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4:龍撃の学院

548:央都猪蟹屋跡地、タターを計ろう

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 猪蟹屋みせ程近ほどちかい、片壁かたかべが焦げたちいさな屋敷やしき
 央都猪蟹屋おうとししがにや本店・・予定地よていちとなり
 もとから借り手の無かった、さびれた建物たてものだ。
 そこをリカルルが買い上げ、ガムラン町の猪蟹屋ししがにや本店・・みたいなかんじで、書類しょるいわたされた。
 ひとまず借りておくが――

 すぽん。
 肌着はだぎになった少女しょうじょタターから、あたまうえヒラヒラしたの・・・・・・・が取りはずされた。

「じゃぁ、おれぁ向こうへ行ってるからよ」
「な、なんで行っちゃうんですか! おいてかないでぇー!」
 部屋へやを出て行こうとしたら、しがみ付かれた。

「ばかやろう、おれはおとこだぜ。おまえさまも一応いちおうおんなだろうが、ちったぁつつしみってものをだなぁ――」
 引きたおすわけにもいかず、からだをよじってみるが――
 しっかりと張り付かれちまった。

「なにをバカ言ってるんですか。シガミーはおんなの子じゃないですか――ヴヴヴヴヴッ?」
 ゴガガガガン♪
 かたい木のゆかを打ち鳴らす、給仕服きゅうじふくおんな

ほか子供こどもたちは計測けいそく邪魔じゃまになるからと、追い出されてしまったので心細こころぼそいのですよ。直ぐに済むようですので、付いていてあげてください――ヴヴヴヴヴヴッ♪」
 だからそれやめろ。
 さすがに飽きてきたぜ。

「それを言ったら、お猫さまロォグは良いのかぁ?」
 顧問秘書こもんひしょあたまに、へばりつくねこを指さした。
「ふむん? では確認っかうにんしましょう」
 つかつかとあるいて行った、ルガレイニアは――
 女性じょせい学者方がくしゃかたかこまれ質問攻しつもんぜめにあう、お猫さまロォグ一言二言交ひとことふたことわし――
 ねこを借り受け、そのままかかえてもどってきた。

精霊せいれい雌雄しゆう区別くべつは、無いそうですよ♪」
 ねこあごを撫でる給仕服きゅうじふく格好良かっこうよ眼鏡めがねおんな
 やはり女子供おんなこどもは、ねこが好きだぜ。

「――被験者ひケんしゃおサなヒとは、安心あンしんしてドうぞ。我輩わがハいにハ、付いテない・・・・・ニャ♪――」
 やかましい。尻尾しっぽをくねらせるお猫さまロォグ

「んまっ――!」
 格好良かっこうよ眼鏡めがねおんな口元くちもとを押さえ、こんなふうにほほでも染めようものなら――
 一瞬いっしゅんこころを、うばわれかねなかったものだが。
 いま蜂の魔神・・・・にしかおもえない。
 蜂の魔神そんなやつ色恋こいをするやつはいない。
 そういう意味いみじゃ、この蜂眼鏡はちめがね相当そうとうやくに立ってる。

「シガミーちゃぁん!?」
 なんだぜその、へっぴりごし
「わかったぜ。付いててやるから、安心あんしんしろ。もうこわいことはねぇよ。もしなにか有ってもおれが、タターをまもれねぇとおもうか?」
 ぎゅっと手をにぎり、そう言ってやる。

 ぎゅっとにぎっったものの、彼女タターほうすこし手がおおきい。
 これじゃ安心あんしんなんてさせて、やれねぇんじゃ――

「ふぅ――、ありがとう♪」
 なん大丈夫だいじょうぶそうで、良かった。

「まったくもう、シガミーはこれだからもう……ぶつぶつ」
 はちまたほほを染めていたが、目が合ったら――
 そっぽを向かれた。なんだぜ?
 レイダやビビビーやルガレイニアは時折ときおりこういう風・・・・・におれを見てるときがある。

 ふぉん♪
『>やはりシガミーの体格に、不安を感じているのではないかと推測されます』
 そうかもなぁ、はえぇとこ立端たっぱが伸びてくれりゃ良いんだが。
 いまのままじゃ、ニゲルや女将おかみさんなんかには――
 勝てる気がしねぇからなぁ。

   §

 どさどささっ、スルルルルッ――キュキュキュキュキュッ♪
 やたらとふと不格好ぶかっこう導線どうせんが、縦横無尽じゅうおうむじんに這いまわる。
 ドカン、バゴン――ガガガガゴッ、ガッチャリ!
 金網かなあみ鉄製てつせいやぐらに、取り付けられていく魔法杖つえ魔法具まほうぐ
 そんなもので埋め尽くされていく、建物たてもの

「ひっひひひぃぃん?」
 大勢おおぜい学者方がくしゃかたや、おれたちに繁々しげしげと見つめられ――
 落ち着かない様子ようす天ぷら号こうま

「どうやらこの尻尾しっぽは、龍脈りゅうみゃくながれを敏感びんかんに感じ取っているようで……す?」
 頭突き女モゼルがモコモコしたかみを揺らし、くびかたむける。
「それがどうして、こうがっちりとくっ付いちまうんだ……ぜ?」
 おれもおなじ向きに、くびを曲げてみせる。

「わかりませんららぁぁん?」
 子馬うまゴーレム天ぷら号テンプーラゴウ設計制作元うみのおやの、小首くびかたむいた。

 うむ、らちが明かん。
 少女しょうじょタターは肌着はだぎのまま、子馬こうま尻尾しっぽ手首てくびを張り付かせている。
 給仕服メイドふく止め金具カフスはずしても、なん意味いみも無かったぞ。

「(こりゃ、おれが轟雷ごうらいを着るしかねぇんじゃ?)」
 ふぉん♪
『>腕時計に格納された轟雷は自動的に、修復ならびに神力の充填がされ、万全の状態です』
 ほぅ、腕時計うでのやつなかめしを食わせてやれるのか。そりゃ面倒めんどうがなくて良いやな。

「にゃみゃん♪」
 おねこさまが手甲てっこうをガチャリとかまえ、設置せっちされた鉄台どだいから――
 ガシャリとアダマンタイトを、引っこ抜いた。

 白金はっきん角棒かくぼうが、さらちかづけられる。
 おれは錫杖しゃくじょうをじゃりんとかまえ、万一まんいちそなえた。

 ヴォヴォヴォヴォォォォゥン♪
「ぅわわぁわっ」
 希少鉱石アダマンタイトつようなりに、おびえるタター。

 一瞬いっしゅん緊張きんちょう、ヴォッシュルン♪
 子馬こうま尻尾しっぽがタターの手から、ふわさりとはずれ――
 ギュルルッ、ガチィンッ♪
 アダマンタイトに、からみついた。

 尻尾しっぽから解放かいほうされた少女タターかおは、ほうけていた。

「――大実験だイじっけんハ、大成功だいせイこうだニャァ♪――」
 ロォグ小躍こおどりをした――ゴガッ!
 ぱらぱらと天井近くの鉄柱が、削れて落ちてきた。
あぶねっ!? なげぇんだから、気をつけてくれやぁ!」
「――にゃぁーご♪――」
 みみを伏せ、ばつのわるそうなかおをする、お猫さまロォグ

「ふーっ! 仮説通かせつどおりの振る舞いを、見せましたね♪」
「まさに大成功だいせいこうですららぁぁん♪」
 イエーイと手を打ち鳴らす、秘書ひしょ王女おうじょ

 なに大成功だいせいこうなのかは、さっぱりわからんが――
尻尾しっぽはずれて良かったな?」
「うん、ありがとう♪」
 尻尾しっぽはずれたことをよろこび、少女タターわらってるなら――
 それは良いことだ。

「では、シガミーちゃぁん。アダマンタイトにぃ、さわってみてらららぁぁん?」
 王女殿下おうじょでんかこえが、不意ふいに飛んできた。

「にゃにゃぁーん♪」
 アダマンタイトを持ち上げ、首輪くびわをチリンと鳴らす。
 すると革製かわせい装備そうびのようなものが、ゆかに落ちた。

「みゃにゃぎゃ、にゃやみゃにゃぁぁーん
 ぱたん♪
『「危ないから、この装備を付けるんだもの」って言ってるんだもの♪』
 ふぉん♪
『シガミー>おにぎり、お前。その白い服と眼鏡、誰に貰った?』
 ふぉん♪
『おにぎり>ケットーシィからだもの。首輪から出てきたんだもの』
 やっぱりか。そうなると、あの首輪くびわは――おれたちの絵で板エディタみたいなものじゃね?

「こちらです」
 羊の獣人モゼルひろってわたしてきたのは、何重いくえにもかさねられた革製かわせい手甲てっこうだった。

「よし、やってやらぁ――すぽん♪」
 錫杖しゃくじょう仕舞しまわたされたソレを付け、手を延ばすと――
 ぎゅぎゅるっ――――――――ごぉん♪

 おれの手がアダマンタイトに、吸い寄せられた・・・・・・・

龍脈りゅうみゃくながれは、地表ちひょうにもかすかにただよっているのよ」
「そうでなければ薬効成分やっこうせいぶんのあるくさ毒草どくそうが、生えることはないですからね」
 学者方がくしゃかたたちが、そう説明せつめいしてくれた。
 ことくさかんしてなら薬草師やくそうしのおれには、なんでもわかるが――
 それは知らなかったぞ。

「けどそれとアダマンタイトに、なん関係かんけいがあるんでぇい?」
 おれのくびまた、曲がる。
子馬こうまちゃんの尻尾しっぽは、あしから上がってきた龍脈りゅうみゃくながれを――どこかへ逃がそうとしているようです」
 秘書ひしょマルチヴィルが、ふと導線どうせんつながった黒板タブレットを見せてきた。
 わからんし、おなものがおれの画面モニタにも見えている。

「それがタターちゃんたち、ネネルドむらひとたちの手が吸い寄せられる原因げんいんだわ」
 頭突き女フワフワモコモコ鉄鍋てつなべのようななにかを、子馬こうまへ向けつつはなしつなぐ。
 衝撃しょうげき事実じじつだが――

 ふぉん♪
『>常に一緒に行動しているおにぎりの体が、一切影響を受けず与えないのは、その体の中に何も入っていないからと類推できます』
 しきくうだな、それはわかる。

「じゃ、いま尻尾しっぽがタターの手から、アダマンタイトにうつったのは?」
 ――なんでなんだぜ?

「そコからは、アダマンタイトの特性とくセいかカわルはナしにナるニャ♪」
 バタンと横壁かべに開いたちいさなとびらから、かおを出す猫頭ねこあたま

「わっ、おどかすなぃ!」
 猫頭ねこあたま顧問氏こもんしねこ素早すばやさでとびらをくぐり抜け、部屋へやなかはいってきた。

「ニャフフ、アダマンタイトがタターさんをえらんだって言うんなら、アダマンタイトはタターさんの手にくっつくべきだとおもうだろう?」
 呆気あっけにとられる、おれたちのあいだとおり抜け――
 お猫さまロォグ背後はいごまわる、顧問技師こもんぎしミャッド。

「ソレも適性てきせいひとつではあるけど――ゥニャッ♪」
 顧問氏こもんしがアダマンタイトを持つ、おねこさまを抱き上げ――
 こともあろうか、おれのほうへ向けた!
 ヴォヴォヴォヴォゥゥンッ――――♪

「あっぶねっ――――!!!!」
 ボゴゴォォォン!!!
 おれは咄嗟とっさに付けたままの、革製かわせい手甲てっこうふせいだ!
 アダマンタイトはおれのうでつよくぶつかり、そのままはずれなくなった。

「つまり、受け入れた龍脈りゅうみゃくながれを地へ逃がす体質・・・・・・・。そうでも無けりゃ――」
「こうなるってわけか!? はずれん!」
 アダマンタイトがうなると、ものがくっついたりはなれたり――しやがるのはわかった!

「そういうことだニャァ――ぼかりっ!?」
 おれとお猫さまロォグたちが、からまってると――

 秘書の人マルチヴィル上司ミャッドを、こぶしなぐりつけた。
いたい、なにするニャァ!?」
現在げんざいこの研究室けんきゅうしつは、男子禁制だんしきんせいです! おわすれですかぁ?」
 持ち上げられる、鉄鍋てつなべみたいな研究道具けんきゅうどうぐ

 巻き込まれては、かなわん。
 おれはからまるお猫さまロォグどもを、引き剥がして――
 脱兎だっとごとく、逃げ出した。
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