上 下
582 / 738
5:大森林観測村VSガムラン町

582:大森林観測所への道、盗賊とエンカウント

しおりを挟む
 先行せんこうしていたオルコトリアとタターが、立ち止まっている。
 渋滞じゅうたいし、だま・・になる特撃型とくげきがたたち。
 混雑こんざつした山道やまみちを、おれは――

 スタァン――ぽぎゅむっ――ドッドン、タタァァン♪
 特撃型とくげきがた『17』ばんかたを借り、木々きぎみきえだへ飛び乗る!
「きゃっ、シガミー!?」
 17ばんはリオレイニアを、はこんでいるやつだったか。
わりい、さきに行く!」
「「「「「「「「「「「「「シガミーちゃん!?」」」」」」」」」」」」」
 ぽぎゅぎゅむっ――スタタタタァン――ぽっぎゅむ♪
 何番だれだかわからんが、たぶん王族関係者おうぞくかんけいしゃ央都おうとのお貴族きぞくさまの特撃型シシガニャンあたまを踏みつけ――
 一息ひといきに飛ぶ!
 くるくるくるるん、スタン♪

「どーした? うしろがつっかえちまってるぞ?」
 オルコトリア――鬼族オーガむすめそばに降りた。

「しっ!」
 口元くちもとゆびを立てて見せる鬼の娘オルコ
 片手かたてかかえられた少女タターが、小高こだかおかうえしげみを長銃ひなわで指ししめした。

「(小頭こがしらぁ、ねこ魔物まものにとっつかまった間抜まぬけな連中れんちゅうが、こっちに来――ぎゃっ!?)」
 しげみが、わさわさと揺れる。
「(ばかやろう! 大声おおごえを出すんじゃぁ無いよっ、かんづかれちまうだろうが――それとだれ小頭こがしらだい! あたいは親衛隊長しんえいたいちょうさまだぞ、ゴラァ――)」
 はなごえが、盛大せいだいに聞こえてくる。

盗賊とうぞくたぐいだろう、ちょっと絞めて・・・くるよ」
 タターを地面じめんにそっと下ろし、オルコトリアが跳んだ・・・

   §

「はい、そこまで。なにをやってるんだい、あんたたちはもう――」
 なわしばられた盗賊たち・・・・が、女将おかみさんの姿すがたを見るなり――

「「「「おじょう――――――――!?」」」――でさぁ!?」
 驚愕きょうがく表情ひょうじょうを見せた。

「その呼びかたは、お止めっ! いまのあたしゃ、食堂しょくどう女将おかみさんさね♪」
 うでを組み、仁王立におうだち。なわqを解いてやる気は無ぇらしい。

食堂しょくどう?」「まさか!?」「でさぁ?」
「ヴィフテーキ食堂しょくどうですかい?」
 ふぉん♪
『イオノ>いま、聞き捨てならない単語が、飛び出さなかった?』
 知らん、やかましぃ。

 ふぉん♪
『ヒント>ビフテキ/ビーフステーキ。牛の厚切り肉を鉄板で焼いた料理。好みで焼き加減を選べる』
 知らん、うるせぇ。

店名てんめいちがうが、そんなようなものさね」
 まるでわけがわからんが盗賊こいつらは、女将おかみさんの知り合いのようだった。
 流石さすが渡世人とせいにんだぜ、ちとこえぇ。

「「「「おめでとうございます、お嬢・・!」」」」
 木にしばり付けられた……随分ずいぶんと、おとしを召した盗賊とうぞくたちが――
 女将おかみさんの、〝木さじ食堂しょくどう開店かいてんいわってやがるぜ。

「だから、もうわかくないんだから、おじょうはお止め!」
 おおきな木さじで、がんごんががんと小突こづかれる盗賊とうぞくたち。

 ぎゅぎゅむっ、ぽぎゅぎゅむっ♪
 ぎゅうぎゅう詰めの、おれたちは――
 なり行きを見守みまもる。

 ふぉん♪
『イオノ>えーと。女将さんのお店って、いつからあるの?』
 食えるものが無いかと周囲しゅうい見渡みわた根菜こんさいさまが、一行表示ティッカーたずねてきた。
 おれは知らん。
 ふぉん♪
『リオレイニア>少なくともお嬢様さまと私が初めてガムラン町を訪れた、10年前には既にありました』

 となると、女将おかみさんはすくなくとも10年近ねんちかく、里帰さとがえりしてないんじゃねぇのか?
 この盗賊とうぞくたち……女将おかみさんの知り合いらしい連中れんちゅうは、〝木さじ食堂しょくどう〟のことを知らなかったんだからよ。

 ふぉん♪
『>ここから央都までの帰り道は、相当に険しい道行きですので、致し方ないのでは?』
 まぁ、そーなんだろーけどな。
 これまで転移陣てんいじん使つかえるのは央都おうとの、〝大女神像だいめがみぞうだけ・・だったわけだしょぉぅ。

   §

「あんたたちも、もう良いとしだろう? その格好かっこうは、お止めっ!」
 冒険者ぼうけんしゃ装備そうびに、口元くちもとかく覆面ふくめん
 あやしいことこの上ないが、それでも天狗わし烏天狗ぼくよりは、かおが出てるか。

 そして棘付とげつきの肩当かたあてや、物騒ぶっそうつめが生えたくつも――
 リカルルの甲冑かっちゅうほどには、刺刺とげとげしていない。
 つまり此奴こやつらは、半端者はんぱものだ。

「けどいまだに一攫千金いっかくせんきんねら冒険者ぼうけんしゃが、はいってこようとするんですぜ――」
 体格がたいは良くてもはらが出た、面白おもしろかおやつ
「せめておれらの格好かっこうを見て、引き返せ・・・・っつー――」
 ひょろながくて猫背ねこぜな、みょういかついかおやつ

「あっしらの親切しんせつなんでさぁ――」
 奇っかいけんをもつ、毛の無いやつ
 なんだ、あの面白おもしれけんは?
 日のもとかたなみてぇに、ってるってんじゃなくて――ねじれた鞘《さや》に、おさまってやがるぜ。

「というわけで昔着むかしきてた装備そうびを持ち出さないと、アタイらの身が持たないんっすよぉ?」
 派手はで化粧けしょうに、胸元むなもとが開いた胸当むなあて。
 あんな装備そうびてき攻撃こうげきを、本当ほんとうふせげるのかぁ?

「ふーぅ。あんたたちは、ほんとうよわいからねぇ」
「「「「へっへへへへっ♪」」」――あっしもでさぁ♪」
 しばられたまま、器用きように身をよじる盗賊とうぞくたち。

 ふぉん♪
『シガミー>あの冒険者たちのLVはわかるか?』
 リオレイニアがちかくに居るから、上級鑑定じょうきゅうかんてい使つかえねぇ。
 かねをさせたら、おこられる。

 ふぉん♪
『>シガミーの上級鑑定スキルが使えないため、正式な数値は参照出来ませんが。冒険者カードの組成から、LV40は超えていると思われます』
 レベル40超えてても、〝よわい〟と言われちまうのか。
 ちと、かわいそうだな。
 ふぉん♪
『>コッヘル夫人以外にも、相当な手練れが居ることを示唆しているのでは?』
 だな。うちのひめさんたちを、置いてきてたすかったぜ。

「みゃにゃぁごぉー
 ぽぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅgむぎゅぽぽぷむぅん♪
「ひひひひひぃぃんっ!?」
 ぽぎゅぎゅぎゅむんっ――――ずざざざざぁ!

 騒々そうぞうしいおとに振り替えれば、おにぎり騎馬たちが――
 うしろから押し寄せる、特撃型シシガニャンたちに押され、すっころんだ。

「よっ、はっ、とりゃ、ぼこごこぉぉぉん、ずどごっがぁぁん♪」
 そして、ころげまくる特撃型とくげきがたあたまを踏んで――
 針刺し男おっさんせまってきた!

「あーもー、うるせぇ! さきに行くぞぉ、女将おかみさぁーん!」
 おっさんをさきに、行かすわけにはいかねぇ。
 もしものことがあったら、フッカやフッカははもうわけが立たん。
 おれは――――スッタタァァン♪
 おっさんのまえおどり出た。

「あっ、じょうちゃん!」
「そっちは、あぶねぇですぜっ!」
 なんだぁ、盗賊とうぞくたちがさわぎ出した。

偽物にせものぉー、なんでさぁ!」
 スタタァァン――――偽物にせものだぁ?

本当ほんとうみちはぁー、こっちよぉーっ!」
 盗賊とうぞくかしららしいおんなが、自分じぶん肩越かたごしに――
 小高こだかおかに埋まる、大岩おおいわを見た。

 なんだぁ?
 盗賊たちあいつらが出てきたしげみごと、大岩おおいわが割れ――
 その向こうに、みち出来できた。
 じゃぁ、此方こっち偽物にせみちってのは――?

 すたり――ぶにょぉん?
 ひらたいいしざつに敷き詰めた、山道やまみち
 その地面じめんが揺らいだとおもったら――「ぬぅおぉぅわぁぁぁっ――――!?」
 地面じめんが抜けた。

 フッと姿すがたを消す、女将おかみさんや盗賊とうぞくたち。
 子供こどもかかえたまま、すっころんでいたシシガニャンたちも消えた。

「んのっひょろぉうわぁぁぁぁひゃっ――――!?」
 うるせぇ、おっさん。
「っきゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――!?」
 うるせぇ、神官女性しんかんおんな

 すたん、どざどざぷぎゅるりゅ♪
 おれと、おっさんと神官女性うるさいふたりが――
 山道やまみちの真んなかに、取りのこされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仔猫殿下と、はつ江ばあさん

鯨井イルカ
ファンタジー
魔界に召喚されてしまった彼女とシマシマな彼の日常ストーリー 2022年6月9日に完結いたしました。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...