニタ一部いちぶが、復活ふっかつしたが――!
 ばかまて、〝滅モードそいつ〟は出すな!
 流石さすがに交渉相手こうしょうあいて二つに・・・、しちまうわけにはいかん!

 仏門ぶつもんはいまえならったけんで、一度いちどだけ出来できたた――飛ぶとりを斬る太刀筋たちすじ
 そいつはこの来世うつつ使つかうと、一町向いっちょうむこうの岩壁いわかべ横薙ぎにする・・・・・・
 そのときは、強化服2号シシガニャンを着ていたが――
 ひよわ星神かやのひめが、おれのからだあやつるために、ホシガミスキルポイント強化きょうかした――
 いまのこのからだじゃ、おなことが――出来ちまう・・・・・だろう。

 糸紡いとつむぎに没頭ぼっとうしたら、からだ勝手かってうごいたことがあった。
 切れが良すぎるせいか、うつつを抜かすと勝手かってうごまわからだ
 座禅ざぜんを組んできょうを読むのも、ひかえてたが――『滅モもどれ』『なしだ』『_きえろ
 よし、あぶねぇわざモードが――消えたぜ!

 ギッギィィィンッ――――あ、いけねぇや!
 どっちにしろ――こしまわして、引きながら――
 ガッギュヂィィィィィィンッ!!
 本気で・・・、斬っちまった!

 刺刺とげとげの付いた魔法杖まほうつえさきが、クルクルとまわる。
 落ちていくおんなうで

わりぃ、つい斬りかえしちまったぜ!」
 やべぇ、蘇生薬エリクサーは!?
 さっき全部ぜんぶ、ばら撒いちまったか!?
 直刀を収めガチリッ♪こしのベルトをさぐりつつ――振りかえる。

おどろきましたわ。ちょっとおどかすだけの、つもりでしたのに♪」
 とてもうでを落とされたやつが、出して良いこえじゃねぇ。
 おれだってうでを斬られたら、さけごえすら上げられず――
 わめき、のたうちまわるだろうさ。

 目のまえに落ちていた、おんなかげがねぇ――何処行どこいきやがった!?

 地に落ちたるは、刺刺の短い鉄棒まほうつえのさきほそうで
 間違まちがいなく、おれのけんおんな魔法杖まほうつえと、おんなうでを切った!

 ほそうでが、ぶるりと震え――ぼごわぁっ!
 腕形うでがた爆煙けむりが、かぜながされた!
 ちっ、してやられたぜ!
 切りむす最中さなかに、てきから目をはなすなんざ……初陣以来ういじんいらいか。

「このわたくしに、回復薬ポーション使つかわせるなんて――――クピクピリ♪」
 そのこえに、かおを上げた。

 みじかくなった魔法杖まほうつえを、垂直すいちょくに立て――
 そのうえに、片足立かたあしだち。

 薬瓶くすりびん二本にほんくわえたご令嬢れいじょうが――どごわっああああああああ――――――――!

 両の掌から・・・・・、ばかのように、どでかい噴煙ふんえんを立ちのぼらせていく!
 それは――それはそれは、いろとりどりで――
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