上 下
546 / 738
4:龍撃の学院

546:央都猪蟹屋跡地、里芋と蛸の煮物

しおりを挟む
「ふっふっふ。こんなこともあろうかと、神域惑星しんいきからうまそうな野菜やさい見繕みつくろって来ておいてたすかったぜ」
 この世界せかいもっとも食べられているとおもわれるいもは、〝羽根芋はねいも〟だ。

 ふぉん♪
『羽根芋/
 羽根のように大きな葉を持つ芋。
 肉料理に最適な、辛みのある野菜。
 肉を巻いて焼くだけでも、香辛料がわりになる。
 芋の部分は、煮崩れするので料理にはむかない。』

 とは言ってもからみのある葉の部分ぶぶん使つかうのが、おも使つかかただ。
 おれはこめの代わりにして、寿司すしつくったりはしたが――
 此奴こいつ上手うまいこと、煮物にものにはなってくれない。
 肉料理にくりょうり薬味やくみには、最適さいてきなんだがな。

 ふぉん♪
『里芋/
 里芋科の根菜。塊茎や大きな葉や茎を食用とする。
 実の内部は真っ白く、もっちりとした食感と共に好まれている。
 煮崩れしにくく、煮物に向いている。』

 そこで此奴こいつの、出番でばんってわけだぜ。
 生前ぜんせでこのいももっぱら、煮染にしめたくきばかりを食わされたが――
 煮物にものにすりゃ、まるでもちみてぇな歯ごたえでよ。
 ただ料理りょうりをすると、手が痒くなったりする・・・・・・・・・・のが、厄介やっかいだったなー。

 だがいまのおれには、100を超えるスキルがある。
 そのなかには〝調理術ちょうりじゅつ〟や〝高速調理こうそくちょうり〟というスキルもあった。
 もう一瞬いっしゅんつくるぞ――略式りゃくしきの〝超料理術ちょうりょうりじゅつ〟スキルで。

 ざるに盛った里芋いも木篦きべらひとつ取り、まないたに置く。
 ヴッ――包丁ほうちょうを取り出し、ストン♪
 包丁ほうちょうかるたたくだけで――つるん。
 かわを剥かれ面取めんとりりまでされた真っしろな身が、コロリところがり落ちていく。
 木箱きばこうえに置いたおおきなどんぶりに――ストン、ストトトトン♪
 つるん、つるるん、コロコロッ、どさどさどさささっ!
 すぐに山積やまづみになる里芋さといも

 だがじつは、この世界せかいに〝超料理術ちょうちょうりじゅつ〟というスキルは無い。
 無いのに、冒険者ぼうけんしゃカードの追加ついかスキルらんに書かれている。
 これはおれシガミーの膨大ぼうだいなスキルの、帳尻あわせに偽装した・・・・・・・・・・もので――
 言ってみりゃ物作りクラフトけいの〝伝説の職人さいこうほう〟にならぶ、料理版りょうりばんうそ)だ。

「よし出来できたぁ。つぎたこしたごしらえを――」
 おおきなはちに真っしろ里芋さといもを、どぼぼぼぼぼっぱぁん♪
 くるりと振り向くと、そこには――

「お見事みごとですね、シガミー。ですが学院がくいん勉強べんきょう央都猪蟹屋おうとししがにや準備じゅんびに、明け暮れていたのに――」
 やたらと格好かっこうの良い眼鏡めがねを掛けた、おんあが立っていた。

「お野菜やさいを、まとめて収穫しゅうかくするような、そんなひまが良くありましたね――ヴヴッ?」
 やたらと格好かっこうの良いおんなが、まるではちのようにふるえた。

 ヴヴヴヴヴッ――?
 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ――?
 みぎからひだりから、おれの顔色かおいろうかが給仕服きゅうじふくおんな
 まるではち威嚇いかくしてるようで、見ているぶんには面白おもしろかったんだが――

「ヴヴヴヴヴッ――ギチギチギチッ♪」
 とうとうくちから、普段ふだんひとはっしないおとがし出した。
 フッカのこわがる理由りゆうを、ギチギチとかんじる。

「まさかまた深夜しんやまちそと色々いろいろ採取作業さいしゅさぎょうを、つづけていたのではないでしょうね?」
 ゴガガガガガッ――――「ひぃっ!?」
 おれのこえが漏れたのかとおもったがちがう。
 いまのはフッカのこえだった。
 どこかとおくから、蜂女はちおんな動向どうこううかがっているのだろう。

「だ、大丈夫だいじょうぶだ。深夜しんや一人ひとりまちそとに、採取さいしゅになんて行ってないぜっ!」
「本当――でしょうね?」
 ギラリとかがやく、はちかおのような眼鏡めがね
 そのくら鏡面きょうめんに、おびえた子供こどもかおうつり込んでいる。

「ほ、本当ほんとうだぜ! 迅雷ジンライとおにぎりたちに、里芋掘いもほりをたのんだからなっ!」
 うそは言ってない。もっとも、そのときにはおれも、その場に居たんだが。

 カァン――「ひみのずたのまたぁまぁ♪」
 なべかまどに乗せ火をおこし、みずそそぐ。
 干した小魚こざかなを――(迅雷ジンライあたまはらわたしゅうのう納してくれ)――入れる。

 ふぉん♪
『>シガミー。頭と腸は、どう処理しますか?』
 んぁ? そのまま取っとけ。
 五百乃大角いおのはらの、おやつにでも使つかうから。

 湯通ゆどおししたたこを――薄く切るストトン♪
 なべいもを入れ、小魚こざかな出汁だし五分ごふん――煮たものが、高速調理こちらにございます
 そのあと砂糖ざらめを入れて、やっぱり五分――煮たものが(りゃく)。
 さら醤油しょうゆを入れあじが染みたころ、切ったたこを入れる。
 里芋さといもいろが付いたら――

「ぃよぉぅしっ、出来できたぜー!」
 さらに盛ったら生産数最大でおおすぎて大皿3枚分おおざらさんまいぶんにもなっちまったが完成かんせい

所要時間しょヨうじかん、1プん49ビょう――正規せイき手順てジゅん場合ばアいクらべ、ヤく時間ジかん30ぷン時間短縮じかんタんしゅく達成たっせイ
 ヴォヴォヴォゥン♪
 小皿こざらへ取り分ける迅雷ジンライと、給仕服の蜂女ルガレイニア
 ぼんに乗せ蛸串たこくしを食えないおねこさまたちへ、配膳はいぜんしようと振りかえると――

「みーたーわーよぉぅ、ソレさぁー? 超々ちょうちょう超絶ちょうぜつ美味おいしそうじゃんねぇーっ
 衝立ついたてうえに乗る、五百乃大角いおのはらお猫さまロォグ
 五百乃大角いおのはらはわかるが、どうしたおねこさままで?

「なんだぜ。ロォグは腹減はらへってたのか?」
「――おいしい――予感よかん――多重詠唱たじゅうえいしょう――栄養補給えいようほきゅうニャァ♪――――」
「みゃぎゃにゃぁ――(りゃく
 衝立ついたてよこから半分顔はんぶんかおを出す、おにぎり。
 ぱたん――
『「お腹も減ってるけど、多重詠唱の使い手を見つけたんだもの♪」って言ってるんだもの』

「だから〝だもの〟は言ってねぇだろ」
 多重詠唱たじゅうえいしょうのことを、ロォグさまは知ってるようだな。
 あとくわしく聞いときてぇが――

「とりあえず、おまえさまたちわぁ、はやく降りて来ーい!」
 折角せっかく煮物おやつが、冷めちまうだろ。

「うみゃぁ♪」――スタァン!
 おねこさまが直接ちょくせつうえから落ちてきた。
 うわっぷっ!?
 かおに飛びつかれた。

 手からぼんがすっぽ抜け――ガッチャンガチャガチャッ!
「ふぅ、詰めがあまいですね、シガミーは」
 それをはちメイドさんが、華麗かれいに受け止めてくれた。

わりぃ。たすかった!」

   §

「どうしたぁ? たこは抜いたが、あじ中々なかなかだぞ?」
 おねこさまが、小皿こざらくちを付けてくれない。
 どうしたもんかと思ってたら――

「あのぉーうぅ……こそこそ……シガミーちゃぁん」
 ああ? 木箱きばこかげから、こえがしたぞ?。
 見ればフッカが真剣しんけんつらで、隠れてやがる・・・・・・

 なにからかくれてるって、そりゃ蜂女はちおんなからだろうなぁ。

「ケットーシィちゃんは……ひそひそ……さっきわたしたおさらじゃないと、ごはんを食べないそうですよぉ?」
 あ、そういやあずかったな。
 あの水盆すいぼんは、茶碗代ちゃわんがわりだったのか。

 ヴッ――ことん。
「どうぞ、召し上がれやぁ♪」

「みゃにゃぁーん♪」
 お猫さまロォグはとても気に入ったようで、おかわりをしてくれた。
「こっちも、おかわりぃー! ねぇちょっと聞いてんのねぇ? おかわりって言ってんの! おかわり?」
「みゃにゃぎゃぁー
「ひひひぃぃぃんっ?」

「あら、シガミー。とても美味おいしそうですわね?」
 わいわいわいわい、がやがやがやがや。
 みんなが来るとはおもってたから、そこそこ沢山たくさんつくったし――
 薬草師やくそうしのスキルで煮物おやつが、増えちまったんだが。
 それでもすこし足りなくて、おれはもう一回いっかい――

こちらに調かんせいしたものがよういしてございます」する羽目はめになった。
 所要時間しょようじかんは、1ぷんを切った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

転生したら、全てがチートだった

ゆーふー
ファンタジー
転生した俺はもらったチートを駆使し、楽しく自由に生きる。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

そらら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】 大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役王子に転生した俺。 王族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な第一王子。 中盤で主人公に暗殺されるざまぁ対象。 俺はそんな破滅的な運命を変える為に、魔法を極めて強くなる。 そんで推しの為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが? 「お前なんかにヒロインと王位は渡さないぞ!?」 「俺は別に王位はいらないぞ? 推しの為に暗躍中だ」 「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」 「申し訳ないが、もう俺は主人公より強いぞ?」 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング50位入り。1300スター、3500フォロワーを達成!

処理中です...